歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

都技創立50周年記念シンポ 事後抄録

2006年03月08日 | 都技・都技ネットワーク26
社会保険歯科診療と歯科技工の法的位置
~法令の構造の考察を中心として~
秋田県技所属 岩澤 毅

証明のルール 立論・論争の作法
・全ての資料は出所を明示する。
・引用の際には、全体像を歪めない。
・論理に飛躍が無い。
・伝聞は無価値。
・公表され引用・参照可能な資料に対し論理的な検討を加える。
・以上により第三者の追試・検討可能性を担保する。

○ はじめに

第12部 歯冠修復及び欠損補綴
通則5
 歯冠修復及び欠損補綴料には、製作技工に要する費用及び製作管理に要する費用が含まれ、その割合は、製作技工に要する費用がおおむね100分の70、製作管理に要する費用がおおむね100分の30である。

この文言を含め法令を理解するためには、「法の支配」の構造を知ることが大切です。

国家行政組織法(昭和23・7・10・法律120号)
第12条 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。
3 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。
第14条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。

法の支配の構造は「階層構造」であり、また憲法・法律・他の秩序としてこの階層構造は「権限の委任・委譲の連鎖」です。逆の側面からは、「法的権限の根拠を求める連鎖」です。そして、法の支配は、下克上を許しません。

歯科点数表・「通則」は、健康保険法の第76条2項に根拠を持ちます。

○ 健康保険法第76条とは?

健康保険法 
(療養の給付に関する費用)
第七十六条  
保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2  前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定する

1項の要点-保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払う

すなわちここで、支払先すなわち誰に支払われるかを規定している。保険医療機関である歯科診療所が受け取るものと理解できます。

2項の要点-療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定する

すなわち2項と、他の法律(社会保険医療協議会法)を根拠に中医協の審議を経て、費用の額は診療報酬点数表として告示される(大臣告示)ことが、理解できます。

この大臣告示「別表第2第2章第12部通則の5」が、俗に言う「7:3」大臣告示です。

○ 「7が決まれば、 10が決まって 3が決まる」
実勢委託歯科技工料金が、診療報酬点数に反映

「通則の5」の文言を論理分析すれば、
a=製作技工に要する費用
b=製作管理に要する費用
c=歯冠修復及び欠損補綴料
とし、
連立方程式
c=a+b a:b≒7:3
と表現できます。

「外項の積と内項の積は等しい」ので、これを用い展開し 7b≒3a
両辺を7で割ると b≒3a/7
第一の式c=a+bにこれを代入すると c≒a+3a/7≒(7+3) a/7
cは、aを7で割り、10を掛けると≒

更に当局の政策として、政策目的・政策目標の附加(当局の政策誘導)が、存在し得る。
よって
±α(正しくは+α表記)=政策目的・政策目標の附加(当局の政策誘導)とすると
結果
改定点数≒ 10(実勢委託歯科技工料金調査結果等)/7±α
とすることが、通則の5と区分内関係点数に整合性・安定性・根拠性を与えます。

○ 結論
論理的な法令解釈から「昭和63年5月30日付厚生省告示第165号(7:3)大臣告示の意義」次のように結論付けることが出来ます。

昭和63年5月30日付厚生省告示第165号通則の5 「7:3」の意義は、(狭義の)歯冠修復及び欠損補綴料の「積算基準・根拠、算定基準」を、委託歯科技工料調査等を基礎に示した事である。

○まとめ

法律的には、健康保険制度の中に歯科技工士は当事者としては存在していないのであり、「大臣告示通則の5による委託歯科技工料金の分配拘束論」は影・幻です。
 何よりも再度確認すべきことは、通則の5は歯科技工士に対して社会保険歯科診療に係る委託歯科技工料金の当事者等への請求権等を認めるものではなく、現行の健康保険制度の正しい理解がより必要かつ重要との認識に立つことと考えます。
2006.03.08記

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