胆嚢炎になったせいで、二回目の面談が延期になった。
病棟は相変わらず変わったままで、機械的な看護師との日々が続く。
前と違ったのは、ご飯の時に車椅子に移らなくても良い事とリハビリは部屋で一日一回だけ行う事。
そんな温い生活を送っていてトイレの乗り移りが上手く行くとは思えない。
だがここは機械的とは言え、文句を言う看護師はおらず、快適に過ごさせて貰えた。
手術から一週間とちょっとが過ぎた頃、元の病棟に帰れる事になった。
当日は見慣れた看護師のお迎えが来て、元の病棟にベッドのまま移動する。
部屋は4人部屋に変わっていた。
正直個室ではない事に不満はあったが、まあ文句は今更言えないと諦めた。
部屋に戻ってきて早速荷物の整理をして貰う、手の届く範囲に必要な物を置いて貰い、無くなった物がないか確認する。
一度バラバラにした荷物を整理するのは大変だった。
何せ自分では出来ないのだから。
同室の住人とは挨拶すら交わさない。
カーテンは皆閉め切ったままで看護師との会話だけが聞こえる。
病棟が戻ってからのリハビリはキツかった。
今まで出来ていた事をまたやり直さなければいけないからだ。
立ち上がりの練習から歩行器を使っての歩く練習。
立ち上がるだけでふくらはぎがとんでもなく痛く、どうする事も出来ない。
慣れていくしかない。とリハビリの先生は言った。
トイレの乗り移りの練習もいつまでも続き、どうしても一人での立ち上がりが出来ず支え有りの状態でしか乗り移れない。
乗り移ったあとも問題があった。
ズボンとパンツを一人で下ろさなくてはならない。
乗り移りが出来ないのに、お尻を浮かせる事なんてできるわけもなく、練習しても練習しても上手く行かなかった。
このままで本当に施設の面談をクリアー出来るのだろうか。
縦の棒を使っての立ち上がりだとようやく一人で立ち上がる事が出来たある日、歩きの練習も歩行器を使って一人で歩けるようになっていた。
この変化は本当に嬉しかった。
ほんの数ヶ月前まで体が一切動かなかった事を考えると、これだけ動けてるのは奇跡としか言いようがない。
前の病院では、一生歩けないとまで言われたのに、今では歩行器を使ってだが少しだけ歩く事ができた。
それでもまだまだやる事の課題は残っている。
肩だってまだまだ上がらないし、体を後ろに捻るのも全く無理だ。
うつ伏せなんて以ての外だし、地面に落ちた物を拾うなんて行為をしよう物なら体ごと倒れてしまう。
身体はまだまだ不自由で、ベッドからの起き上がりも柵を手に持って支えながら、よいしよっと気合いを入れないと起き上がれなかった。
4月誕生日を迎える。
この日は約一年振りに甘い物が食べられる日だった。
病院から誕生日ケーキが出る。
おはぎかチーズケーキのどちらか選べた。
おはぎを選ぶ。
来たおはぎを見て、がっかりした。
スーパーに売っている4個入りのおはぎを更に小さくした一口サイズのおはぎがそこにあったからだ。
一口で終わるところを頑張って三口で食べる。
流石病院のおはぎなだけあって甘さがめちゃくちゃ控えてある。
それでも久しぶりに食べる甘味は格別で暫くは甘味が残る口内に浸っていた。
次の日の夜勤の看護師から「今日は私機嫌が悪いから何するかわからんよ」と言われて驚いた。
ナースコールするとやはりイライラしていて、それくらい自分でしろと投げられる。
怖くて親にクレーム入れてもらったが、以前の看護師同様、「何も言ってません」とシラを切られた。
この看護師は以前からプライベートのイライラをすぐ仕事に持ってくる最悪な看護師だ。
機嫌が良い時は凄く対応が良いのもタチが悪い。
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