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銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

宮澤賢治 『よだかの星』= 市蔵 いちぞう =

よだかの空を飛ぶ姿と、鋭い鳴き声が、どこか鷹に似ているというところから、その名がつきました。本物の鷹はよだかの名前が気にいらず、名前を変えろと脅すのです。



皆さんこんにちは、長浜奈津子です🌸

おとがたり朗読公演を、2月5日(土)に代々木の松本弦楽器さんでおこないます。
今回は、おとがたり初演として宮澤賢治の『よだかの星』を上演します。

ブログで少しずつ、写真を添えて本文から少し抜粋して、物語をご紹介しています。
今日は、= 市蔵 いちぞう =です。




<本文より>

 ある夕方、とうとう、鷹がよだかのうちへやって参りました。

「おい。居るかい。まだお前は名前をかえないのか。ずいぶんお前も恥知らずだな。お前とおれでは、よっぽど人格がちがうんだよ。たとえばおれは、青いそらをどこまででも飛んで行く。おまえは、曇ってうすぐらい日か、夜でなくちゃ、出て来ない。それから、おれのくちばしやつめを見ろ。そして、よくお前のとくらべて見るがいい。」

「鷹さん。それはあんまり無理です。私の名前は私が勝手につけたのではありません。神さまから下さったのです。」

「いいや。おれの名なら、神さまから貰ったのだと云いってもよかろうが、お前のは、云わば、おれと夜と、両方から借りてあるんだ。さあ返せ。」

「鷹さん。それは無理です。」

「無理じゃない。おれがいい名を教えてやろう。市蔵というんだ。市蔵とな。いい名だろう。そこで、名前を変えるには、改名の披露というものをしないといけない。いいか。それはな、首へ市蔵と書いたふだをぶらさげて、私は以来市蔵と申しますと、口上を云って、みんなの所をおじぎしてまわるのだ。」

「そんなことはとても出来ません。」

「いいや。出来る。そうしろ。もしあさっての朝までに、お前がそうしなかったら、もうすぐ、つかみ殺すぞ。つかみ殺してしまうから、そう思え。おれはあさっての朝早く、鳥のうちを一軒ずつまわって、お前が来たかどうかを聞いてあるく。一軒でも来なかったという家があったら、もう貴様もその時がおしまいだぞ。」

「だってそれはあんまり無理じゃありませんか。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。今すぐ殺して下さい。」

「まあ、よく、あとで考えてごらん。市蔵なんてそんなにわるい名じゃないよ。」

鷹は大きなはねを一杯いっぱいにひろげて、自分の巣の方へ飛んで帰って行きました。



よだかは、じっと目をつぶって考えました。

一たい僕は、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。僕の顔は、味噌をつけたようで、口は裂けてるからなあ。それだって、僕は今まで、なんにも悪いことをしたことがない。赤ん坊ぼうのめじろが巣から落ちていたときは、助けて巣へ連れて行ってやった。そしたらめじろは、赤ん坊をまるでぬす人からでもとりかえすように僕からひきはなしたんだなあ。それからひどく僕を笑ったっけ。それにああ、今度は市蔵だなんて、首へふだをかけるなんて、つらいはなしだなあ…







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宮澤賢治 『よだかの星』 = 山やけの火 = - 銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

鷹に名前を変えるようにと脅されたよだかは、なぜ自分はこんなに嫌われるのだろうと悲しみました。何も悪いことはしていないのに。むしろ赤ん坊を巣か...

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宮澤賢治 『よだかの星』= おとうとの川せみ = - 銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

夜だかは、たくさんの虫たちの命が毎晩自分に殺されることを嘆きます。そして自分自身がこんどは鷹に殺されてしまうことを苦しみます。ああ、つらい、...

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宮澤賢治 『よだかの星』= 東にのぼるお日さま = - 銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

おとうとの川せみへ「さよなら」を告げて、泣きながら飛んで帰ってきた夜だかは、自分の巣の中をきちんとかたづけて、自分のからだ中のはねや毛を、き...

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宮澤賢治 『よだかの星』= 星めぐり = - 銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

お日さまが東からのぼってきたので、ぐらぐらするほどまぶしいのをこらえて、夜だかはそっちへ飛んで行きました。そしてお日さまに自分を連れていって...

