馬とお昼寝

他愛ない毎日の日記と、旅行と福袋とちょこっと映画のブログです。

ベトナム 6日目ー2

2010年06月16日 14時20分26秒 | 旅行
深夜の便なのでホテルから空港へ。
王子は具合が悪く、荷物を預けている間いすに横になって待っていました。
パパに見ていてもらって私がトイレに行って戻ってくると、地上勤務のお姉さんとなにやら話をしています。
どうやら王子の具合が悪そうなので、空港内の医務室のドクターに診てもらってはどうかと提案してくれていたのでした。
診てもらってももうすぐ搭乗時間だし、薬も持ってるし・・・と思いましたが、外国の薬は効きが強いので痛み止めでももらえたらいいかなあ、ベッドに横になれるとも言われたし・・・と軽い気持ちで応じてしまいました。
以前の私なら、面倒なことはたいてい断わっていたはず。
実際パパにも、「君なら断わるかと思った。」と言われました。
でも年のせいか気が弱くなったと言うか、ちょっと親切にされると頼りたい気持ちが出てきたのは否めません。
しかし10分後、自分の甘さをどんなに後悔したことか・・・

お姉さんについて出国審査を済ませ、医務室へ。
お姉さんは道すがら王子の状態をいろいろ質問してきましたが、それをベトナム人のドクターに通訳してはくれませんでした。
何のために聞いたんだろう・・・?
ベッドに横になった王子のお腹をさわり、右の下腹をぎゅうぎゅう押すドクター。
王子が痛い顔をすると、我が意を得たりと言うように立ち上がり、「熱があり右の下腹を押すと痛がる。盲腸だね。」と言いました。
えっ・・・!!!

ちょっと待って・・・
熱ないし。
盲腸って・・・???

地上勤務のお姉さんにパスポートと荷物のタグを貸して欲しいと言われて出しました。
どうしてそんなものが今必要なんだろう・・・
タグを見ながらお姉さんが電話をかけ、「ああ、○○ちゃん?盲腸の診断のお客さんが出ちゃって~、荷物止めて欲しいの~。そう、まだ確定じゃないけどほぼ乗せない方向で~~。」と、客であり当事者の私達が後ろにいるのにまるで女子高生が友達とおしゃべりするような口調で話し出したときは唖然としました。
だからタグなのか!
乗れないのか!
それにしてもその口調何とかならんのか???

「ちょっと待って!乗れないの??」
彼女が電話を切ってから尋ねると、「ドクターが盲腸の診断を出しましたので。今の状況では日本に着くまで病院へ行かずに何の治療も受けないと言うのは危険ですから。もしそれでも乗りたいと仰るなら、息子さんに何があってもかまわないと言う承諾書にサインして頂いた上で乗って頂くことになります。」
「でも盲腸と言うのは脂汗を流してもっと痛がるものだと思うんだけど。
熱だってあるというけれど測りもしてないじゃない。
この子はよく疝痛を起こすので、今回もそれと同じ痛がり方なんだけど。」
「ですがドクターが盲腸と診断していますので、私たちには医学的知識がないのでどうすることもできません。とにかく、本当に盲腸の診断なのか、スペルを確認します。」
と言ってまた誰かに電話をし、さっきと同じ客の前とは思えない口調で、「そうそう、さっきのお客さん~。ちょっとスペルを確認したいんだけどさ~~。」と始まりました。
彼女の言ってる事は彼女の立場ならもっともだし、なすべきことをしていると思えます。
しかし急に盲腸だと言われ、言葉もまともに通じない国で予定していた飛行機に乗れないと言われ、パックツアーのチケットなので変更できないと言われ、深夜なのにこれからどうしたらいいの???と頭がひっくり返っている客の前で、当事者の話を同僚と電話で女子高生のような口調で話すこの子の親の顔が見てみたい。
外国の航空会社なので日本語の口調や言葉遣いをどうこう言うマニュアルはないのでしょうけど、それって常識の範囲内じゃないかと思うのは世代の違いなのか??

彼女の電話はなかなか終わらず、笑いながらスペルをいい、○○のサイトで見てみて~とかすっかりのんびりムード。
迫る搭乗時間。
彼女の中では私たちは「ほぼ乗せない方向で~~」なのでまったく急ぐ気もありませんが、私たちはもちろん何とかして乗りたい。
いつまでもだらだら電話で話をしているのについに切れて、「何で辞書も置いてないの??」と言うと、私の言い方にむかついた彼女が電話を切って「やっぱり盲腸ですね。乗せることは出来ません。」
「どう見ても盲腸じゃないわ。熱があるっていうけど測りもしないじゃない。
測ってよ。」と言うと、やれやれしかたない親だと思いっきり顔に出して、ドクターに苦笑して首を振りながら通訳してくれました。
ドクターが熱を測る。
案の定、熱はありません。
するとドクターは「じっとして、ちゃんと体温計挟んで!」と王子のせいのように言って、もう一度測りなおしました。
何度測ってもないものはないさ~。
するとドクターは「ちょっとだが熱は有る!」
藪だろお前・・・

