陽が沈んでいく。
瓶を鳴らす風の音に気付いた人が、振り向き、微笑む。
その音に誘われるのか、海岸を散歩する人たちがレストランに入って来る。
何か客引きをしているような気分になってきた。
浜には、旅行者、土地の人、子供、お年寄り、いろんな人が集まって来る。
あれほど焼けて、照り返しの強かった砂浜は、もう熱くない。
皆、言葉少なに、日没を見送る。
何か、静かに一日を締めくくる儀式のようだ。
かすかに聞こえる波の音、風の音…
陽の沈みゆく空は、青、オレンジ、そして白が混ざり合い、薄い紫に…
ほっとするような、それでいてどこか寂しく懐かしい光。
それは、遠い昔、幼いころに見た夕日…
やがて、光は闇に吸い込まれ、夜が訪れる。
ランプと裸電球が灯り、夜の海岸に賑わいが戻る。
物売りの声、テーブルを囲む旅行者の弾んだ会話、様々な種類の音楽、歌声…
遠い異国、熱帯の島、華やいだ怪しい夜の空気…
しかし、その喧騒から離れると、暗く静かだ。
見上げれば、漆黒の空に瞬く数え切れない星、天の川。
宇宙の中のちっぽけな自分。
ひどく心細く、肌寒い。
今夜は少し涼しくなりそうだ。
夕暮れ前で、一人ぼうっとして一日を顧みている。
>ランプと裸電球が灯り、夜の海岸に賑わいが戻る。
私の想い出は、これと反対でした。
小さな古びた漁港で秋風にしては生ぬるい微風。
磯の香りがかすかに鼻を刺激した。山育ちの私には
感動の香りです。ここは海なんだ・・・と実感。
そんな、静かな田舎の漁港でデートした若き頃が
思い出されます。何か照れますね・・・(笑)
写真とは不思議なもので、もう忘れてしまったと思っていたことも、見た瞬間鮮明によみがえって来るときがあります。
この画像もそんな一枚です。
私も山育ちですから、海に対してはやはり特別なものという感覚があります。