底辺への競争

山田昌弘,2017,底辺への競争──格差放置社会ニッポンの末路,朝日新聞出版.（10.16.2020）

　「家族ペット」、「パラサイト・シングル」、「婚活」、「希望格差」、そして、「底辺への競争」というように、山田せんせの、マーケティングの才覚は抜群である。
　もっとも、ご本人がことわっているとおり、「底辺への競争」（The Race to the Bottom）は、Alan Tonelsonの同名著作からの借用である。
　非正規労働の拡大、非婚化と、高度経済成長期に成立した、ライフコースの標準は、もはや崩壊している。だったらどうすれば良いのかという提言については、家族社会学レベルでのそれだと、いまいち説得力に欠ける。
　さすがに、社会保障を廃止しベーシック・インカムを、というのは、無責任すぎるだろう。

「パラサイト・シングル」の発見から20年、「婚活」ブームから10年―「家族形成格差」の拡大が社会を引き裂く。“アリ地獄”から抜け出すにはどうすればいいか?日本を覆う「怯え」の正体。