Kent Shiraishi Photo Blog

北海道美瑛町の大自然や身近な写真を、
海外へ配信するArtistの呟き。

Mr. Fox との再会!

2011年04月14日 | フォトエッセイ&フォトアート
Mr.Fox が厳しい冬を生き抜いた!

昨年の初冬、我が宿に単身で訪れた一匹の狐!
私は彼をMr.Foxと呼んでいた。

たった一切れのパンを恵んでやった事から付き合いは始まった・・・。

彼の知能は相当高く、多分普通の犬よりはかなり賢いと思うのである。

なんせ初対面では用心深く、けして近寄ってこなかったのに、
2回目の出会いではかなり接近してきた。
もちろんある間合いは必ずキープしているのだが・・・。

3回目には、もうテラスの上にまで顔を出し、
私と他のスタッフの区別までしっかり出来るようであった。

いつだったか驚いたのは、
私が外に出て車に乗って発進しようとしたその時、
どこからともなく走ってきて、車の前に立ちふさがったのである。

フランスパンのダッチロールを一切れ放ってやると、
見事に空中でキャッチした。
しかしすぐには食べないで、
私が車で出かけるのを見送ってから食べるのである。

それ以来彼のマナーの良さに敬意を払い、
Mr.Foxと私は呼んでいた。

ところがそんなある日、かなりの怪我をして血だらけになって顔を出した。
もちろん野生動物であるから、生き抜くためには色々な敵と戦い、
それこそ死闘もするであろう・・・。

私は獣医でないので、どうしたらよいかも分からず、
また彼もそうだからといってけして苦しそうな顔もせず、
いつものように誇り高く、一切れのパンを頬張り山に帰って行った。

しかし・・・それから来なくなった。
年が明け、寒さが増して本格的な冬になったがとうとう一度も顔を出さなかった。

元気で生きているのか?・・・それとも・・・。
それでもいつ来ても良いように、パンは毎日外の決まった場所に置いておいた。

3月に入り世間も私も震災一色になり、また宿の予約もキャンセルの連続で、
大変な事になり、すっかり彼の事は忘れていた。

そしてとうとう4月になった。
数日前に丘で他のキツネに会った。
春先のキツネは皆みすぼらしい。

食べ物が少ないのか、このキツネも寄ってきた。

車に積んであったパンを一切れ渡しながら、
「もし君がMr.Foxに会う事があったら伝えてほしい、元気な顔を見せてくれと…。」
そう頼んでおいた。

さて数日後の今日、昼食後に珈琲を飲んでいると、
テラスの窓がコンコンと鳴った。
気のせいだと思い、ほっておくとまた鳴った。

もしやと思い慌てて出てみると誰もいない。
やはり気のせいだったか・・・そう思ってパンを置いていた場所の方を見ると、
なんと・・・居た!!!

石の上で腹ばいになって美味そうに食べていた!

私はカメラを取り、ほんとに彼かどうか確かめるために近寄った。
彼と私とのいつもの約束の間合い、暗黙の距離まで近づくと、
静かに立ち上がった。そして空に向って一鳴きしてから私の方を見た。

間違いない、彼だ。Mr.Fox!
厳しい冬を生き抜いたのだ。

私がカメラを向けると、
口を開けポーズをとるかのように唸った。
「上手く撮れよ!」そう言ってるような態度にも見える。

また会えたこと、再会に感謝しながら、
私はファインダーを覗いた。

相当に厳しい冬だったのだろう…体の毛は抜けとても貧相に見えた。

彼のやつれた顔にフォーカスし、
生き抜くことの厳しさを感じながら、静かにシャッターを切った…。

★「Mr. Fox fights to live.
画面すぐ下の「view fullsize」をクリックされますと、
正しい解像度でご覧頂けます。

追伸:

昨日Mr. Fox に再会できたのは幸運でした。
彼は今朝も来て、パンだけ食べて帰ったようです。

私が留守にしていましたので、会う事は出来ませんでしたが、
しっかり雪の上に足跡が残っていました。

彼の右後ろ足の指は一本無いようで、
足跡が独特なのですぐわかりました。

ところで、写真を見た方から数件メールを頂戴しました。
「・・・とても怖そうな顔ですが、撮影中危険はないのですか?・・・」

同じような事を聞かれる方が多かったです。
お答えしますが、全く危険はありません!

そもそも北キツネはとても賢い動物です。
自分が危険と思う相手には近づきません。

私と彼との撮影距離は約5mです。
これが二人にとっての快適な間合いです。

人間と同じで、彼の領分、世界に踏み込まなければOKです。

また私は彼を撮影する際も、
まさに人間を撮影するのと同じような感性で撮ります。
ようはMr. Fox のポートレート撮影と考えて撮ります。

その際傑作が撮れるかどうかは、
相手、すなわちMr. Fox とのコミュニケーション次第です。

もし私に対して警戒心を持たれたならば、
野生動物の生態は撮れても、ポートレートにはなり得ません!

ペットの撮影と同じであり、
そこが一番大切なポイントです。(#^.^#)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました! (Kent Shiraishi)
2012-10-25 14:34:28
遠い所にお住まいなんですね!
コメント頂きましてありがとうございました!!

42歳で写真とは何ぞやと理解されたというお話ですが、
僕は50過ぎてもまだよく理解しておりません!・・・笑

いまだ日々模索状態であり、学習中です。
なんとか60歳までに、
納得のいく写真が撮れるよう精進するつもりです。

どうかお体を大切にされまして、
頑張られて下さい!
返信する
同感です (ひげおやじ)
2012-10-23 05:39:42
FBでもコンタクトさせていただいているブラジル在住のネイチャーガイドです。
野生動物との距離感・・・・・
とてもスリルで楽しい感覚です。

今年の始めに貴殿のブログと出会い、少しづつですが自分が目指していた写真表現に開眼?し始めたところです。
42歳にして、ようやく写真とはなんぞのものか?と理解し始めたおっさんです。

刺激を与えてくれたKentさんに感謝いたします。
これからもデジタル写真啓蒙活動楽しみしています。
貴殿のご活躍を遠い地パンタナールからお祈り申し上げます。
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