私は浅田聡子には前々から胆石の手術に対する感謝の念を持っていた。それだけに西沢渓谷での大金遺棄に関する共犯意識でこれまで以上の親密感はあったがこれ以上に濃密な関係にはなりたくなく、また浅田聡子の周りには沢山の男性がいるだろうことも知っていた。ホテルには行くまいと思っていたので暫くはお互い静かにしておきましょうと云いその日は別れた。 つづく
浅田聡子は、新宿駅で女性警察官にかなり観察されたことはありました。それ以外は別に何もありませんと言った。私が浅田聡子に言った。持ち主がわからず拾い主が警察に届けでて後、警察は官報にその内容を掲載するそうです。その後でも持ち主が現れない場合は拾い主の所有権が大きくなるとは聞いた事が有りますが遺棄された物の案件によりいろいろ処理されると思います。もし遺棄した人が犯罪に関わっていた場合はかなり複雑になると思います。しかしながら私達はここまで来てしまいましたから何らかの事実が判明するまで静かにしておいて下さい。何かありましたら私、瀬川のせいにして構いませんと言った。その時浅田聡子は何故かホテルに行きたそうな感じだった。 つづく
私は浅田聡子にこう言った。私が履いていた長靴は沖縄まで持って来て小刻みにして若狭海岸に捨てました。あのビニールカバーなど現場に持ち込んだものは海に捨てました。浅田聡子はじっと聞いていた。私、子供の頃から貧乏育ちでろくに弁当も持っていかなかったの。私は人一倍セレブになりたいの。分かってね瀬川さんと浅田聡子が言った。セレブになりたい気持ちは良く分かるが所詮、他人がある事情から遺棄した大金であった。しかし、私も他人が捨てた大金を拾ったまでだと思わずにはいられなかった。時々、浅田聡子の想像以上の魅力的な下着姿がまた目にちらついていた。 つづく
私は浅田聡子と中華料理を食べながら聞いた。浅田さん、あの長靴はどうしました。浅田聡子が云うには現場に履いていた長靴は一方は新宿駅で紙袋に入れゴミ箱に捨てました。もう一方は同じようにして羽田空港のトイレで捨てたと言った。かなり用心していたようだ。沖縄に帰るまでに何か気になるような事はなかったかとも聞いてみた。 つづく
浅田聡子が、あんな大金だとはびっくりしています。瀬川さんの協力が無ければとてもと云い、妖しい目で私を見た。瀬川さん、あの時のお礼にこれから食事をしてこのホテルで今晩は過ごしたいのですがと言った。私は面食らって笑った。食事はいいにしてもホテルに行くと今後浅田聡子の言いなりになってしまいそうだった。 つづく