
2016年8月12日 晴 (2日め後半戦) (通り過ぎてきた混沌の船窪岳)
2日め、烏帽子小屋から不動岳山頂 (Pt.2) =====> からの続きです。
快調に不動岳ピークまで来て、少し休憩した所からです。烏帽子からここまでの行程はさほど危険と感じる区間もほとんどなく言わば癒しの稜線。展望もばっちり。このまま済むはずはないのは、承知している。不動岳ピークからは、一旦急に大きく下る。登ってくる単独男性と2、3スライド。かなり健脚そうな大汗かいたバテバテ青年が、「この先の稜線は、快適な稜線なんてものではないですよ」、って言って彼が歩いてきた方面を振り返って見て、「こうやって見ると、でも稜線に見えますね。」なんて言っていた。結構難コースで、絞られた様子。自分にとっては、これから進む行程で、どんなものが見られるのか、期待と不安が入り交じるが、とにかく進むしかない。
尾根型区間を下りきって、稜線のエッジを歩くと、右サイドは不動沢への断崖が切れ落ちている。これは、滑落でもしたらひとたまりもない、とそそくさと危険地帯を通過する。とにかく不用意な転倒は要注意と肝に銘じる。
コース:烏帽子小屋 5:52 --- 烏帽子ピーク分岐 -- 南沢岳山頂 7:18頃 --- 不動岳山頂 9:03 --- 船窪第2ピーク 11:32 --- 船窪岳山頂 12:53 --- 船窪小屋 14:26
稜線上を歩けば、ほぼ崖のエッジを歩くコースのようで、それでもあまり崩落の酷い部分は廃道になった区間もあったようだ。稜線の西(左サイド)を巻く局面は一転して深い森の中、渋い尾根歩きを心の底から満喫できる。
(前方に大きく見えてきた針ノ木岳)
不動岳を過ぎる頃から、このお花が時々、群れて咲いていた。荒っぽい稜線では、一服の清涼剤。
不動岳ピークから約1時間歩いて、荒れた断崖をはさんで、今日の目的地の七倉岳の山容が見えてくる。その稜線の斜面は、噂通りのかなり荒れている印象。まだかなり遠いっていうのが実感、まだ午前10時なので、まだまだじっくり山と向き合えるということ。
目を目先に転じるとこれから進む稜線も岩と急なアップダウンと斜面の崩落で、かなり混沌としているように見える。足もとの花を見ながら進む。
これはマツムシソウというお花?。あまり自分としては馴染みがない。結構咲いていた、大仰で人間が考えて造ったような立派な造形の花だと思った。
船窪第2ピーク2459pまでは、ピークを2、3超えていく。いづれのピークも地形図で見ると周辺はゲジゲジマークの連続で表記されている。行ってみるとなるほど、そのとおりの混沌さで、登り局面でも手を使ってのよじ登りも出てきて、歩きは決して飽きてこない。
(登ってきた急登区間を振り返る。どちらサイドに落ちても結構危うい場所。)
ふと振り返ると、不動岳の山容だと思うけど屹立している。あんな危うい稜線のエッジを歩いて来たのか、というのが正直な印象。
岩のロープのある急登ピークを登りきって、もう5時間近く歩いているので食事休憩。靴を直したりして少しゆっくりする。こんな稜線でも登山者とは結構スライドするもので、テントの若者も多かった気がする。休憩していて、屈強そうな若者が船窪方面から登ってきて、情報交換。彼は針ノ木のテント場から歩いてきたそうで、「蓮華の大下りも難所だったが、この船窪周辺の稜線も結構彼にとっては厳しかった」って教えてくれました。かりんとをかじりながら、教えてもらって、お互い気をつけてって、言ってお別れ。
(ホタルフクロっていう花か? これも時々咲いていた。)
稜線右サイド、眼下に高瀬ダムとその向こうに唐沢岳の峻峰が見える。アキノキリンソウなどを見ながら、岩の稜線を登って、船窪第二ピークに到着。禿げかかった文字の柱が立っている。そこは、日差し暑いし無粋な感じのところだったので、軽く通過。 この”第二ピーク”って柱が、スリルの稜線の本番の始まりだって、この時自分は知らなかった。
第二ピークからはやはり少し下るよう。かなり急なガレタ斜面の下りなので、ロープやワイヤーがたらしてある。
(すべりながらロープを補助に降りてきて、振り返ると急な斜面。これは序の口)
25メートルのガレバの横切り。滑落すると結構下までありそう。ここもロープを補助に横這う。ここも、よくあるレベルの危険地帯。
高瀬ダムと唐沢岳から槍ヶ岳の稜線を見る。すぐ足元は切れた崖。
こんな可憐なお花畑も代わる代わる出てくる。
