その日、朝起きたらテレビが團十郎の死を伝えていた。
あまりにショックでにわかには信じられなかった。
新しい歌舞伎座の杮落としまでもうすぐだというのに
その華やかな舞台を飾るはずだった役者がこうも続けざまに・・・。
市川團十郎で印象深いのは、やはり彼の襲名の時のことだ。
歌舞伎界の大名跡である市川團十郎を襲名するということで
テレビでも特別番組が放送された。
そのなかで忘れられないのはNHKで放送された
團十郎襲名までの日々を追ったドキュメンタリーだった。
その頃の團十郎は名優とは言い難い、役者としては今一つという評価であったと思う。
特に発声が喉を締め付けていて朗々とした感じにならない。
番組でも義太夫の師にそれを指摘され何度も何度も練習する團十郎の姿が写しだされていた。
ところが練習しても彼の発声は一向に改善されない。
それでも、何度も何度も練習を重ねる團十郎の姿は
大きな名跡を継ぐ宿命を背負いながらその名にふさわしい実力の備わらない苦しみに
もがいているようだった。
その懸命に稽古する真面目さひたむきさに胸を打たれた。
襲名興行は成田屋の家の芸である歌舞伎十八番がずらりと並ぶ豪華な演目で
とても華やかだった。
今はすっかり大人になった海老蔵もまだ可愛らしい幼子で
「外郎売」で親子共演し新之助を襲名した。
懐かしく楽しい舞台の思い出だ。
あれから20年以上、
團十郎は病と闘いながらずっと精進を続けてきたのだな。
新しい歌舞伎座に立つ姿を見たかった。
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