抜粋1”まえがき”から 戦後の日本の繁栄は、上質の電力の整備の上に成り立っていたと言っても過言ではない。
私はその同じ時期に、たくさんの日本の優秀な土木屋たちに会った。経済の基礎ができると、彼らは現実を直視しない進歩的な理想主義者たちから、ダムの建設は自然環境の破壊だと非難を受けるようになった。それでも彼らは黙々と、人里離れた山奥の水力発電所の建設現場で働いていた。発電所はそうした世論を受けて、やがてその多くものが、自然の景観を損なわないためにも、地下に建設されるようになった。その要求は工事の技術の上でかなむずかしい問題が生じたようだが現場はそれを克服して来た。それが日本の技術を向上させた面はある。人は自分の身にあまる問題を投げかけられて生きている方がいいのかもしれない。
(曽野綾子.『人生の原則』 ,河出書房新社, 2013年. p.9)。
私はその同じ時期に、たくさんの日本の優秀な土木屋たちに会った。経済の基礎ができると、彼らは現実を直視しない進歩的な理想主義者たちから、ダムの建設は自然環境の破壊だと非難を受けるようになった。それでも彼らは黙々と、人里離れた山奥の水力発電所の建設現場で働いていた。発電所はそうした世論を受けて、やがてその多くものが、自然の景観を損なわないためにも、地下に建設されるようになった。その要求は工事の技術の上でかなむずかしい問題が生じたようだが現場はそれを克服して来た。それが日本の技術を向上させた面はある。人は自分の身にあまる問題を投げかけられて生きている方がいいのかもしれない。
(曽野綾子.『人生の原則』 ,河出書房新社, 2013年. p.9)。