1,2時間前は進行方向に見えていた針ノ木、蓮華は今は、稜線の左サイドに望めるようになる。ってことは、稜線が曲折して来たってこと。針ノ木はあくまで尖がって岩っぽいイメージ、蓮華はおおらかで巨大な山容のイメージ。
ちょっと、ここは・・・。って思ったのがこの下り。右に落ちても左に落ちても大禍か、死亡になると思われた。30Mくらい下るのか。岩ががれていなければ、さほどの傾斜ではない。厄介なのは、足場が滑りやすそうなのと、足元の足場が少なめなこと。それとつかめそうな樹木や岩が全く無いこと。ロープを補助に恐る恐る下って、中盤にどうしても下りずらい地点があって、少しこけて手の甲をざらざら岩で少しこすって流血。(って、言っても怪我はたいしたことはない)
何とか降り切って安全地帯に来て、振り返る。ここは登りのほうが楽かな。ロープは長い1本なので、グループでここに来ると、全員通過までにかなり時間を要することになる。
あのざらざら岩の大くだりを終えて鞍部へ、そしてまた登り返して・・・。目の前に現れたのが、崖とその向こうに七倉岳。あの稜線に目指す小屋がある。あんな大くだりをやったのだから、あれ以上の怖い区間はもう無いだろうと、思いながら歩く。
がけっぷちの稜線に崖っぷちの生きた樹木が横になっていた。そのすぐ脇を進む。
この木橋は案外怖くなかった。下は奈落の底っていうほどではないが、落ちればそれなりにただじゃ済まない。
斜面をトラバースする局面で自然の地面を歩けず、木で歩道を作ってあるような区間を用心して通過して樹林の中から開けた場所に出る。目の前に「一人づつ渡ること」なる板があって、何事があるのかと前方を見ると、なんといやらしいヤセ尾根。この馬の背、長さはせいぜい25メートル程度?だけど、両脇の切れかたが半端ない。右サイドは数百m、無難な左でも、100m以上は切れているような気がしたけど、実際はどうだったのか。新らしめの太いロープがずばり1本渡してある。馬の背にはやや足を置けるようなくぼ地が確認できるが、ほとんど不明瞭でつるんといってしまいかねない危うさがある。岩の表面はざらざらの花崗岩的なものなのが救い。できれば渡りたくない馬の背、ここまで6時間行程を来て、これが嫌だからと後戻りすればビバークになるので、進まないわけには行かない。ここを渡る時、人に見られるのはイヤだな、正直一人で無心に渡りたい。幸いこの日は、だれも前後にいなかった。
渡り始める、ロープは離さない。ちょうど真ん中あたりに来た時。馬の背の微かな窪地すらなくなる区間があった。細いアーチ型の稜線に、慎重に足を置き歩き進んだ。ちょっと、このイヤな感じは、今までの山のデンジャーゾーンの中でも、一番かもしれない。
(渡って、安全地帯に到達して振り返って撮影、怖さは伝わらないかな。)
馬の背から数分で船窪岳ピークに到達。船窪岳山頂って、第二ピークって場所より標高が低い。まあ、こういうこともあるかも。その二つのピークの間の稜線の険しさは、長く思い出に残りそう。
船窪岳山頂かた正面に七倉岳と荒れた斜面。小屋のあたりの稜線は雲に隠れつつある。あとは、その辺を目指して歩けばいい。まだ、ちょっと遠い感じがする。
どうしたことか、船窪岳ピークから先は、驚く程大人しいコースになった下り。もうちょっと早くこういった癒しの森のコースが出てきて欲しかったな(笑)。歩いていて安堵感が漂う。
昨年みー猫さんが針ノ木谷から登ってきた分岐に到着。船窪岳ピークからは、あっという間の距離。
その分岐の脇は、また目もくらむような崩落斜面が切れ落ちていた。
針ノ木谷への分岐は、稜線脇こそ激しくきれているポイントで、しかしその後は特に危険な思いをすることなく癒しのコースを進みます。ここに来てまた登り返し。行動時間は7時間を超えている。目の前にそびえる七倉岳の雄大な山容に向かって進みます。
(振り返って観た、船窪岳ピーク方面)
人の声を感じて、少し登ると静かなテント場。4,5張あったかな。やっと終わった気がしてくる。テント場にある道標は、小屋まで20分って書いてある。小屋とテントが離れているのは知っているが、まだ20分もあるんだと、ちょっとまた汗。
左サイド、今度は少し後方に見えてくる針ノ木岳は格好いい。
