WAMC

早朝と夜のメンテナンス専門整体

胃がんの手術後の経過と顎関節症

2022-08-30 15:20:12 | 日記

このページは『顎関節症』とについて主に記載しています。

KEYWORD 胃切除術後後遺症 胃もたれ 顎関節症 ダンピング症候群

 

胃がんの切除術を受けられた患者様で、その後の経過です。

それまでは全く気にされていなかったようなのですが、いわゆる胃切除術後症候群で、胃もたれのような感覚があるそうです。

これは、ダンピング症候群と呼ばれるもので、状況としては、食べたものが(胃が小さいので)一気に腸へ流れ込むことで生じます。

 

 

 

 

食後すぐに現れる腹痛や、動悸、発刊などの早期ダンピング症候群。

食後2~3時間経過して現れる、動悸、発刊、めまい、失神、脱力、手指の震えなどの後期ダンピング症候群。

 

これらが起こる原因は、胃液分泌量の低下と貯留機能の破綻により、浸透圧の高い食べ物が急速に腸内へ流入することです。

あと、病院でも説明があると思いますが、胃の切除により、赤血球の合成に必要な鉄分とビタミンB12が不足しがちなので、高確率で鉄欠乏性貧血になると言われています。

 

対処法としては、

①1回の食事量を減らす、回数を分けて少しずつ食べる。

②食事中の水分量は少なめにする、流し込むような食べ方は控える、お茶漬けなどは注意。

③よく噛んでゆっくり食べる。

④症状が出た時は頭を上げて安静にする。左側臥位が良いとされる。

 

※食事の量や回数を分けることは容易に想像できます。

※熱中症が心配ですが、水分量を少なめにする理由は、固形物より早く腸内に移動するため負担増になるからと思われます。

※今回、問題なのは、顎関節症により十分に咀嚼できないことです。

※左側臥位が良いとされるのは、恐らく噴門と幽門が胃の右側にあるからだと思われます。解剖学的に見てその方が腸内への移動をゆるやかにしてくれると思われます。

 

 

 

さて、このブログのテーマは関節拘縮ですが、

ご多分に漏れず『顎関節症』もこれに該当すると思われます。

顎関節症の主症状は以下の3つです。

①顎運動時痛

②開口障害

③関節雑音

⚠歯科医院などでマウスピースを処方されています。

 

顎関節に関する病態は

■顎関節症 Ⅰ~Ⅴ型

■顎関節炎(原因は感染、外傷、変形、リウマチ、二次性)※二次性に関しては外傷後または筋筋膜痛症候群において発生すると考えられている

に分類されます。Hoffaの分類とは少し違うようです。

参考)https://hotetsu.com/s4_03_001.html

 

ここでは、顎関節症 Ⅰ~Ⅴ型までを見ていきましょう。

当院で対応可能な範囲はⅠ~Ⅱ型と思われます。Ⅲ型に関しては、関節円板の整位を維持することは可能かもしれません(方法はⅠ~Ⅱ型の方法に準じる)が、特にⅢ‐b型は専門医療機関への受診を推奨します。

1)咀嚼筋障害(Ⅰ型):病態は筋肉の問題です 筋肉部の持続的疼痛を主症状とします。

2)顎関節部障害(ⅡとⅢ型)

Ⅱ型 関節包・靱帯障害:病態は関節包・靱帯の慢性外傷性病変を特徴とします 画像所見による骨変化は認めません

Ⅲ型 関節円板障害:これはaとbに分類されます。関節円板が復位を伴うかどうかで判断できます。症状としては、クリック音や関節部疼痛があればⅢ‐a型(復位を伴う)、突発的に開口障害に至る(ロッキングする)がある場合はⅢ‐b型(復位が伴わない)と判断できます。いずれも画像所見による骨変化は認めません。

Ⅳ型 変形性顎関節症 骨自体の変形を伴うので鍼灸などでは根本的な治療にはならないと思います。ただし、その他に積極的な治療法が無い場合など、(薬剤を用いず)疼痛緩和などを目的年経施術は可能です。

Ⅴ型 他覚症状を伴わない顎関節症とされています。ガイドラインには性格ないし人格検査やカウンセリングの項目があります。この型に分類される場合においても、鍼灸マッサージで一定の効果を認める場合があるかもしれませんが、その他の疾患が本当に隠れていないか十分に見極める必要があるでしょう(セカンドオピニオン推奨)

 

 

