井上荒野,2024,ホットプレートと震度四,淡交社.(11.28.24)
数々の「おいしい小説」を手掛けてきた著者が贈る――“食にまつわる道具”を通して揺れ動く老若男女を描いた短編集。「今年のゼリーモールド」「ピザカッターは笑う」「コーヒーサーバーの冒険」「あのときの鉄鍋」「水餃子の机」「錆び釘探し」「ホットプレートと震度四」「さよなら、アクリルたわし」「焚いてるんだよ、薪ストーブ」の9篇を収録。
結婚祝いに贈られたお揃いの鉄鍋。夫の元カノから譲り受けるホットプレート。クリスマスプレゼントのピザカッター…“食にまつわる道具”をめぐり、揺れ動く心を切り取った短編集。
井上さんの短編小説は、年を追うごとに完成度を増しているように思う。
作品一つ一つを読了するごとに、なんとも言えない余韻に浸るとともに、巧いなー、と感心する。
本短編集の共通素材は、「食にまつわる道具」。
人の体温さえ感じさせる、感情表出の描写が、実にすばらしい。