日本歯科技工学会第31回学術大会
プログラム・抄録集
平成21年 11月22日(日)午後3時30分
テーブルクリニック
1E-1530
座長 三好博文先生
岩澤 毅
歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)の検討
A.目的
歯科医療機関から外部委託される歯科技工に関し,海外委託やPFI導入に伴う病院歯科の歯科技工の外部委託等の混乱が見られる.これらの混乱に対し,歯科医療に医療法の業務委託の趣旨(第一条) 「業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により,医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り,もつて国民の健康の保持に寄与する」に準じた規定を設けることにより,歯科医療機関と歯科技工所の業務委託関係を明確化する必要があると考える.
B.方法
医療法と同施行規則の業務委託に関する部分から歯科医療に転用可能な条項を選び出し,歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の 業務委託に関する法律(仮称)を構想した.
C.結果と考察
医療法第15条の2は,病院,診療所の管理者に対し,「著しい影響を与えるものとして政令で定めるものを委託」する場合「当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない」と定めている.
医療法
第15条の2 病院,診療所又は助産所の管理者は,病院,診療所又は助産所の業務のうち,医師若しくは歯科医師の診療若しくは助産師の業務又は患者,妊婦,産婦若しくはじよく婦の入院若しくは入所に著しい影響を与えるものとして政令で定めるものを委託しようとするときは,当該病院,診療所又は助産所の業務の種類に応じ,当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない.
医療法第15条の2を受けて,医療法施行規則第9条の8~15に,検体検査,滅菌消毒.患者給食,患者搬送等々8業務とその各々の「基準」が列記されている.
ここに「歯科技工」を9番目の業務として追加し,「基準」は歯科技工所の歯科技工士法上の「構造設備基準」を活用する方法がある.
この措置は,政令(閣議)での「歯科技工業務」の追加,厚生労働省令での「基準」の追加であるから,新たな立法は必要としない.
管理者への義務付けであり,「歯科医師の裁量権」を直接規制するものではなく,また医科の前例を踏まえたものであるから,医事法上の疑義等は少ないものと思われる.
しかしながら1.厚生労働省内の担当課が医政局経済課医療関連サービス室である点が,歯科保健課との調整を必要とするものと思われる.2.財団法人医療関連サービス振興会等「周辺」法人と歯科の側の調整が必要と思われる.3.歯科医師の側に「歯科技工指示書」の発行義務の無い現在の片務的状況を解消できない恐れがある.等の問題点が有る.
そこで,以下に掲げる歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)が構想される.
(この法律の目的)
第一条 この法律は,歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関し必要な事項を定めること等により,良質な歯科補てつ物の質の確保を図り,もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする.
(用語の定義)
第二条 この法律において,「歯科補てつ物」とは,特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物,充てん物又は矯正装置等をいう.
2 この法律において,「歯科技工所」とは,歯科技工士法(昭和三十年八月十六日法律百六十八号)第五章第二十一条から第二十七条に定めるものをいう.
(品質基準)
第三条 「歯科補てつ物」の品質基準は,良質な歯科補てつ物の確保を図るものでなければならない.
(業務委託)
第四条 病院,歯科診療所の管理者は,歯科補てつ物等の作成等の業務を歯科技工所に委託しようとするときは,当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない.
(歯科技工指示書)
第五条 歯科医師は,歯科補てつ物等の作成等の業務を歯科技工所に委託しようとするときは,歯科技工士法(昭和三十年八月十六日法律百六十八号)第四章第十八条に定める歯科技工指示書を発行しなければならない.
(省令への委任)
第六条 「歯科補てつ物」の品質基準は,厚生労働省令で定める.
D.結論
歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)は,医療法の趣旨に準じ,歯科技工の外部委託等に関する混乱を解消することが示唆された.
参考文献
1)岩澤毅:「歯科補てつ物法」(仮称)を提案する-平成17年(2005年)9月8日医政歯発第0908001号を読む-,ごまめ,36:47~49,2006.
