『日本歯技』1月号 2015年12月20日発行 第559号
「歯科技工士の杜」
第2回 国の補助金、助成金等を活用し、歯科技工所経営の合理化・適正化を考えよう
―「ものづくり補助金」を中心に―
一般社団法人埼玉県歯科技工士会所属
野島 正美
2.経済産業省(中小企業庁)関係
a.創業補助金
創業補助金は、平成24年度補正予算地域需要創造型等起業・創業促進事業として、新たに起業・創業や第二創業を行う女性や若者に対して事業計画を募集し、計画の実施に要する費用の一部を補助することで、地域需要を興すビジネス等を支援することを目的に行われたものです。
平成25年度補正予算では、創業補助金(創業促進補助金)として、新たに創業(第二創業を含む)を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成する事業で、新たな需要や雇用の創出等を促し、我が国経済を活性化させることを目的としていました。
平成26年度補正予算の創業・第二創業促進補助金は、募集期間が平成27年3月 2日(月)~3月31日(火)、交付申請期間が平成27年5月21日(木)~6月12日(金)でした。
平成27年度の創業・第二創業促進補助金は、募集期間が平成27年4月13日(月)~5月 8日(金)、交付申請期間が平成27年6月12日(金)~7月3日(金)でした。応募総数1,170件に対して、採択総数775件でした。
創業促進補助金は、「新たなニーズを興す創業プランを応援する補助金」と言われるもので、補助率は3分の2で、補助金の範囲は100万円以上~200万円以内です。
第二創業促進補助金は、「家業を活かす第二創業プランを応援する補助金」と言われるもので、補助率は3分の2で、補助金の範囲は100万円以上~200万円以内です。
この制度は、申請期間が短く、これに対応するためには、事前の準備が重要となります。また、人気が高く年々採用率が低下しているようです。
b.ものづくり補助金
「ものづくり補助金」は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス革新事業」といい、国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため、認定支援機関(地域の金融機関や公的な支援機関、税理士や弁護士、中小企業診断士など、国の認定を受けた機関で、中小企業・小規模事業者にとっての相談窓口)と連携して、革新的な設備投資やサービス開発・試作品の開発を行う中小企業を支援することを目的としています。
平成21年には、「製品開発」をテーマとし、以降平成22年「経済危機対応」、平成23年「戦略基盤技術」、平成24年「グローバル」、平成25年「中小事業者」として継続してきたものです。
この補助金の対象者の詳細は、認定支援機関の全面的なバックアップを得た事業を行う中小企業・中小企業による共同体で、以下の要件のいずれかを満たすこととされています。
以下が例示されています。
1.革新的なサービスの創出
「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出等であり、3~5年計画で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。
2.ものづくりの革新
「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用した画期的な試作品の開発や生産プロセスの革新であること。
3.共同した設備投資等による事業革新
複数の企業が共同し、ITやロボット等の設備投資により、革新的な試作品開発等やプロセスの改善に取組むことで、共同事業者全体の3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。
支援内容・支援規模は、以下
1.革新的なサービスの創出(補助率 2/3)
(1)一般型 補助上限額:1,000万円
(2)コンパクト型 補助上限額:700万円
2.ものづくりの革新(補助率 2/3)
補助上限額:1,000万円
3.共同した設備投資等による事業革新(補助率 2/3)
補助上限額:共同体で5,000万円(500万円/社)
図3 経済産業省 平成26年度補正予算事業の案内
図4 経済産業省 平成26年度補正予算事業の案内
歯科技工所の場合は、CAD/CAM装置・技術の導入に採用事例があります。
この制度の申請には、税理士等の援助を必要とする場合がありますが、申請者自身の理解か前提となります。
図5 本稿関係の補助金と助成金の概念整理図
補助金 助成金
経済産業省 厚生労働省
企業向け 社員向け
審査有 審査無
〆1ヵ月 〆1年間
税理士 社会保険労務士
まとめ
今、歯科技工業界は大きな変革期を迎えている。その具体的表れの第一は歯科技工士不足がある。歯科技工士の48%が50歳以上であり、新卒者の離職率が5年で75%(当社は20%)である。第二には、CAD/CAM技術の進化による技工作業の機械化があります。
「歯科技工は、特殊だから」「歯科技工業界は、特殊な業界だから」と言い訳を先に用意し、変化に後ろ向きな姿勢が一部にあります。しかし、歯科技工所も一つの経営体として地域と業界に貢献し、社員の人間的成長の場になるためには、他業界に遜色のない労務環境を持つ業界と企業を目指す必要があります。
写真1 補助金を活用し、新たな機器記を導入した歯科技工所
国が行う政策は、一定の方向に民間企業を誘導することにより、日本全体の経済環境を改善し、社会を安定的に発展させることにあります。個別企業にとっては、制度を活用し経営の安定を図り、雇用を生みだし納税をして社会を支える企業として自立することにより地域に貢献し、国の政策に応えることが可能となります。
しかし、経済情勢の変化や国の政策変更、会計年度による予算枠の制約等により、その利用には、やや「煩雑さ」があり、書類作りに不慣れな場合には拒否感を伴うこともあります。事業計画等の書類作成は、審査の「勘所」に対応した準備が必要となります。しかし、これらの制度と運用を理解し、上手に利用することは、業界として、歯科技工所経営者の能力としても必要なことと思われます。
歯科技工士というライセンスを持つことにより、歯科技工所を興し経営に悩みながらも、「夢が 人生をつくる(自分の夢は、計画して行動すれば、実現する)」を経営理念に掲げ、今日まで経営を継続できた者として、歯科技工業界の経営の合理化・適正化のため、制度・政策研究と歯科技工所への活用の普及を図っていきたいと思っております。
参考webサイト
厚生労働省 雇用・労働
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/index.html
中小企業庁
http://www.chusho.meti.go.jp/index.html未来の企業★応援サイト
https://www.mirasapo.jp/index.html
経済産業省 平成27年1月 中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン
http://www.meti.go.jp/policy/servicepolicy/service_guidelines.pdf
平成26年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/index.html