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性別違和・性別不合へ

針間克己,2019,性別違和・性別不合へ──性同一性障害から何が変わったか,緑風出版.(4.30.2022)

 性同一性障害(Gender Identity Disorder)は、アメリカ精神医学会のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)では性別違和(Gender Dysphoria)に、WHOのICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)では性別不合(Gender Incongruence)に、名称が変更された。
 名称変更の理由は、一つには、GID当事者から「自分たちはGIDなる障害をもつわけではない」という抗議がなされ、「こころの性とからだの性がくいちがっている状態」が脱障害化、そして脱病理化されたからである。
 脱障害化は良いとして、脱病理化は、下手をすれば、公的医療の対象から外されてしまうことにつながる懸念があるが、DSM、ICDともに、そうならないよう、この概念についてはそうとうの配慮をしてきたことが、本書からうかがえる。
 個人的には、従来より、生得的解剖学的性差としてのSexと獲得的社会文化的性差としてのGenderという区分けに、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』をまつまでもなく、違和感をいだいていたが、DSMの改訂により、前者は、「わりふられたジェンダー」(assigned gender)と呼ばれることになったこと、これについて知ったことも本書を読んだ収穫であった。

性同一性障害が、DSM‐5では「性別違和」にすでに変更され、ICD‐11では「性別不合」へと変更される。その変更は単なる名称の変更だけではない。性同一性障害から何が変わるのか?どうなるのか?「脱病理化」とはどういうことか?精神疾患ではなくなるのか?性同一性障害特例法、ガイドライン、保険適用などはどうなるのか?本書は性同一性障害をめぐる諸問題に精神科医として二十数年にわたって取り組み、現在も患者の診療を担っている第一人者が、その変更の意味と影響についてやさしく解説する。

目次
DSMとはなんだろうか
ICDとはなんだろうか
病理化と脱病理化とはなんだろう
DSM‐5の「性別違和」を詳しく見てみよう
ICD‐11の性別不合を詳しく見ていこう
服装倒錯的フェティシズムはどうなったか?
ガイドラインはどうなるだろう?
保険適用はどうなるだろう?
「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」はどうなるだろう?
GID学会の名称はどうなるだろう?
トランスジェンダーの人権と健康

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