瑞原唯子のひとりごと

耳をすませば


原作漫画とアニメ映画で描かれた中学時代の物語に加え、主人公2人が大人になった10年後をオリジナルストーリーで描いた実写映画。

原作漫画は見てないけどアニメ映画は何度も見ています。自分のわがままだけど、これはキラキラした青春のままで終わってほしかった。だから実写化で生々しくしてほしくなかった。ましてや10年後なんて絶対に現実を突きつけてくるやつやん…と実写化発表のときに思った記憶があります。だったら見なきゃいいというのはごもっともなんだけど、怖いもの見たさというか気にはなっていたので…。

中学生パートは思いのほか悪くなかった。アニメの雰囲気を壊してなくて、あまり生々しい感じもしなくて、主役の子の演技もよかった。猫に話しかけてるのをリアルに見ると「うわぁ…」と感じてしまったけど笑。単純な映像化という部分に関しては素直によかったと思う。ただ改変についてはモヤモヤする。

地球屋のおじいさんの存在感が大幅に消されてしまったのは残念。天沢聖司に全振りという感じですね…この構成だとこうしたほうがいいとは思うんだけど、物語の最初の読者はやっぱりおじいさんであってほしかった。天沢聖司では深みが出ない。あのときのおじいさんとのシーンがすごく良かったのにな。

天沢聖司はバイオリンを作らずチェロを弾いてるのでどうしたのかと思ったら、アニメと設定が変わってた。チェロ奏者になるのが夢だと。なんで変えたんですかね。バイオリン職人では地味なのでドラマチックにならないからですかね。住む世界が違うと思わせられないからですかね。

あとカントリーロードではなく翼をくださいに変わってたのも残念。翼をくださいは大好きだし、いい歌だと思うけど、そういうことではなくアニメに思い入れがあるのでね…。なんで変えたんだよという気持ちがどうしても先に来てしまう。

大人パートは思ったとおり現実と向き合うようなお話でした。物語を書く夢について、仕事について、恋愛について。でもそんなに深くなく、表面だけをなぞってふわっと着地するような感じ。焦点が定まってなく散漫な印象だし、あっさりいい方向に向かってしまって現実感がない。解決してるようでしてない気もする。

恋愛のゴタゴタは見たくないなと憂鬱だったけど、そうたいしたことはなく…浮気や二股といったゲスい展開がなかったのはよかった。ただ、あまりにふんわりとした描き方で何も伝わってこないけど。遠距離恋愛10年のあいだどのくらいの頻度で会ってたんだろうか。別れたとか言ってたけど、天沢聖司は別れる気なんてさらさらなかったよね。一応は了承したものの復縁する気しかなかったよね。雫も全然すっきりしてなくて未練ありまくりだったよね。

しかし別れた相手にいきなりプロポーズするのも強気だし、即OKするのもすごいな。これ結婚してから上手くいくのか不安。夢見がちな二人がほとんど会わず、相手に幻想を抱いたままきれいな言葉でやりとりしていたからこそ、10年もつづいたのかもしれない。だから一緒に住んだら幻滅することがいっぱいありそう。

他人に夢を追うことをあきらめるなと言うのは無神経で残酷だと思う。夢は呪いにもなる。雫はそれなりに物語を描いてコンテスト等に送っていたようだけど、10年たってもまったくどこからも声がかからないんだったら、おそらく才能はないと思う。趣味として書いていくのならいいんだけど、デビューを夢見るのはあきらめてもいいんじゃないかと。


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