COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

学生達はブログを使った情報の発信と共有の試みをどう見たか?PART 2

2007-08-31 18:06:28 | Weblog
 この記事は、前回中断した学生達による調査結果の考察の続きである。PART 1を未だご覧でない方は、そちらからお読みいただきたい。

5-2)論文の提出率と自己記事の閲覧率
 調査の対象になった学生116名中、106名が論文を提出したことを肯定的に評価する学生達もいれば、10名もが提出しなかったことを問題視する学生達もいた。前群の学生達は自己記事閲覧率68%と合わせて、概ね学生達に環境問題への関心は低くないとみなす傾向が見られた。これとは対照的に、後群に属する学生達は、自分の書いた記事に責任や意義を感じていれば、閲覧して確認するのが当然との意見が多かった。

5-3)執筆姿勢に関すること
 論文を提出した106名中、19名は自分の意見がブログ上で公開されることに張合いを感じ、13名は重荷に感じ、残りの74名は気にならなかったと答えた。重荷に感じた学生は、自分の主張や文章表現力に自信がなくて、匿名でも自分の記事が公開されることに戸惑いを覚えたらしい。気にならなかった学生達は意見に前向きであったという肯定的見方もあれば、発信する意義には無頓着に出しさえすればよいとの考えではなかったかと批判的見方もあった。
 執筆の際、教官の評価より自分の信念を重視した学生が87名で、教官の評価をより重視した19名を大きく上回った。これには肯定的評価が多かったが、次項で触れるように、「教官の評価を重視した学生はもっと多かったのではないか」と疑問を呈した答案もあった。

5-4)他の学生の記事の閲覧
 上述のように、無記名アンケートでは大勢の学生が他の学生の記事をほとんど、或いは全く閲覧していなかった。この群の学生達は、試験場でこの結果が出題されるとは思ってもみなかったであろう。論文提出率、執筆姿勢、自己記事閲覧率を肯定的に評価した学生達も、さすがにこの結果には「残念だった」と述べざるを得ない様子であった。
 意欲的に受講したと思われる学生達の答案には、閲覧の少なさを問題視した考察が多かった。要約すれば、閲覧しなかった学生達は成績に関わるから論文を提出したが、提出してしまえば終わりで、他の学生の意見までは関心を寄せず、環境問題への問題意識が薄いのではないかということであった。そして、そのような学生達が他学生の意見を知ることで自分の意見を深めたり、視野を広げたりする機会を生かさなかったことを批判するものであった。閲覧を義務付けるため、感想を書かせるべきだったとか、学生相互間のコメント交換や教官からのコメントが望ましかったとの意見もあった。
 閲覧の低さを、執筆姿勢との関連で考察した答案も少なくなかった。公表を気にしなかったのは、匿名で出してしまえばもう無関心だったのかも知れない。本当に自分の信念を重視して執筆したのなら、他学生の記事も気になる筈なのに閲覧しなかったのは、実は教官の評価を重視していたのではないかと鋭い疑義を呈した答案もあった。また、張合いを感じて執筆した18名の学生は、他学生の記事を多数閲覧したのではないかと推察した答案もあった。驚いたことに、その18名中6名は全く他学生の記事を閲覧していなかった。この6名は強固な自信家で、他の学生の意見には関心がなかったと考えられなくもない。しかし、その6名中4名は、他学生の記事を読んで「参考になった」という不可解な回答をしていた。無記名アンケートでは、学生達が誠実に回答してくれなければ、信頼するに足る調査結果は得られないであろう。

5-5)レポート提出を自主的とした場合の反応
 最終回の講義は、環境先進国スウェーデンで制作された「映像詩プラネット」の視聴にあてた。これはこのブログの視聴記統合編 にあるように、学生達はそれまでの講義で受けた以上の、強いインパクトを感じたと思われる。自主的にメールで感想を送信してくれれば、ブログに掲載する旨を伝えて講義を終えた。受信した感想は8件に止まった。この結果については、他学生の記事の閲覧と同様、強制されないとやろうとしない積極性の不足という見方が多かった。強いインパクトを受けても、どこか他人事と受止めてしまうと、自分から何かしようとする動機が生まれて来ないのかも知れない。しかしもっと好意的に考えれば、自分から何か発信することに慣れていないと見ることもできる。まとまった感想を書けなかったが、日記に残したと書いた学生がいた。また、当日、用紙を配って感想を書かせるべきだったという意見もあった。

6.ブログアクセス解析で見た記事への延べ訪問者数の推移
 ブログでは、個々の記事について1日毎に何人が閲覧したか調べることができる。同じ人が何度閲覧しても一人と数える。図は、この機能を使って最初の記事掲載以来二ヶ月間の閲覧状況を、延べ訪問者数で表したものである。同一の講義に関する小論文集を2~3回に分けて掲載してあるので、そのうち多い方の閲覧数で示してある。学生達にメールで記事掲載を通知後に増加が見られるが、通知がなければもっと閲覧が少なかったであろうと見た学生もいた。面白いのは、無記名アンケート調査と映像詩プラネット視聴後の急増である。これらのどちらか、もしくは両方に刺激をされて、自発的には意見を発信しない学生達も、他学生の意見に関心が高まったようである。定期試験前の大きな増加と、試験後に見られる有意な増加も興味ある結果であった。「公害と環境汚染」及び「環境と経済」では、担当した学生達に気の毒なことに、このような顕著な増加が見られなかった。これら2章の記事の掲載が先行したので、ブログで以前の記事まで遡って閲覧することに慣れていない学生が多かったためではなかったかと思われる。

7.おわりに
 多少なりとも「よりよき人を育む教育に」に近づくことを目標に取り組んだ半期の講義であったが、達成とは程遠い結果であった。「成績に関係するから答案を提出して終わり」が当然で育ってきた学生達の問題というより、教育や社会全体のあり方が大きく影響している。一部ではあるが、今回の試みを新鮮な気持ちで前向きに受止めてくれた学生達がいたことは明るい材料であった。また、講義期間終了後に他学生の記事を閲覧してくれた学生達が、無記名アンケート調査の時より、他学生の意見を知ることのメリットを感じてくれたら嬉しいことである。共感者がいることを知って自分の意見にも自信が持てるようになり、自発的に意見を発信することへのハードルが低くなって欲しいものである。
 次回は、地球環境を守るために今後10年間にどのような行動が取れるかという、もう一つの論説問題への学生達の答案について述べる。
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