前置きが長くなりましたが、この患者様の症状は

開口障害と咀嚼時の疼痛、及びクリック音なので、悪くてもⅢ‐a型と思われます。

当院では、顎関節周囲筋緊張の緩和を主目的として施術を行います。

指圧やマッサージなども適宜行いますが、強い圧力を掛けると顎関節自体にストレスをかけますし、整位に保持することが困難であるため、鍼治療を推奨します。

また、顎関節自体の動きに影響を与えると思われるツボが肘などに点在することがありますので、併用することがあります(案外こちらの方が効果的だったりします)。

 

 

治療を行うということは、変化を与えるということなので、治療前の状態に復元できるということも必要かと思われます(ズレているものをズレてない位置にしたら悪化したということは良くあることです)。

ただし、治療前の状態を正確に記録することは困難なので、治療に際しては慎重に少しずつ変化を確認しながら行うようにしています。


相手の立場になって考えるとは?

2022-08-27 13:09:01 | 日記

このページは『理解』について記載しています。

 

私自身も怪我によって、右肩の拘縮が若干あります。

日常生活が送れない程ではありませんが、時々痛みがあったり、片腕では余り重いものは持てなかったりと、多少の不便さはあります。

 

 

患者の立場として言えば、『この辛さを分かってほしい』ということも強くあるかと思います。

 

 

結局のところ、当事者は患者さんであり、医療従事者は『本人』にはなれないのです。

 

『理解』という言葉を意味する『understand』の本来の意味は、

『あなたとわたしの間に立つ』だそうです。

 

『under』は『◯◯の下に』という意味が一般的ですが

語源的には『◯◯の間に』だそうです。

 

理解という言葉の意味は

 

『(あなたと同じになることで)理解する』ではなくて

 

『あなたの立っている位置に、(私の位置から半分だけ近寄って)よく見る』という解釈がしっくりきます。

 

 

 

遠い所に立っていては、支援できないこともあるので、

相手の状況を良く見られるようにするため、相手との距離を半分だけ縮める。

 

これが、私の思う『理解』です。

 

決して、『あなた』と『わたし』は同じではない。

 

あなたの立っている位置に同時に私が立つことはできない。

 

しかし、支えることはできるかもしれない。


痛みをどうやって伝えるか?

2022-08-27 11:08:00 | 日記

このページは『オノマトペ』について記載しています。

 

当院では、病院のように画像診断などの精密検査ができないので、特に問診に注力する必要があります。

病院より時間を掛けて診てもらえると言った印象を持たれ易いのはそのためかもしれません。

 

『痛み』の問診に関しては、軽症のものから重度のもの、かなり緊急性を要するものなど様々ですが、

 

基本的なことは

 

『いつからですか?』

『どのあたりが痛みますか?』

『ずっと痛みますか?』

『時々痛みますか?』

『何かをした時に痛みますか?』

 

など、痛みの原因を探るために、様々な聞き方をさせて頂きます。

 

人によって痛みの感じ方や程度、表現方法も異なるので、『どのぐらい痛いか?』ということを客観的に評価することは非常に難しいのです。

 

そのため、痛みの強さを確認する時には、『評価スケール』を使うことがあります。

 

主なものには

視覚的評価スケール:VAS(Visual Analog Scale)

表情評価スケール:FRS(Face Rating Scale)

数値評価スケール:NRS(Numeric Rating Scale)

などがあります。

 

実際の臨床でも使うことは多いです。

 

使用目的は、治療経過が良好かどうかを判断すること、あとは医師に経過報告書を提出する際に使用することがあります。

 

本題の『オノマトペ』ですが、実際に診断された病名と、オノマトペには一定の関連性があるという調査があります。

 

最も多いオノマトペは『ズキズキ』だそうです。

実際にズキズキで表現された病名は、片頭痛、肩関節周囲炎、坐骨神経痛、頚椎症などがあるようです。

 

個人的には、片頭痛や肩関節周囲炎などは、『ズキズキ』と表現できそうですが、坐骨神経痛は『ジンジン』とか『グゥー』とか、頚椎症は『ズキっズキっ』とか『ちょっと熱いような感じ』とかになりそうです。

 

その他、血管の炎症によって生じる片頭痛などは『ガンガン』、関節リウマチなどの関節の痛みは『ギシギシ』(関節の炎症により骨や軟骨が破壊されている状況による感覚でしょうか)、帯状疱疹後神経痛などの神経痛では『ピリピリ』や『チクチク』が多いようです。たまに『パッパッ』という表現をされる方もおられます。

 

患者さんも、このオノマトペを使用して、痛みを具体的に伝える努力をしようとしているようですが、実際のところは約70%の方が『上手く説明できなかった』と回答しているアンケートがあります。

