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歯科技工士・岩澤 毅

「昭和」を点検する (講談社現代新書 1950) 半藤 一利 (著), 保阪 正康 (著)

2008年11月07日 | amazon.co.jp・リストマニア
負け戦に突き進む謎/責任を取らない謎, 2008/11/7

By 歯職人

 昭和史ことに第二次世界大戦に向かう日本の岐路を、点検する一冊となっている。
 戦争の昭和史の書き手としては、既に大家の域にある「歴史探偵」保阪正康・半藤一利両氏による公開対談を素材に本書は編まれている。
 この対談に編集者から与えられた切り口は、昭和の戦争の当事者が発する「ありふれた言葉」をキーワードにすることであり、二人の作家は「ありふれた言葉」に潜む日本人の行動原理に迫る。
 既に多くの著作を持つお二人であるが、自身の年齢等を考慮し次世代へ更なる研究の深化を求めるエールを送る一冊となっている。
 個々の登場人物等に関しては、著者たちの他の著作が用意されている。これらの著作群の道案内としての役割と今の時点での解説・補足も、本書は同時に果しているものと思われる。
 「ありふれた言葉」によって、責任を回避し結果から逃避する昭和の日本人の姿は、他の局面においても観察されるものと思われる。
 貴方の周りにも居ませんか?こんな口癖の人、「しかたなかった」「それはおまえの仕事だろう」「ウチはウチ」「この際だから」「(世界の)大勢」。そしてそこから生まれるものは、責任転嫁と情報操作。もし、そんな方が居て責任のある立場にいれば、あるいは立場を求め策動すれば、その動きは要注意です。 
 負けを負けと認めることが出来ない、負け戦から教訓を得ることが出来ない「昭和」の恥部は、現在も続いている。責任転嫁の姿勢は、哀れであり滑稽でさえある。そして、それは人と集団の成長を阻害する。 
 著者のお二人には、大人としての知性以上に昭和史の書き手として潔さが感じられる。


ショウワヲテンケンスル コウダンシャゲンダイシンショ
講談社現代新書
「昭和」を点検する

保阪 正康 半藤 一利【著】
講談社 (2008/07/20 出版)

237p / 18×11cm
ISBN: 9784062879507
NDC分類: 210.7


価格: ¥756 (税込)

詳細
なぜ、無謀な戦争に突入していったのか。
五つのキーワードがあぶり出す日本人の弱点。
昭和史研究の第一人者がどうしてもいま語っておきたい歴史の虚実がここにある。


序章 ありふれた言葉で昭和史をよむ
第1章 世界の大勢―近代日本の呪文
第2章 この際だから―原則なき思考
第3章 ウチはウチ―国家的視野狭窄の悲喜劇
第4章 それはおまえの仕事だろう―セクショナリズムと無責任という宿痾
第5章 しかたなかった―状況への追随、既成事実への屈服

判型:新書判
頁数:224p
造本・体裁:仮製・薄表紙・カバー

「時流」の恐ろしさを「昭和」から読み取る

「昭和」という時代を5つのキーワードから「点検」してみると、いったい何が見えてくるのか。第一人者が説き去り説きいたるうちに日本人の弱さが浮き彫りになる
著者紹介
保阪正康[ホサカマサヤス]
1939年、札幌市生まれ。同志社大学文学部卒業。ノンフィクション作家。昭和史の実証的研究を志し、延べ四千人もの関係者たちに取材してその肉声を記録してきた。個人誌『昭和史講座』を中心とする一連の研究で、第五十二回菊池寛賞を受賞

半藤一利[ハンドウカズトシ]
1930年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。『週刊文春』『文藝春秋』各編集長、専務取締役を歴任。作家。「歴史探偵」を自称。『漱石先生ぞな、もし』(文藝春秋)で第十二回新田次郎文学賞、『ノモンハンの夏』(文藝春秋)で第七回山本七平賞、『昭和史』(平凡社)で第六十回毎日出版文化賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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