ようやく稜線上に船窪小屋が見えてきます、休憩全部込みで8時間30分かかって到着。最後は空は曇りで、稜線はガスっぽくなっっていました。小屋に着いて、靴を脱いで受付してください、と言われて外で靴を脱いでいると、お茶を出してくれる気遣い。小屋は小さいけど、綺麗にされている印象。食事兼談話室のスペースは本当に狭い空間。その部屋に心温まる写真が多数貼ってある。小屋のご主人夫婦は、結構年配で、客に対する気遣いが感じられます。
スタッフの元気のいいお姉さんが、テキパキといろいろな業務を仕切っている感じ。夕食事の一回目は、レアなテラスでの会食のようで、(今年3回目だそう)残念ながら、自分は室内での2回目でした。食事は噂には聞いていましたが、メインでない一品にまで美味しいとても山中で食べる食事とは思えないレベルでした。
みー猫さんが泊まられた時の夕食時は、みなさん黙々と食事されていたようですが、この日は山の話で盛り上がる会食となりました。なな”の前にいたご婦人に、なな”が今日の行程を聞かれて、正直に怖い区間があったと言ったら、明日その方面にいくそのご婦人が、いろいろ聞いてきます。烏帽方面から来た数名は、やはり皆結構荒れた稜線の、例の危険区間は、かなりの危険レベルとは感じていたようです。
会は船窪周辺の稜線の話で大盛り上がり。小屋は満員、とは言っても布団1枚ゆっくり専有できて、快適。なな”の隣は、山岳パトロールのおじさん。「あの馬の背で落ちる人はいないのですか。」と聞くと「あそこは、いないねー。」とのお答え。その前の長い1本ロープの激下りの所は、たまに事故があると言ってました。小屋のスタッフに、自分の昨年死んだ父の若い頃に似た人がいた。忙しそうにしていたので、少ししか会話できなかったけど、もっと話してみたかったな。この小屋に泊まるのは、長く望んでいたことですが、諸々心温まることが多くて、また来てみたいとも思いました。この日もたっぷり眠れました。 ■■
======> Pt.4へ続きます
待ってました。やはりこのルートの危険箇所は話題になりますね。行くときは気を引き締めて行かなくてはなりませんね。自分のときもパトロールの方(見回りする区域が決まっているとか)がいらして、あれこれルートについての話題はありましたです。危険な水場にはいかれませんでしたか。船窪小屋の食事は山で食べられないという意味はもっというと、船窪小屋でしか食べられないと思います(笑)。ランプも良い雰囲気でしょう。また泊まりたくなりました。
待っててくれたなんて、嬉しいですねー。
一般ルートですが、部分的にやや厳しいといった感じでしょうか。船窪小屋にパトロール的なかたは二名いました。水切れの登山者に、水分をヘルプしたり、5時間歩行で足が痛くなった登山者を、小屋まで連れて行ったりもしてるそうです。
危険な水場は行きませんでした(笑)。行く前にみー猫さんの記事を見て、とても危険そうだったのと、あの稜線をずっと歩いていたらとても水場に下っていく気がしませんでした。
食事も最高、もてなしも最高で、私もまた泊まってみたいと、早くも思っています。
宿の暖かな雰囲気も良く感じられます。先日針ノ木岳に行った時船窪から来られた中高年お姉様がたは余程の強者だったことが、これでわかりました。
スタートを七倉か烏帽子かどちらにした方がいいのかなとか考えてましたが元気のあるうちに危険個所を通過できる七倉スタートの方がいいんですかね。
テントを持ってると山小屋に泊まるのはもったいないなと思ってしまう貧乏性ですが荷物が減るのとおいしいご飯が食べられるのは山小屋の魅力ですね。
馬の背の区間は、一瞬ですが私はこわかったです。でも私くらいのレベルのものでも通過できますし、一応一般ルート指定なので、ある程度山慣れたかたなら、問題はないと思います。
烏帽子から船窪、北葛岳周辺、蓮華岳への登りと結構険しい稜線歩きが楽しめました。
船窪小屋は、いろいろな面で泊まられるといいと思います。私もとてもいい1日になりました。
どちら周りにするかですが・・・。七倉からのメリット:最危険地帯を疲れていないうちに通過できる。 ロープ場の激下り区間を、登りで通過できる。 デメリット: コースタイムがプラス1時間程度増える。(不動岳への登り返しがきつそう)、 楽しみの船窪小屋が先になってしまう。 などです。
ふみふみぃさんなら、烏帽子から回っても、そんなに消耗しないで最危険区間を歩けますよ。
私はテントを持っていながら、ここ数年はサボりまくりですが、小屋に泊まると新しい出会いとか心温まることもあるので、案外捨てがたいですよ。