「家裁」 子供を養育した親が養育しなかった親に突然過去20年分の養育費全てを請求する場合、韓国の裁判所はどの程度の判決を下すのでしょうか。(韓国の弁護士 キム·ソンイ)
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親の一方が養育したのに、その養育した親が養育しなかった親に突然20年分の養育費を全部請求したら、韓国の裁判所はどう判断しますか。裁判所は適切であると認められる範囲を任意に決定します。
下記のようにご紹介する判例では、諸事情を考慮して20年間の養育費を合計5,500万ウォンと判決しました。2008年の判決である点を考慮すると、現在は14年ほど経過しており、韓国の不動産価格や年俸が大幅に上昇したため、金額ははるかに増加すると思われます。
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2事例紹介
1)事実関係
1983年(昭和58年)2月頃A(男)はB(女)と付き合って性関係をし、妊娠をするようになりましたが、A(男)はB(女)との関係を切って、他の女性と結婚しました。
B(女)は1983年12月頃子供Cを出産しましたが、A(男)は養育について責任を負おうとしませんでした。B(女)は一人で養育していましたが、2005年頃癌診断され治療中となり、経済活動がしにくい状況になりました。そこでB(女)は2006年頃、A(男)に対して養育費の請求訴訟を提起しました。
2)韓国の法理
一方の養育者が養育費を請求する以前の過去の養育費のすべてを相手に負担させると、相手は予想できなかった養育費を一度に負担することになり過酷すぎる上、信義誠実原則や公平の原則に反することもあるので、このような場合は必ずしも履行請求後の養育費と同じ基準で定める必要はなく、両親のどちらかが子供を養育することになった経緯と、それに所要した費用の額、または当事者が扶養義務を認識したのかどうかとその時期、それが養育にかかった通常の生活費なのか、それとも異例でやむを得ず所要される多額の特別な費用(治療費など)なのか、または当事者の財産状況や経済的能力と負担の公平性など、様々な事情を考慮して適切と認められる分担の範囲を決めることができる。
大法院1994年5月13日宣告92ス21 養育者指定 全員合議体判決
3)結果
韓国の裁判所は次のような点を考慮して、AがBに支払うべき過去の養育費の額を55,000,000ウォンと定めることが相当であると述べました
① Bは婚姻をしないままCの出生時から成人になるまで一人でCを養育し、AはBの要請を拒否したままCの養育について何の助けも与えなかった。
② BはCを養育しながらオムツや粉ミルクなどベビー用品の購入から学校授業料と教育費、衣類及び食料品購入費などCを養育するための費用として相当な支出をしたことが明白である。
③ Aは2007年年俸が8,000万ウォンを超え、不動産など相当な財産を保有しているのに対して、Bは現在癌治療中でその治療費の調達が難しい現状だ。
④ 反面、AとしてもBがこれまでの養育費を一度に請求することで莫大な額の養育費を一度に支払うことになり、過酷な結果を招く。
ソウル家庭裁判所2008年5月16日宣告2008ル543判決