さっきお姉さんが誓約書にサインすれば乗れるといったので、パパがサインすると言い出しました。
するとお姉さんは、さっきはそう言ってしまったけれど実際にはパイロットの許可がなければ乗せられないと言いました。
確かにそれはそのとおりでしょう。
とりあえずパイロットに事情を説明してもらうしかありません。
そこに客室乗務員が通りかかり、お姉さんが廊下で説明を始めました。
年上の客室乗務員は、「そりゃ乗せないでしょう。○○ちゃんがんばって!説得してね~!(私たちを)」と笑って歩いていきました。
お前ら当事者の客の前でそういう会話やめろって・・・!!
どういう神経してんだ・・・

飛行機は飛んだら途中で降りれないし、急病になる可能性のある客を乗せたくないのも当然のことです。
特に客室乗務員やパイロットならなおさらでしょう。
私が彼女の立場であっても乗って欲しくありません。
なので彼らの気持ちは理解できる。
どう見ても盲腸と思えない王子ですが、もし盲腸だったら日本に着くまで持たないかもしれませんし、王子がそんなことになったらと思うと怖いです。
もし信頼の置ける診断だったらしかたないと思えたでしょうし、王子の体が大事ですから従ったでしょう。
しかし悲しいかな・・・どうしてもこのドクターを信頼することが出来ない。
誤診としか思えない。
誤診で振り回される私たちの損害は深刻ですが、それは彼らには何の関係もない。

ドクターは一度出してしまった診断を引っ込めることはプライドが許さないでしょう。
地上勤務のお姉さんは退屈な深夜のシフトにちょっとした事件が起きてわくわくしている感じがありあり・・
客室乗務員はもちろん乗って欲しくないと思っているし、この時点でまだ話の通っていなかったパイロットももちろん同意見でしょう。
誰かが私達を乗せる気で動いてくれない限り事態が好転することはありえない。
しかし誰も味方はいません。

そうこうしている間に緊急の患者がいると連絡を受けてドクターが行ってしまいました。
ドクターの許可がない限り私たちは医務室から動くことが出来ないらしく、見張りのガードマンが来る始末。
犯罪者みたいな扱いだな・・・やっぱ、外国、怖~~

だめ元でもう一度お姉さんに交渉してみる。
疝痛持ちでよくこういう風に痛がること。
彼女みたいに若い子は知らないかもしれないけれど、私たちの親の世代は盲腸になる人が多く七転八倒の痛がりようだった事。
王子は脂汗も流してないし熱もないこと。
あのドクターの診断がどうしても信用できないこと。
誤診でチケットも無駄になり、多大な被害が出るのに何の保障もしてくれないなんて納得できないこと。

しかしやはり彼女の言い分は、ドクターの診断が全てだということ。
自分たちにはどうすることも出来ないし、チケットも保障も出来ない。
インシュランスには入っているのか?

入っていないと答えると、「入っていないのはお客様の責任です!」といいやがるのでぶち切れて、「違うでしょ!こいつのせいでしょ!」と、誰も座っていないドクターの席を指差しました。
本当に盲腸ならお金がかかってもしかたないし、それはインシュランスに入っていないこちらの責任だけど、私が言っているのは誤診の場合、しかも私たちは誤診だと思っているのに飛行機には乗れず、今夜の宿もなく、明日どこの病院へ行けばいいのかもわからない。
たったあれだけの診察で下された診断で多大なる精神的金銭的な被害が及ぼうというのに、もし誤診だった場合に何の保障もしてくれないなんて納得できるはずがない。
すると彼女は、「あのドクターはこの飛行場のドクターであって私達の会社(航空会社)とは何の関係もありません。なので誤診だった場合の責任は取りかねます。しかし病院の紹介など私たちに出来る限りのことはいたします。インターナショナルホスピタルなら立派な設備がありますが、先日入院されたお客様は一泊12万ドル(ドンではなくアメリカドル)だったと聞いています。」と勝ち誇ったように言いました。
ふざけんな。
そんなとこ行くかよ。
行くなら安いローカルの病院だよ。
でもこれで彼女が味方についてくれる万に一つの可能性もなくなってしまいました。

