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本と音楽とねこと

女子をこじらせて

雨宮まみ,2013,女子をこじらせて,ポット出版(EPUB版).(5.27.24)

 元祖「こじらせ女子」の雨宮さんは、自らの苦悩を呪詛のように独白しながら、40歳で(自宅で)「事故死」してしまった。

 女が、男の幼稚な性幻想や欲望をきっちり内面化し、自己や同性の他者を値踏み、評価するようになるのは、とことん不幸なことなのだと再認識した。

 私の、自分やまわりに対する評価は、それまで必ず「男」の評価軸とともにあったのです。自分がどう思うか、純度100%の自分の意志や考えがあって当然なのに、そこに必ず「今、男社会でどう見られているか」が入り込み、同性を見るときですら純粋な「女同士」ではなく、「この人は男からどう見られているか」「(この人は)私が男からどう見られていると思っているか」を意識していました。だから同性の間でも、いや同性の間だからこそ緊張感があった。友達になんかなれなくて当然です。
 男社会を憎いと思いながら、私自身がいちばん男社会での評価を、男の評価を気にしていたし、そのうえ、自分自身の女として人間としての評価も「男から評価されなければ価値がない」と思っていました。はっきり言えば、性的に男から求められなければば価値がないと思っていた。
 女同士の友情や連帯を感じて、私は自由になれた、息苦しさから解放されたと思う部分があります。男からの評価がすべてではない、というのはその最大のものでしょう。まぁ、同性同士の評価軸にとらわれて苦しいという人もいるでしょうが・・・・・・。

 なんで、女であることで、こんなプレッシャーを感じ、がんじがらめにならなきゃいけないんだろう。好きで「女」として見られたいわけじゃない。そして「女」であることがいやなわけでもない。なぜ感情的な部分や性的な部分など「女」にまつわる部分だけを拡大鏡で見るみたいに強調されてとらえられなきゃいけないのか。いや「そうとらえられる」ということを、なぜこんなに過剰に自分が気にしているのか。

 男目線を内面化したことがすべての始まりと言っていいかもしれません。私の女としての強烈なコンプレックスは、男目線を内面化しなければ生まれ得ないものだったと思います。男目線で自分を鑑定し、あまりにも理想の女とかけ離れているので否定するということの積み重ねで、私は女としての自分に自信が持てなくなりました。問題は男目線を内面化したことそのものではなく、私の男目線が童貞の妄想レベルの男目線(女は巨乳で肌がキレイでかわいくて美人でミステリアスな小悪魔で、でも素直なのが最高!みたいな超絶論理を支持する、現実離れした目線)だったということだと今では認識していますが・・・・・・

 男目線を内面化した女は、男向けのエロのほうが感情移入しやすいんです。自分の中に男を飼っているのと同じだし、女としての主体的な性欲が目覚める前に男目線のエロを知っていると、そっちのほうが反応が早かったりする。女が主体のエロに違和感を感じるし、そこに女としてのコンプレックスが加われば「こんなモテモテの女主人公になんか感情移入できるかー!」と女向けのエロに拒否反応すら生まれます。私がボーイズラブを通って男向けのエロに興味を持ったのは、当然のなりゆきだと思います。子供時代、性的な目線で見られる「女」としての自分を確立する前に世の中の「男が女に欲情するエロ」を感じ取り、欲情する側の自分を先に確立してしまった。親は私をエロに触れないように育ててくれたのですが、どぎついエロに触れなければいいというものではない。「若くてキレイな女」は男に好まれる対象で、「若くない女、キレイでない女」は男にバカにされると、テレビを見ているだけでもわかります。

 まるで強烈な毒気にあてられたかのように、雨宮さんのイタすぎる、グニャリと屈折した自意識、自己愛が突き刺さる。
 中2病としては片付けられない、男中心社会への過剰同調ゆえの歪んだ欲望のありようについても。

 誰も自分のことなんかさして注目していない、性愛がすべてじゃない、ほら、音楽もサッカーもこんなに楽しくすばらしい、こういった諦念をもちえぬほど、「こじらせ女子」の「まなざしの地獄」の闇は深い。

可愛くないけどモテたいし、頭の中はエロい妄想でいっぱい。絶望と欲望の狭間で、私は「女をこじらせ」、気がつけば職業・AVライターに。過剰な自意識と恋愛欲と性欲のせいで、坊主にしたり、サブカルにかぶれたり、親友の彼氏で処女を捨てたり…。それでも「女」はやめられない!コンプレックスを吹き飛ばす力をくれる自伝的エッセイ。

目次
第1章 女子をこじらせて
職業AVライター
暗黒のスクールライフ中学校編
暗黒のスクールライフ高校編 ほか
第2章 セックスをこじらせて
さすらいのバニーガール前編
さすらいのバニーガール後編
アダルトビデオジェネレーション ほか
第3章 「私」をこじらせて
「女」の名前
「女」だから
「女」と「弟」 ほか
特別対談 久保ミツロウ×雨宮まみ『こじらせガール総決起集会!』


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