夢野久作,1998,あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選),角川書店.(2.11.25)
鼓作りの男が想い焦がれた女性へ、嫁ぐ時に贈った自作の鼓。その音色は尋常とは違い、皆を驚かせた。それは恐ろしく陰気な、けれども静かな美しい音であった…。夢と現実とが不思議に交錯する華麗妖美な世界。表題作をはじめ、その粋を集めた夢野文学の入門書ともいえる決定版の一冊。
いやあ、おもしろかったね。
江戸川乱歩と並び称される夢野久作であるが、『ドグラ・マグラ』の印象が強すぎて、「とっつきにくい」作家として敬遠されてきた向きがある。
しかし、こと短編小説に限れば、独特の韻を踏む文体にいつしか引き込まれること必至で、そこに醸し出される奇々怪々な人間と世界の描写は、他の追随を許さない。
他の作品も読んでいこうと思う。
楽しみだ。