あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

熱砂の国と同じ夕陽(SQ4)

2020年05月04日 | 世界樹の迷宮4関連

 

 

これは、2014年4月15日に一端掲載して、

レインティアの過去をもっとしっかり構築しようかなと一端ボツにしたSSです。

あの頃はボツにしましたが、日の目を見そうも無いので、再掲します。

レインティアはプリムローズといずれかは心通わせて貰うつもりでした。

宜しければ、下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<熱砂の国と同じ夕陽>


「それでですね!ベルったら、最近、私のお菓子を食べてくれないんです!
理由を聴いたら「僕、そろそろお腹出て来るお年頃だから、甘い物控えないと…
と思うんだ…」ですって!ベルは太ってても可愛いです!そう思いませんか!?レイン君!」

街で見掛けたルーンマスターの少女、プリムローズを誘って、ソードマンの少年レインティアは、
夕陽が見える絶好の場所である高台の丘に来ていた。
煉瓦の塀に腰掛けて、レインティアは、ゆっくりと沈んで行く赤い夕陽を見ながら、
今日一日を振り返るのが好きだった。
それに夕陽は砂漠の故郷を思い出させる。
大きな夕陽を眺める事無く、熱心に義父のベルガモットの話を捲し立てるプリムローズに、
レインティアは呆気に取られると、すぐに可笑しくなって破顔した。
その明るい太陽のような笑顔に見惚れ、プリムローズも言葉を失い、
レインティアの頬が茜色に染まって行くのを夢の中にでも居るかのように眺めた。
夢であるならば、今この瞬間に醒めないで欲しいと何故か瞬間的に思う。
理由が分からないまま呆けているプリムローズに、レインティアが視線を夕日から落とすと呟くように口を開いた。
白金の長い睫がレインティアの頬に影を落とす。

「いいな。家族がいるって、やっぱいいよな」

急に表情を失くした少年にプリムローズは急に心細くなる。
何か言わなくてはと焦って口を開く。
そしてすぐに後悔した。

「あの…。レイン君の家族はご健在なのですか?」

レインティアの答えは無かった。沈黙が痛い。
羨ましがるという事は、既に彼はその家族を失っている可能性の方が高い。
何故そんな事を聴いてしまったのか。
家族を失くしているだろう少年へ配慮ない自分にプリムローズは激しく自己嫌悪に陥る。
何と声を掛ければいいのか、すぐに謝ろうと彼の名を呼んでみた。

「…?…あの、レイン君?」
「!!…あ、ごめん。いる。いるよ。サイファディアってトコに皆いるんだ」
「……皆様……ですか?沢山いらっしゃるんですね」

プリムローズの心配事は杞憂に終わったようだった。
サイファディアという地域名は聴いた事は無かったが、彼の故郷なのだろうか。
彼は南方の砂漠地帯の少数民族の出だと誰かと話しているのを聴いた事がある。
サイファディアというのがその土地の名なのだろうか。
懐かしむようなレインティアの優しい表情にプリムローズも安堵の笑みを零した。

「あぁ、父さん、母さん、兄さんも姉さんも一杯いるんだ。
兄弟沢山居てさ、下にも弟や妹もいるんだ」
「……其処で、皆様はレイン君が帰るのを待っていらっしゃるんですね」

彼の人懐っこさは大家族で育ったのが理由なのだろう。
大勢の良く似た兄弟に囲まれ笑っている彼の姿が目に浮かぶ。
熱い砂漠の中、レインティアの行方を案じているかもしれない。
プリムローズは彼の言葉を待った。

「………あぁ。土産話が沢山ある。皆、きっと待ちくたびれてんじゃないかな」
「逢いに行かれないんですか?」
「………うん、もっと俺が強くなったら、闘う相手が居なくなったら行けると思うんだ」

