ダニエル・キイス(秋津知子訳),1995,クローディアの告白──ある分裂病患者の謎[上]・[下],早川書房.(5.26.24)
1978年、米国オハイオ州コロンバス近郊で起こった強盗殺人事件。
当時26歳のクローディア・ヤスコーは、三人の殺害に関与したことを自供し、逮捕されるが、後に、供述内容が虚偽であることが判明し、釈放される。
後に、真犯人のリューイドン兄弟が逮捕される。
なぜ、クローディアは虚偽の供述をしたのか?
ダニエル・キイスは、根気強く、クローディアの記憶を探索し、その謎に迫る。
クローディアは、自らが殺人事件の容疑者として立件される映画の配役を演じていると信じ込んでおり、それが虚偽であると判明したあとも、記憶の内容が二転三転する。
クローディアの想念は明らかな妄想であったため、彼女が「分裂病」(統合失調症)とみなされたこともゆえなしとしないが、実は、クローディアは、解離性障害を患っていたことが明らかとなっていく。
19歳の時に兵士三人にレイプされた経験、カルト教団への入信、麻薬中毒等が解離性障害の原因となったのだろうが、麻薬中毒者の男に強盗殺人の現場でドラッグを見つけるべく、死体をまさぐることさえ強要された経験は、長いこと、クローディアの記憶から抜け落ちていた。
解離性健忘、であろう。
解離にともなう記憶の忘却と妄想のありようが興味深い。
1982年夏、作家ダニエル・キイスは、分裂病の病歴をもつ若く美しい女性の訪問を受けた。彼女の名はクローディア・ヤスコー、4年前に連続殺人事件の容疑者として逮捕されたが、のちに無実であることが判明し、釈放された人物だった。彼女はキイスに、今こそ事件の真相を語るから、それを本にしてほしいと依頼してきたのだ。クローディアには、ひとつの大きな謎があった。警察の取り調べに対し、彼女は殺人が起きたときの状況を詳しく自白している。なぜ彼女は、犯人しか知るはずのない事実を知っていたのか。隠された真実を探りだすため、キイスはクローディアの病んだ精神の迷宮へと踏みこんでゆくが…。人間心理の深奥をひたむきに描きつづける作家キイスが、分裂病の知られざる世界を解明すべく自ら乗りだし、その一部始終をつづったファン待望の作品。多重人格の驚異を描いたベストセラー『24人のビリー・ミリガン』につつぐ、驚愕の心理ノンフィクション。