 

実際の臨床でも、『どんな性質の痛みですか?』と聞いた時に、『よく分からない』という返答が多いのも事実です。

 

そういう時は、発症機転や経過などから、『◯◯な痛み方ですか?』などと促すように聞いてみます(実際のところ、そんなことはどうでも良いから早く何とかしてくれ!)という無言の圧力を感じることもありますが^^;

 

痛みの表現方法は治療過程で変わることがあります。

それは治癒に向かっている時と、悪化している時、または全く別の病気が発生している時があります。

 

オノマトペで全ての病気を判断することはできませんし、それ以外にも身体所見などから総合的に病態を把握するよう努めています。


拘縮の分類:Hoffaの分類

2022-08-26 19:35:35 | 関節拘縮の雑学

このページは『拘縮の分類』について記載しています。

拘縮の分類には以下の5つがあります。

 

①皮膚性拘縮

②結合組織性拘縮

③筋性拘縮

④神経性拘縮

⑤関節性拘縮

 

以下に、それぞれを詳しく見ていきましょう。

①皮膚性拘縮

熱傷後や皮膚挫創後に皮膚が壊死または損傷し、瘢痕治癒後に生じる瘢痕拘縮。

熱傷ではⅡ度・Ⅲ度の真皮深層熱傷で生じることが多いとされています。

また、手術後にもよく見られます。

当院では、切り傷などの怪我や、(骨折などの)手術後の皮膚のツッパリ感が残存し、そのため関節拘縮を訴え来院される方がおられます。

顔面の怪我などで傷をできるだけ目立たないようにしたいと言う方もおられます。

完全に回復することは難しいですが、ツッパリ感を含め軽減する傾向にあります。

 

 

②結合組織性拘縮

皮下組織、靱帯、腱、腱膜、筋筋膜など主に結合組織によって構成されるものに起因する拘縮。

代表的なものとして、Dupuytren拘縮があります。

 

 

③筋性拘縮

骨格筋(いわゆる筋肉)の短縮や萎縮が原因で起こる拘縮。

主に、関節が特定肢位で長期間固定されたことで生じる。

筋膜などにも変化が生じるため、結合組織性拘縮も合併していることが多いとされる。

また筋膜に変化が生じた場合は、筋膜の性質上、他の筋肉にも影響を与えている可能性がある。

代表的なものとしては、Volkmann拘縮があり、ギプス固定などで筋肉の血流障害が原因で生じる。

 

 

④神経因性拘縮

神経疾患に由来する拘縮。

強度の疼痛により、反射的に筋spasmが生じ、疼痛回避のために逃避肢位が長期間継続するために生じる。

中枢性疾患では痙性麻痺を伴い、筋緊張が亢進するため痙性拘縮が生じる。

末梢神経障害に伴い弛緩性麻痺性拘縮が生じる。主動筋と拮抗筋の筋力バランスに問題がある場合に生じる。

 

 

⑤関節性拘縮

関節を構成する滑膜や関節包、関節内靱帯などに由来する拘縮。


関節拘縮と一言で言っても… 『拘縮』と『強直』の違い

2022-08-26 18:46:20 | 関節拘縮の雑学

『拘縮』とは:

関節周囲組織(軟部組織)の器質的変化が原因で、関節可動域が制限された状態のこと。

 

『強直』とは:

関節部のおよび軟骨の変性や癒着が原因で、関節可動域が制限された状態のこと。

 

⚠『強直』の根本的な治療に関しては、当院では基本的に適応外になります。整形外科的な処置が実施できませんm(_ _)m

 

 

『拘縮』と『強直』の違いを見分けるには

関節を動かした時のエンドフィール(End feel)の感覚で大まかに判断します。

 

関節可動域(ROM:Range of Motion)を評価する時には

■どのくらい曲がるのか:角度を測定する(量的な評価)

■ROMの最終域での抵抗感はどうか(質的な評価)

➡これらの角度と抵抗感から何が制限因子になっているかを推測する。

 

エンドフィールで感覚できるものには、大きく分けて以下の2つがあります。

■骨性(硬直の特徴):関節運動の最終域で、ガチッと骨と骨が当たっていそうな抵抗感がある。

■軟部組織性(拘縮の特徴):ガチッとした感じはなく、じんわり伸びたり、詰まったりする抵抗感がある。

 

 

実際の臨床では、軟部組織の変性による拘縮が大半を占めると思いますが、中には混合型の方もおられるかと思います。

骨性(強直)と軟部組織性(拘縮)の割合によっては、関節拘縮の改善が見込める場合もあります。