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最近読んだ漫画レビュー Vol.1 「ヒミズ」

2006年10月06日 | 漫画レビュー
漫画はだいたいシリーズものが多く、小説のようにまとまった答え方ができない作品が多い。連載という形式を取ってるので、クオリティ、流れ、辻褄合わせ、オチへの持っていき方は、雑誌の人気、出版社の意向に左右される事が多い。

けど、「ヒミズ」のように数冊で終わる漫画は、小説のようにひとつの物語として着地点に辿り着く作り方をいしてる。こういう作品に限っては小説と同じだと思ったので、書いてみる事にした。


「ヒミズ」/古谷実
★★★★★★★★☆☆



<感想>

古谷さんは、ギャグ漫画というイメージが強いが、この「ヒミズ」はブラックユーモアからシリアスへの流れをくむ作風だ。

最初は、ライトに明るい物語、何の事件も起きない普遍的な日常。そんな普通の生活に憤りを感じる主人公とその周りの人間が描かれる。そして、徐々にダークサイドに物語が進んでいく。闇が垣間見えると、物語はその闇から抜け出せなくなる。

古谷さんは、人間の描き方が上手い。
たしかに表情や動きは現実の1.7倍くらいディフォルメしているが、その核にある表現はすごくリアル。

漫画やドラマ、映画でもそうだが、登場人物たちの動き、表情は綺麗に見えるように演出されていて、それが定番となっている。けど、古谷さんは、本当にリアルに描こうとしている。ディフォルメチックな顔だったり動きだったりするんだけど、たしかに泣きながら笑ったらブサイクに見えるし、本当に恐怖に慄く顔は悲惨なほど崩れると思う。

物語に登場してくる数々の男は、変態で気持ち悪い描写をしているけど、現実に絶対にいる人間をそれがリアルだといわんばかりに巧みに描いてる。

ヒロインの女の子はちょっと痛い子かもしれないし、普通こんな女いないだろうと思うかもしれないけど、考え方や価値観は一本辻が通っていて、ふたを開ければ主人公が好きな普通の女の子だとわかってくる。

ラストの結末は、賛否両論あると思うけど、あの主人公ならああいう答えを出しても読み手は頷ける終わり方にしている。そういう流れで主人公を描いてる。

だから、切ないけど、それが非現実であって主人公のリアルだと思った。

僕は結構好きでした。

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