Iwasawa Tsuyoshi
Discussion on the Law concerning the Entrustment of Business to Manufacture Dental Prosthesis, etc (Provisional title)
As to the dental techniques entrusted by dental institutions to outside organs, some confusion is observed in the entrustment of dental techniques outsourced by dental clinic along with the introduction of overseas entrustment and PFI. In order to cope with such confusion by introducing a rule similar to the business entrustment referred to in the Medical Care Act to the dental treatment, we discussed the initiative to clarify the relation between dental institutions and dental laboratories in the business entrustment.
日本歯科技工学会第31回学術大会
大 会 長 斉藤 武史 (日本歯科技工学会九州・沖縄支部 支部長)
準備委員長 直塚 正昭 (社団法人福岡県歯科技工士会 会長)
1.会 期 平成21年 11月22日(日)
11月23日(月・祝) 10:00 ~ 17:00 (懇親会18:00~20:00)
9:00 ~ 16:00
2.会 場 アクロス福岡
〒810-0001
福岡県福岡市中央区天神1-1-1
TEL 092-725-9111(代表) 会場までの地図はこちらをご覧下さい
3.内 容 大会テーマ:歯科技工の趨勢を探る -咀嚼機能の回復と審美的調和を求めて-
特別講演 I: 「歯科補綴の戦略」-CAD/CAM補綴とインプラント治療の位置づけ-
(認定士講習会) 講師 佐藤 博信 先生 (福岡医科大学咬合修復学講座 冠橋義歯研究分野 教授)
特別講演 II: 「審美修復とLongevityを考える」
講師 西村 好美 先生 ((有)デンタルクリエーションアート 代表)
企画セミナー: (実行委員会招聘講師による企画セミナー5演題)
テクニカルコンテスト: 学生部門 (規定課題)
<会員発表内容>
・ポスター発表(会員)
・テーブルクリニック(会員)
・デモンストレーション(賛助会員発表)
・器材展示(賛助会員)
プログラム・抄録集
平成21年 11月22日(日)午後3時30分
テーブルクリニック
1E-1530
座長 三好博文先生
岩澤 毅
歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)の検討
A.目的
歯科医療機関から外部委託される歯科技工に関し,海外委託やPFI導入に伴う病院歯科の歯科技工の外部委託等の混乱が見られる.これらの混乱に対し,歯科医療に医療法の業務委託の趣旨(第一条) 「業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により,医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り,もつて国民の健康の保持に寄与する」に準じた規定を設けることにより,歯科医療機関と歯科技工所の業務委託関係を明確化する必要があると考える.
B.方法
医療法と同施行規則の業務委託に関する部分から歯科医療に転用可能な条項を選び出し,歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の 業務委託に関する法律(仮称)を構想した.
C.結果と考察
医療法第15条の2は,病院,診療所の管理者に対し,「著しい影響を与えるものとして政令で定めるものを委託」する場合「当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない」と定めている.
医療法
第15条の2 病院,診療所又は助産所の管理者は,病院,診療所又は助産所の業務のうち,医師若しくは歯科医師の診療若しくは助産師の業務又は患者,妊婦,産婦若しくはじよく婦の入院若しくは入所に著しい影響を与えるものとして政令で定めるものを委託しようとするときは,当該病院,診療所又は助産所の業務の種類に応じ,当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない.
医療法第15条の2を受けて,医療法施行規則第9条の8~15に,検体検査,滅菌消毒.患者給食,患者搬送等々8業務とその各々の「基準」が列記されている.
ここに「歯科技工」を9番目の業務として追加し,「基準」は歯科技工所の歯科技工士法上の「構造設備基準」を活用する方法がある.
この措置は,政令(閣議)での「歯科技工業務」の追加,厚生労働省令での「基準」の追加であるから,新たな立法は必要としない.
管理者への義務付けであり,「歯科医師の裁量権」を直接規制するものではなく,また医科の前例を踏まえたものであるから,医事法上の疑義等は少ないものと思われる.
