本書で紹介されている霊体験の数々が、はたして「事実」なのか、幻聴・幻覚でしかないのか詮索しても無意味である。わたしたちは、再現可能性を唯一の根拠とする近代科学の認識枠組みの外に出ることは不可能だからだ。
そんなことよりも、此岸と彼岸の近しさゆえの「死者」との共生がいまでも息づいている東北の地において、津波による最愛の他者の突然の死を受容し、死者の「霊魂」とともにけなげに生きていこうとする人々のある意味強靭な精神の有り様にこころうたれる。
本書が、「震災の記録」としての重要な価値をもつものであることは言うまでもない。
目次
春の旅
『待っている』『どこにも行かないよ』(亀井繁さんの体験)
青い玉になった父母からの言葉(熊谷正恵さんの体験)
兄から届いたメール“ありがとう"(熊谷常子さんの体験)
『ママ、笑って』―おもちゃを動かす三歳児(遠藤由理さんの体験)
神社が好きだったわが子の跫音(永沼恵子さんの体験))
夏の旅
霊になっても『抱いてほしかった』(阿部秀子さんの体験)
枕元に立った夫からの言葉(赤坂佳代子さんの体験)
携帯電話に出た伯父の霊(吉田加代さんの体験)
『ほんとうはなあ、怖かったんだぁ』(阿部由紀さんの体験)
三歳の孫が伝える『イチゴが食べたい』(千葉みよ子さんの体験))
秋の旅
『ずっと逢いたかった』―ハグする夫(高橋美佳さんの体験)
『ただいま』―津波で逝った夫から(菅野佳代子さんの体験)
深夜にノックした父と死の「お知らせ」(三浦幸治さんと村上貞子さんの体験)
“一番列車が参ります"と響くアナウンス(今野伸一さんと奈保子さんの体験)
あらわれた母と霊になった愛猫(大友陽子さんの体験)
避難所に浮かび上がった「母の顔」(吾孫耕太郎さんの体験)
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