宮澤賢治 『よだかの星』= 星めぐり = - 銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

 




宮澤賢治の “よだか” は、世間から嫌われ、誤解されて、蔑まれて、夜に暮らす鳥です。
イーハトーブの夜空に輝く、青い星をながめながら、賢治はなぜ…この物語を思いついたのでしょうか。

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2022年2月5日(土)おとがたり朗読ライヴ  於:松本弦楽器(代々木)

<公演詳細>

出演:おとがたり
   長浜奈津子(朗読)
   喜多直毅(ヴァイオリン)
内容:朗読(吉田一穂・詩作品、宮沢賢治『よだかの星』)

日時:2022年2月5日(土) 18:00開場/18:30開演
会場:松本弦楽器(代々木)
   http://matsumotogengakki.com
   東京都渋谷区千駄ヶ谷5-28-10
   ドルミ第二御苑804号室
   03-3352-9892(場所の問合せのみ受付)
   地図 https://goo.gl/ygOCZw

料金:予約3,000円/当日3,500円

ご予約・お問い合わせ:nappy_malena@icloud.com (長浜) violin@nkita.net(喜多)

メールタイトルは「おとがたり2月予約」、メール本文に「代表者氏名、人数、連絡先電話番号」を必ずご記入の上、お申し込みください。
会場は普通のマンションの一室です。
開演18:30以降はメインエントランスのインターホンが通じなくなる場合がございます。
時間に余裕を持ってお出かけください。


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<演目作品>

◎ 白鳥古丹 カムイコタン -未知から白鳥は来る- 吉田一穂

あヽ麗はしい距離 つねに遠のいてゆく風景……
悲しみの彼方、母への、捜り打つ夜半の最弱音
    吉田一穂  詩篇 I 海の聖母より『母』

吉田一穂は、極北の詩人、孤高の詩人、また海と望郷の詩人などと呼ばれる。
北海道上磯郡釜谷村生。積丹半島の古平町は、荒磯が見え隠れする段丘海岸。
変化の劇しい青が輝く海と空の下、一穂は少年時代を過ごす。代表作は「海の聖母」「白鳥」他、幻想童話集「海の人形」など。


◎ よだかの星 宮澤賢治

「北の青いお星さま、あなたの所へどうか私を連れてって下さい。」
「東の白いお星さま、どうか私をあなたの所へ連れてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。
もう山焼けの火はたばこの吸殻のくらいにしか見えません。よだかはのぼってのぼって行きました。


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<おとがたりプロフィール>


おとがたり https://www.otogatari.net
女優・長浜奈津子とヴァイオリン奏者・喜多直毅による朗読ユニット。首都圏を中心に意欲的に活動を行なっている。物語の持つファンタジーを声や楽器の音を通して空間にありありと描き出すために、即興的に互いの間・抑揚・言葉に反応しながら進行するパフォーマンスは臨場感にあふれ、聴く人はまるで物語の中に居合わせるかのような印象を抱く。来場者はもとより、文学研究者からも高い評価を得ている。


長浜奈津子 https://www.nappy-cantactriz.com
桐朋学園演劇科卒業後、劇団俳優座へ。女優・朗読家。2016年から市川市文学ミュージアム「市川荷風忌」へ出演。 “荷風ひとり語り”『ひかげの花』他三味線語り。ヴァイオリニスト喜多直毅氏との朗読ユニット“おとがたり”では『濹東綺譚』他、永井荷風作品を多数上演。於:六本木ストライプハウス「朗読空間 ~ひとり語り~」では、泉鏡花『高野聖』『外科室』他、坂口安吾『桜の森の満開の下』『夜長姫と耳男』、小川未明『赤い蝋燭と人魚』、小泉八雲の怪談、宮澤賢治の詩と童話、他多数。 ときに“女優の語り” として物語の登場人物を演じ読み、ときに声のみで言葉や物語を聞き手に読み渡す。

喜多直毅 https://www.naoki-kita.com
国立音楽大学卒業後、英国にて作編曲を、アルゼンチンにてタンゴ奏法を学ぶ。現在は即興演奏やオリジナル楽曲を中心とした演奏活動を行っている。タンゴに即興演奏や現代音楽の要素を取り入れた“喜多直毅クアルテット”の音楽は、そのオリジナリティと精神性において高く評価されている。他に黒田京子、齋藤徹 (故人) との演奏や邦楽・韓国伝統音楽奏者・現代舞踏家との共演も数多い。欧州での演奏も頻繁に行う。我が国に於いて最も先鋭的な活動を行うヴァイオリニストの一人である。





おとがたり〜朗読とヴァイオリン〜


最後までお読み頂きましてありがとうございました🌷





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長浜奈津子のHP =芝居と音楽と語り=


https://www.nappy-cantactriz.com/
https://twitter.com/vivi_gato





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