日本でもっとも優れた経済学者であった宇沢弘文さん。本書は、没後にとりまとめられた講演、インタビュー集である。
学生時代に読んだ『自動車の社会的費用』は、宇井純や宮本憲一等の「公害論」とならんで、それまでの文明観を覆してくれる内容であったことを懐かしく思い出す。
ミルトン・フリードマンの恥ずべき言動は知っていたが、かのレオン・フェスティンガーが、自説がヴェトコンの拷問に応用されたことを知って、スタンフォード大学での職も、心理学という専門も、家族さえも捨てたことははじめて知った。宇沢さんならではの有益な知見が数多く収録されている。
富を求めるのは、道を聞くため―それが、経済学者として終生変わらない姿勢だった。「自由」と「利益」を求めて暴走する市場原理主義の歴史的背景をひもとき、人間社会の営みに不可欠な医療や教育から、都市と農村、自然環境にいたるまで、「社会的共通資本」をめぐって縦横に語る。人間と経済のあるべき関係を追求し続けた経済思想の巨人が、自らの軌跡とともに語った、未来へのラスト・メッセージ。
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