
参院で特定秘密保護法を強行採決させた安倍政権は、エネルギー計画素案でも、民主党政権が掲げたゼロ目標を撤回し、原発再稼働推進を明記しました。福島第一原発事故の衝撃を最も強く受けた筈の日本で、原発回帰が画策されるのは、政官財界に蔓延る原子力ムラのしたたかさの表れでしょう。しかし本当に重視すべきことは、自分世代の経済成長ではなく、5世代6世代先を考えて自然を守ろうと努力するニュージーランドの先住民マオリの人々の考え方(先日のNHK エルムンドで放送)ではないでしょうか。12月第3週には、原発を持つことの問題を再認識させてくれるような4回シリーズの番組が放送になります。チャンネルはいずれもBS1で、00:00-00:50(24時間表記)の放送です。
17日(火)フランス 原子力政策の軌跡(http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/131217.html)
福島での原発事故後、ドイツ、スイス、ベルギーなどが脱原発政策を打ち出す一方、電力のおよそ75%を原発に頼るフランスは、原発推進を堅持している。フランス在住の科学者だったマリー・キュリーとその娘夫婦が、放射線研究で3つのノーベル賞を受賞していることもあり、フランスにとって原子力は国家のプライドをかけた分野だ。第二次大戦後には原子力庁を設置して、核兵器の研究・管理を行ってきた。化石燃料に恵まれないフランスでは、1970年代に起きた石油ショックを機に、原発導入を決定。関係者によると、国民的な議論はなく、当時の政権の一部の関係者がグランドデザインを描いたという。歴代大統領など国家の中枢が推進する原発政策は、アメリカ・スリーマイル島や旧ソビエトのチェルノブイリでの原発事故後、ドイツなどで反原発運動が盛り上がっても、揺らぐことはなかった。
フランスでは今、“最高度の安全基準”を備えた原子炉として、第三世代の新型原子炉の建設が進んでいる。しかし工事は遅れていて、費用も予定の33億ユーロから85億ユーロに跳ね上がった。政権当事者やアレバの元社長などへのインタビューを交えながら、フランスの歴代政権が推し進めてきた原発政策の軌跡と、巨大な産官複合体となった原発産業を見る。原題:In Nuclear We Trust、制作:Morgane Groupe / Kami Production (フランス 2013年)
18日(水)原子力大国 アメリカ(http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/131217.html)
世界最大の原子力大国アメリカでは、原発を含む数多くの原子力関連施設が稼働する一方で、事故や汚染物質の流出などの問題を抱えている。健康被害を訴える住民や、規制当局の当事者などへの取材から、原子力大国の姿に迫る。
第二次大戦中、マンハッタン計画で始まった原子力の軍事利用。核関連の研究機関は戦後も活動を続け、原子力を使った発電技術が生まれた。1960年代に始まった原発の建設ラッシュは、79年のスリーマイル島の原発事故でいったんストップしたが、近年、原発は温暖化対策のため再び注目を集めるようになっていた。しかし、原発が本当に安全に運転されているのか、疑問の声も上がっている。ロングアイランド島の原子力関連の研究所の周辺では、ガンなどの難病にかかる人が急増。住民たちは、敷地外にトリチウムが漏れていたという記録を発見した。近くに活断層があるニューヨーク州のインディアンポイント原発では、福島の事故後、耐震性への懸念の声が高まっている。原発の安全性を審査し運転免許の更新を行うのが、NRC(原子力規制委員会)だが、連邦議会に予算を握られているため、その干渉を懸念する声もある。そして、オバマ政権は放射性廃棄物を受け入れるために建設されていたネバダ州ユッカマウンテンの最終処分場計画を中止した。原子力大国アメリカはどこに向かうのか?原題:The Atomic States of America、制作:9.14 Pictures (アメリカ 2012年)
19日(木)原発廃炉は可能か?~計画とその現実~(http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/131218.html)
原子力発電を進めてきた国々は今、老朽化や閉鎖などによる廃炉を着実に行うという局面を迎えている。ドイツやフランスなどで進む廃炉プロセスと、それぞれが直面する状況を見つめる。
ドイツではかつて、岩塩採掘所に放射性廃棄物を埋めていたが、岩塩が割れ地下水が流れ込む状態になり、回収もままならなくなるという苦い経験をした。廃炉が始まって19年になるルブミン原発では、安全な管理方法が見つからないため、使用済み核燃料が現地にそのまま保管されている。
2005年に廃炉となったアメリカ・メイン州の原発では、建屋の取り壊しをダイナマイトで爆破する形で行った。1960年代には放射性廃棄物を海に投棄していたフランス。現在は、地下深くの粘土層に多重のバリアシステムを持つ地層処分場を建設中だが、住民から反対の声が上がっている。
専門家は、放射性廃棄物の処理は、予想されていたより難しく、コストがかかると指摘。原子力分野の“先進国”と言われる各国は、高レベル放射性廃棄物の有効な処分方法をなかなか見いだせていない。原題:Decommissioning Nuclear Power Plants: Mission Impossible?、制作:Eclectic Presse / ARTE France (フランス 2012年)
(註:ルブミンでの原発解体作業について詳しくは、ドイツグライフスヴァルト原発跡地再開発のドキュメンタリーを視て原発問題を考えるをご覧ください)
20日(金)原発はアフリカへ?(http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/131219.html)
経済成長を続けるアフリカ各国では、電力不足を補うため、各地で原子力発電の構想が立ちあがっている。近年政情が安定し、教育レベルも向上しているウガンダでは、発電施設の不足から必要な電力の4分の1程度しか確保できず、停電が日常茶飯事となっている。こうした中、先進国の原発業界は、原子炉輸出の機会として売り込みにも動いているが、全般的に政情不安定なアフリカ大陸で原発開発には懸念の声も上がっている。積極的な国の一つ、コンゴ民主共和国でも、各地で武装組織の活動が続いている。コンゴには植民地時代の1950年代にベルギーが建設した原子炉が残されているが、近年燃料棒の不正取引が発覚するなど、管理のずさんさが指摘されている。
アフリカ各国が原発に前向きな理由の一つが、燃料となるウラン鉱山があることだ。しかし、その採掘には広範囲の自然破壊と周辺住民への影響を伴っている。また、有数のウラン鉱山を有するニジェールでは、近年アルカイダの一派が勢力を伸ばしており、隣国マリの内戦の影響もあって、ウランの採掘や運搬が危険な状況になっている。急速に原発関連産業の開発が進むアフリカの実態を見つめる。原題:Atomic Africa: Clean Energy’s Dirty Secrets、制作:a&o buero (ドイツ 2013年)
(註:国内では建設しにくくなった原発の販路を海外に求めるやりかたは、発展途上国をターゲットとした国際タバコ産業の戦略に見る企業の非社会的体質健康に有害と分かっているタバコを規制の緩い発展途上国に売り込もうとする国際タバコ産業のやり方と相通じるものがあります)
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