彼は恐らくまだ若い内は帰らないつもりなのだろう。
大きなグレートソードの柄を握り締めると更に幼子のように無邪気に笑ってみせた。
プリムローズもそれに応えるように微笑み返す。
プリムローズには帰るべき故郷は無い。
義父のベルガモットも彼の故郷に付いて話す事も無かったし、物心付いた頃には、
ルーンマスター養成学校に入学していたので、故郷というものに憧れているのかもしれない。
レインティアの故郷、サイファディアの事をもっと聴いてみたい気もしたが、
彼が顔を上げて見詰めている先が分からなくて、プリムローズは不安になって聴けなかった。

「そうですか」

一言、そう呟くと静かにそして確実に沈んでいく夕陽を目で追う事にした。
視線を合わす事無く、レインティアが囁く。
「あぁ」そしてもう一度自分に言い聞かせるかのように、「あぁ」と囁いたが、
プリムローズには届かなかった。


「サイファディアという土地か民族……かい?」

甘い物の買い出しから帰り、その戦利品を届けにプリムローズは、
育ての親である義父のメディック、ベルガモットの部屋を訪ねていた。
街の図書館に行って重い地図書を開くより、知識豊かな冒険者でもある義父に聴いた方が早いと踏んだのだ。
物の次いででもある。
暫く考えた後、ベルガモットは愛娘に何故その名を聴くか尋ねた。

「レイン君の故郷らしいのです。彼は当分帰郷する気はないみたいだから、知りたいなと思ったんです」

ベルガモットは僅かに目を見開くと「そうか」とだけ囁き、プリムローズには分からないように背を向け、
彼女が買って来たお菓子入りの紙袋の中から自分が頼んでいたものだけを取り出して行く。
そして巧妙に会話を組み立てていく。
聡いプリムローズに真意を読み取られないように慎重に口を開いた。

「生憎、僕は詳しく無いな。
ただ、砂漠の排他的な民族らしいから街の図書館でも恐らく詳しい事は分からないだろうね。
レインティアも余り故郷の事を根掘り葉掘り聴かれたくないと思うから、
プリムも配慮してやった方がいい」

ベルガモットはそう言って自分の財布から貨幣を出すと、
買物の駄賃をプリムローズの手のひらに乗せ、礼を言うと「おやすみ」と微笑む。
プリムローズは義父がそう言うのなら、きっと他者に聴いたり図書館に行くのも無駄だろうと理解した。
そして故郷の話は彼の前では禁句であると自らに誓いを立てる。
プリムローズは深く礼をすると大きな紙袋を抱え自室へと戻って行った。
プリムローズが部屋から出て行ったのを確認するとベルガモットは大きく安堵の溜息を吐いた。
どうやら誤魔化せたようである。
嘘は吐いていないものの、ベルガモットは愛娘に言えなかった。
そしてレインティアの心中を思い、彼女に知らせるべきではないと悟った。
レインティアの部族、そして住んでいた土地の言葉で「サイファディア」は「天国」を意味する。
家族が天国にいるという事は彼は家族全員を失くしているという事になる。
5年程前、風の噂で聞いた事がある。
砂漠で数百年に1度しか来ない大規模な竜巻が発生し、10以上の部族の村が壊滅したというものだ。
レインティアの出身の砂漠と同じ名。
恐らく彼の部族もその犠牲になったのだろう。
行商や狩りに出ていた者で助かった者は何人かいたらしいが、彼もその内の一人という事になる。
5年前ならレインティアもまだ12~13歳くらいの頃だ。
そんな幼子が一人で生きて行くには並大抵な事ではなかっただろう。
そんな苦労も見せない明るい笑顔の少年にベルガモットは眉を潜めた。

「ホントに……いい子過ぎて……反対するトコが見付からないから困るな……」

大きな果物のグミの袋を開け、苺のグミを口に放りながらベルガモットは小さく愚痴を呟くのだった。


<了>


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アメリカのサイクロンとか砂漠のサンドストームとかで、こういう子、
恐らく一杯居るんじゃないかなと胸が痛みます。

 


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