もう一枚アナ・マリアのアルバム。堀内孝雄の往年のヒット曲「君のひとみは100万ボルト」ではないが、アナの瞳からも「ビビビッ」とラヴラヴ光線が飛んでくる。見つめられると、吸い込まれてしまいそうなほど、魅力的で大きな瞳の持ち主だ。このアルバムは、彼女のデビュー作で、オペラから選曲がなされている。そのためジャズ・ファンからは人気のないアルバムなのだが…。
ローマ生まれのアナ・マリアは、13歳でカーネギー・ホールで歌ったという天才少女だった。クラシック奏者の一家に育ったマリアは、ソプラノをベースとした唱法で、ジャズ~ポップス界でも大活躍。50年代には数多くの(ミュージカル)映画にも出演した。本作は彼女がオーケストラをバックに、本格的にスタンダードに挑戦したセカンド・アルバム。あまりにもクリアーで美しいヴォイスが、生粋のジャズ・ファンからは敬遠されがちだが、「アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー」「テンダリー」「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」等で聴けるロマンティックな表現力は、並みの歌手とはレベルが違う。こんな美声が聴けるなら、ジャンルなどどうでもよいといいたい。本当に感動的なアルバムだ。
アルバムには「RICITAL」と書かれているが、コンサート録音ではない。1954年ロンドンはアビーロード・スタジオ(ビートルズ!)で録られた独奏集だ。原版は仏Pathe Marconi。今となっては、音源的にSP盤以上に入手困難なアルバムだ。77歳、晩年の録音ということもあり、枯れた調べのよさ(笑)がわかる方でないとお奨めできないが、新星堂がCD化しているので、興味ある方はどうぞ。例えばユンディ・リと続けて聴くと、ショパンが別の曲に聴こえてしまう…。ジャケットには珍しくコルトー自身が登場している。これは音源以上に貴重かも。
ペギー・リーを、どうしても、もう一枚取り上げておきたい。「The Man I Love」 ガーシュイン兄弟が1924年に書いた有名なスタンダード・ナンバーをそのままタイトルにしたこのアルバムは、1956年彼女がキャピトル・レーベルに復帰した際の第一弾として発売されたもの。ペギーが脂の乗りきった時期のアルバムであり、中でもバラード・ナンバーは、ため息が出るほど素晴らしい。オーケストラの指揮をフランク・シナトラが、編曲をネルソン・リドルが担当。実にゴージャスなアルバムとなっている。「いつか私にも愛する人が出来るの…。それはもしかしたらあなたかしら。それとも?」 ハスキー・ヴォイスでしっとりと歌いあげるペギー。夢見るような表情をそのままとらえたジャケットに、またしてもため息が…。
ペギー・リーといえば、なんといっても「ブラック・コーヒー」の名唱で知られるが、本作はオリジナルの10インチ盤。後に12インチ化された時は、似たデザインのカラー版となっていた。曲もジャケットも本当にムードあふれる傑作といえるだろう。真夜中に明かりを落として、(無理にブラックである必要はないが)コーヒーでもすすりながら拝聴すると、「ジャズっていいな」なんて誰でも思ってしまうのではないだろうか。
シベリウス/ヴァイオリン・コンチェルトの名演のひとつとしてよく取り上げられるアルバムであり、カーミラ・ヴィックスは、この1枚でのみ知られる女流ヴァイオリニスト。彼女の伸びのある艶やかなヴァイオリンは、一度聴くと忘れられない。残された録音が意外に少ない(とはいえ、ベートーヴェン、チャイコフスキー等は聴ける)のは残念だが、そのことがヴィックスを幻のヴァイオリニストたらしめていることも確か。個人的にはヌヴー盤と並ぶシベリウスの愛聴盤でもある。50~60年代独特の味のある絵柄が感じの良いジャケは、なぜか後期にはグリーンの色調に変更されている。
「トランペットの詩人」などというシャレた邦題がつけられたアルバム1枚を残しているだけ(ただし何枚かの私家録音盤あり)のフラッセラは、白人のトランペッター。タイトルどおりフラッセラのプレイは、ソフトでリリカル。白人でリリカルなトーンのペッターとなると、すぐに思い浮かぶのがチェット・ベイカーだろう。ともによくうたうプレイが身上のペッターだが、ベイカーほど甘く流れないところが、フラッセラたるゆえん。こんな哀愁のあるプレイが聴けるアルバムは貴重であり、ジャズ界の“知られざる秘宝”として、愛好家からの評価も高い。だが、決してマニアックな内容のアルバムではないので、マイルスぐらいしか聴いたことのない若いヒトにも、是非ともオススメしたい1枚だ。ジャケットもご覧の通り邦題まんまのムードあるもの。
ハスキル(Piano)とグルミオー(Violin)の歴史的名盤。優雅で気品のあるベートーヴェンだ。ジャケットもレタリングのセンスのよさを活かしたシンプルだが、演奏同様気品のあるもの。グレー、ピンク、パープルと、配色の妙はお見事の一言。
以前紹介したEP盤「Let There Be Love」のLPヴァージョン。カラフルでポップな枠で囲っただけなのに、なんとも楽しいデザインに早変わり。これも壁にかけておきたい。(なんていっているうちに、壁中がジャケケットで埋め尽くされる!) 少し頼りない(はっきりいえば、あまりうまくない)Joniのヴォーカルも、素敵なジャケを眺めながら聴いていると、クセになってしまうから不思議だ。