小手鞠るい,2023,未来地図,原書房.(2.19.25)
奈良の小さな町で、中学教諭として再出発した久児(ひさこ)。しかし、心に巣くう暗い過去が、幸せになろうとする彼女にブレーキをかける。自分で捨てておきながら、探し続けてきたものとはなんだったのか――愛と再生の物語。
大人の鑑賞に耐えうる恋愛小説の傑作。
ハッピーエンドで終わる恋愛譚は、おしなべて鼻白むだけのことが多いが、本作はちがう。
こころに深い傷を負った主人公、久児が、同じく傷を負った直巳にこころを開くくだりが秀逸だ。
ストーリーで読ませるだけでなく、美しく、奥深い言葉が読む者の琴線に触れる。