どんどん搭乗時刻は近づいてくるし、ドクターは帰ってこないし、お姉さんは怒らせたし、もうどうにもならないな・・・
「僕のせいで・・・」と心配する王子の手を握って「大丈夫、王子のせいじゃないよ。気にしないで。」と励まし、こうなった以上この先どうするか考えておかなくてはと思いました。
一番被害が少ないのは、パパだけ帰国してもらうことです。
そうすればペットホテルにいるルビーも、ペットシッターに頼んである他の子達の世話もしてもらえるし、会社もこれ以上休まずに済むし、チケット代も一人分は浮くことになります。
しかし言葉も満足に話せないというのに王子と二人で残って大丈夫なのか・・・きっと大丈夫に違いないけれど不安でも有り、なかなかそれを言い出せずにいました。

今夜はもう深夜なので何処かに泊まり、明日一番でローカルの病院で診察してもらい、盲腸ではないと診断書を書いてもらえば明日中には飛行機に乗ることが出来るでしょう。
座り込んでそんなことを考えていると、お姉さんがやって来て先ほど言い合いになってしまったことをわびてくれました。
そして帰りのチケットは何とかして自分が変更手続きをすると約束してくれました。
口約束では困るので名刺が欲しいというとすぐにくれました。

その時、緊急の患者を診る為に行ってしまっていたドクターが上機嫌で帰ってきました。
何か機嫌がよくなるようなことがあったのでしょう。
ニコニコ顔で帰ってきたドクターにパパがもう一度息子を診てくれと頼みました。
自分のせいでとんでもないことになったので、王子は痛みも何処かへ行ってしまいすっかりぴんぴんしていたので・・・
搭乗時刻を過ぎていたのですっかりあきらめて廊下の床に座り込んでいた私をパパが医務室から呼びました。
行ってみるとベッドに寝た王子の右下腹をドクターがぎゅうぎゅう押していますが、王子は平気な顔をしています。
「もう痛くない。」といいます。
ドクターは首をかしげながら、「おかしいな~。親が飛行機に乗りたいから痛いって言わないだけじゃないの~?」
するとお姉さんが王子に、「さっきはお腹押されたのが強かったから痛かっただけで、本当に痛いわけじゃなかったんだよね?でも大変なことになっちゃったからびっくりして言い出せなかったんでしょ?怒らないから正直に言ってみて。」と笑顔で尋ねました。

彼女はさっきとまったく正反対の立場で話をしている・・・
私達を乗せる方向で動いてくれている。
なぜ?何で変わったの?
私が名刺を要求したから???
搭乗券を自分の権限で変更すると約束したけれど本当はそんな権限なんかなくて心配になったから?
名前を知られたことで私が何かすると思ったから???
何もするわけない、こっちなんかパスポートナンバーまで知られているのに・・・

王子がお姉さんにうなづいてまったく痛くないことを言うと、お姉さんはドクターに笑いながら「緊張もあって痛いって言っちゃったけどたいしたことなかったのを言い出せなくなってただけみたい。さっきおならをしたからたまっていたガスが出て痛くなくなったんじゃないかしら。」と説明してくれ、上機嫌が続いているドクターも、「痛くないなら良いか!」と、あっさり搭乗許可を出してくれました。
お姉さんは急いで電話をかけて一旦降ろした私たちの荷物を再度飛行機に積むように手配してくれ、ドクターが許可したことをパイロットに知らせるため先に搭乗口に走って行きました。
幸い荷物を積みなおすのも間に合い、私たち三人のシートもまだキャンセル扱いにせずにキープされたままだったので、そのまま走って乗り込むことができました。
搭乗口で待っていたお姉さんは神妙な顔で「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」と私たちに頭を下げました。
乗れたからいいけどね、乗れなかったら大変なことだったからね、まじで。

シートに座るとベトナム人の客室乗務員の男性が来て、王子に笑顔で大丈夫かと聞き、何かあったらなんでもお知らせくださいと言ってくれました。
その後お姉さんに医務室前の廊下で「絶対乗せない方向で、説得してね~~。」と笑いながら歩いていった女性の客室乗務員もやって来て、こぼれるような笑顔で「何かあったら遠慮なく申し付けてくださいね。」と言ってくれましたがさっきの態度を見ているのでなんだかなあ・・・と言う感じでした。
とはいえ、彼女の立場で考えたら乗せたくないのは当然なのでわかるけどね。

飛行機が飛んだとき、本当に乗れてよかった~~、と、力が抜けました。
乗れたのが奇蹟としか思えない。
強行だったお姉さんがふと不安にかられた(おそらく)おかげで私たちの側に着いて動いてくれたおかげです。
それに緊急の患者が出て席をはずしたドクターが、時間ぎりぎりに機嫌よく帰ってきたこと
も幸運でした。
最後までパパがあきらめずに食い下がったことも。
もしお姉さんが味方になる気になってくれなかったら、もしドクターが飛行機が飛んだ後に帰ってきていたら、今私たちはとんでもなく不愉快な目にあっているはずでした。
本当に不幸中の幸いでした~。










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