本と音楽とねこと

日本が売られる



堤未果,2018,日本が売られる,幻冬舎.(6.20.2020)

 堤未果さんは、「日本のナオミ・クライン」だ。その資料収集能力と繰り出す論理の鋭さには、ジャーナリズムはかくあるべき、と思わされる。
 現代の資本主義は、わたしたちの暮らしのあらゆる資源を商品化し、コモンズ(共有財)を食いつぶしていく。「ウォール街」(アメリカ合衆国の金融業集積地)の利益を代弁し、「四半期収益」の最大化による株主利益の達成しか眼中にないグローバル企業の経営者により、あらゆるコモンズが民営化、商品化、市場化されていく。
 その行きつく果てにあるものは、人間の生活基盤と社会関係の徹底的な破壊、健康被害の拡大、自由権・社会権のはく奪であり、すなわち、「人間」の解体、「社会」の解体である。
 本書で明らかにされる事態の一つ一つが、震撼すべき深刻なものであることは、読めばわかるだろう。自分自身が「売られる」事態にならないためにも、読んでおきたい一冊だ。

目次
まえがき いつの間にかどんどん売られる日本!
第1章 日本人の資産が売られる
水が売られる
土が売られる
タネが売られる ほか
第2章 日本人の未来が売られる
労働者が売られる
日本人の仕事が売られる
ブラック企業対策が売られる ほか
第3章 売られたものは取り返せ
お笑い芸人の草の根政治革命―イタリア
92歳の首相が消費税廃止―マレーシア
有機農業大国となり、ハゲタカたちから国を守る―ロシア ほか
あとがき 売らせない日本

水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ。そんな日本に今、とんでもない魔の手が伸びているのを知っているだろうか?法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏と反撃の戦略を、気鋭の国際ジャーナリストが、緻密な現場取材と膨大な資料をもとに暴き出す!

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