今では意味が合致しないほど 時代が変化しています
このことわざは 完全に 死語と言ってもいいでしょう
35年前の話で
人々にちやほやされ内心浮かれていた
その時の私の心情が このことわざに合致します
コンパートメントからの話の 続きです
この検査官
私の容姿をやたらと褒めちぎります
直毛の長い黒髪を 後ろで一つに束ねていたのですが
こちらが恥ずかしくなるくらいの 美辞零句を並べ立て
ハンガリー人のカップルに同意を求めます
勿論 彼らはこまった表情で頷くしかありません
今度は私の手を握りながら 私の顔を褒めちぎります
後に このことは 私がにわかスターになることの序章にすぎず
もっと もっと 気恥ずかしい経験をすることになるとは
その時は夢にも思っていなかったのです
正直私はどう反応していいかわからず 固まっていました
取り合えず 共産圏の国に 25歳の女子が単身のり込む訳ですから
それも急に思い立ち なんの下調べも なんの知識もなくです
35年前のその行為は 少し緊張感の伴うものでした
旅の途中 ある日本人青年に出逢い ハンガリーは夢のような国だから
是非とも行ってみるべきと 勧められました
青年はそれ以上何も詳しいことは語りませんでしたが
私と同じような経験を したのではないかと想像できます
もともと自由気ままな一人旅ですから
ハンガリーに行くことになんら問題はありませんでした
でコンパートメントに戻りますが
この入国検査官 私の手を握ったまま 離そうとしません
そのまま私にハンガリー語を教え始めました
ありがとうから始まり
簡単な言葉なのですが
私は緊張のあまり
なに一つ頭に入りませんでした
カップルはだまったまま 無言の体を貫き通していました
今思い出しても 緊張します
私は事をアラ立てず 善意の行為と受け取ることにしました
事実
人生で経験したことのない
私の容姿にたいする 美辞麗句は
緊張はしたけれど ほんの少し嬉しくもありました
ブダペストに着き
ホテルは決まっているかと聞かれ
ハイと ホウホウの体で
彼の束縛から 逃げたのですが
公安警察なる人が 近づ 離れず 私のことを見張っていたとは
知るよしもありません
ホテルなんて 行き当たりばったり旅でしたから 決めてはいませんでした
共産圏であることは頭で理解しつつも
行動はついつい“自由行動”になってしまうノーテンキちゃんでした
続くヨォッ
板消しを されて喜ふ 姥の花
コメント一覧
ふき
旅の途中