しかしながら1.厚生労働省内の担当課が医政局経済課医療関連サービス室である点が,歯科保健課との調整を必要とするものと思われる.2.財団法人医療関連サービス振興会等「周辺」法人と歯科の側の調整が必要と思われる.3.歯科医師の側に「歯科技工指示書」の発行義務の無い現在の片務的状況を解消できない恐れがある.等の問題点が有る.
そこで,以下に掲げる歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)が構想される.
(この法律の目的)
第一条 この法律は,歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関し必要な事項を定めること等により,良質な歯科補てつ物の質の確保を図り,もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする.
(用語の定義)
第二条 この法律において,「歯科補てつ物」とは,特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物,充てん物又は矯正装置等をいう.
2 この法律において,「歯科技工所」とは,歯科技工士法(昭和三十年八月十六日法律百六十八号)第五章第二十一条から第二十七条に定めるものをいう.
(品質基準)
第三条 「歯科補てつ物」の品質基準は,良質な歯科補てつ物の確保を図るものでなければならない.
(業務委託)
第四条 病院,歯科診療所の管理者は,歯科補てつ物等の作成等の業務を歯科技工所に委託しようとするときは,当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない.
(歯科技工指示書)
第五条 歯科医師は,歯科補てつ物等の作成等の業務を歯科技工所に委託しようとするときは,歯科技工士法(昭和三十年八月十六日法律百六十八号)第四章第十八条に定める歯科技工指示書を発行しなければならない.
(省令への委任)
第六条 「歯科補てつ物」の品質基準は,厚生労働省令で定める.
D.結論
歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)は,医療法の趣旨に準じ,歯科技工の外部委託等に関する混乱を解消することが示唆された.
参考文献
1)岩澤毅:「歯科補てつ物法」(仮称)を提案する-平成17年(2005年)9月8日医政歯発第0908001号を読む-,ごまめ,36:47~49,2006.
Iwasawa Tsuyoshi
Discussion on the Law concerning the Entrustment of Business to Manufacture Dental Prosthesis, etc (Provisional title)
As to the dental techniques entrusted by dental institutions to outside organs, some confusion is observed in the entrustment of dental techniques outsourced by dental clinic along with the introduction of overseas entrustment and PFI. In order to cope with such confusion by introducing a rule similar to the business entrustment referred to in the Medical Care Act to the dental treatment, we discussed the initiative to clarify the relation between dental institutions and dental laboratories in the business entrustment.
日本歯科技工学会第31回学術大会
大 会 長 斉藤 武史 (日本歯科技工学会九州・沖縄支部 支部長)
準備委員長 直塚 正昭 (社団法人福岡県歯科技工士会 会長)
1.会 期 平成21年 11月22日(日)
11月23日(月・祝) 10:00 ~ 17:00 (懇親会18:00~20:00)
9:00 ~ 16:00
2.会 場 アクロス福岡
〒810-0001
福岡県福岡市中央区天神1-1-1
TEL 092-725-9111(代表) 会場までの地図はこちらをご覧下さい
3.内 容 大会テーマ:歯科技工の趨勢を探る -咀嚼機能の回復と審美的調和を求めて-
特別講演 I: 「歯科補綴の戦略」-CAD/CAM補綴とインプラント治療の位置づけ-
(認定士講習会) 講師 佐藤 博信 先生 (福岡医科大学咬合修復学講座 冠橋義歯研究分野 教授)
特別講演 II: 「審美修復とLongevityを考える」
講師 西村 好美 先生 ((有)デンタルクリエーションアート 代表)
企画セミナー: (実行委員会招聘講師による企画セミナー5演題)
テクニカルコンテスト: 学生部門 (規定課題)
<会員発表内容>
・ポスター発表(会員)
・テーブルクリニック(会員)
・デモンストレーション(賛助会員発表)
・器材展示(賛助会員)