前回の投稿で①結末 ②世界観 ③過去 ④テーマを決めることが重要だと書いた。考えることはまだ必要だ。今回はシナリオの構成について記述したい。まずシナリオの構成はよく言われる起承転結に区切って分けると作りやすい。
「起」は物語の導入から序盤の一山を終えるまで。通し30時間程度のプレイ時間であれば4.5時間程度がここにあたるかと。ここでは世界観であったり主人公の旅立ちとなる理由付けをプレイヤーに落とし込むシナリオを考える。また初期の仲間キャラがINするのもこのタイミングだ。物語としては大きな動きはなく退屈なシーンが多くなりがちである。この時点で退屈を押し切ってでも ぬるい展開とするのか、序盤から波乱の展開を見せるのかは作り手次第ではあるが、小難しい情報を張り巡らせてもプレイヤーが置いてけぼりになるので、無難に世界観と主人公キャラをプレイヤーに知ってもらう程度で済ましておけばよい。ただしこの時点でラストにおける伏線を張っておくと非常にgoodである。とは言えども「起」の終盤シーンではある程度含みを持たせたイベントを作った方が良い。序盤からパーティーINしていたお世話役のキャラの離脱であったり、故郷を追われる等。もう後戻りできないと思わせる何かである。「show mast go on」の感覚を植え付けさせることだ。
「承」で前半部を終わらせるイメージだ。15/30時間程度となるボリューム感か。ここのパートではとにかく色々なことを巻き起こすことが大事。敵勢力の刺客を出すとか、物語の根幹とも言える不可思議なイベントを提起するであったり、主人公キャラのライバルの出現等。このパートではプレイヤーへの情報過多と言っても良いほどの謎めいた何かをばらまくことである。ただし無作為にイベントをまき散らすと、これもプレイヤーが置いてけぼりになる。だからこそ「起」の段階で退屈ながらでもシナリオに紐づく世界観の落とし込みが必要なのだ。「この世界観の中でなぜこんなことが巻き起こっているのだろうか?」とプレイヤーに思わせたら成功である。極端な言い方かかもしれないが伏線を張りまくる、という言い方だと わかりやすいかもしれない。またこの辺りで仲間キャラのほぼ全てをINさせることも重要だ。これ以上遅くなってしまうとキャラクターへの愛着が湧かなくなってしまう上に、仲間キャラ自体がシナリオと紐づく個別ストーリーも入れ込むべきパートであるからだ。もちろん この後に続くパートで仲間キャラをINさせても良いが、この手法はどちらかというとストーリーの盛り上げに使うための演出という見方が強い。仲間キャラにも相応のシナリオを用意するなら早めにINさせるべきだろう。そして「承」の終盤となるシーンでは物語の根幹を揺るがすようなイベントを作るべきだ。FF6で言うと魔大陸→世界崩壊であったり、DQ6でいう目下のラスボス的な立ち位置のムドーとの対決など。ここの激震っぷりが「転」の出来につながると言っても過言ではない。
そして「転」である。ここをキュッと絞って、ラストの「結」でボリュームを手厚くするか、逆に「転」である程度厚くさせ、「結」でラストを飾らせるか。ここは作り手の好みによるところが大きい。全体的な演出を考え適切な手法にすればよいが、個人的には「転」を厚くさせる方が好きなので それで述べる。いずれにしても「転」はシナリオ上で一番重要な役割を担っていると考えている。ここで盛り上がらなければ駄作。23/30時間程度要すれば良いと思うが、どのような演出を施すかはしっかり考えて欲しい。「転」という位だから事態が一転するのである。例えば主人公キャラの長期離脱であったり、仲間キャラの一時的解散、作戦失敗など。手っ取り早いのは見方サイドを一旦どん底に突き落とす仕掛けが良い。FF7でいうクラウドの精神崩壊などがわかり易いか。ゲームではないが大河ドラマ「鎌倉殿の13人」なんかはこの辺りから謀殺や仲間の反乱などが頻発しパワーゲームが目まぐるしく繰り広げられ、主役が闇落ちするという、手に汗握る展開がみられた。もちろんここまでプロの脚本チックなものは難しいが良い見本となるだろう。興味があれば見て欲しい。いずれにしても絶望→希望という流れを汲むことが肝要であり、その他にも物語の根幹となる謎をある程度解明させるという張った伏線の回収も徐々に行っていかなければならない。また上述した「転」で最重要仲間キャラINさせるという手法も悪くない。敵キャラであったりライバルとの決着をつけるなど、この辺のことをこなしていくと盛り上がること請け合いだろう。本当にやることが多くて忙しいのだ。
最後は「結」である。言わずもがな ここで物語の結末を迎える。30時間の作品であれば、ラスダン前哨戦→ラスダン→ラスボスが良いだろう。プレイ時間が長い作品であればイベント数が増加するかもしれないが、ここでガチャガチャさせてもしょうがない。とにかく伏線を全て回収させることに集中し、構想時に考えた結末にシナリオを誘導させるだけである。これまで張り巡らせた伏線を綺麗に回収させた暁には作り手もプレイヤーも圧巻の一言であろう。ぜひ目指してほしい。
ここまでを読み返してみて、自分自身でも当たり前のことばかり書いているなと思うが やはり基本は大事だと思う。参考にしてもらえると嬉しい。ちなみに以下は補足となる。もう少々付き合い願いたい。
上述でも簡単に伏線 伏線と言っているが張り方も回収も存外難しいものだ。明らかな匂わせ伏線の乱発はプレイヤーのうんざりを誘発する。仲間キャラの(まさか…)とか(考えすぎか…)などは作るだけ無駄である。個人的に思う美しい伏線というのは、あたかもプレイヤーに当たり前と思わせていたことが違っていた。ということだったりする。ミスリードという表現が正しいかは わからないがそういったニュアンスである。「Ever17」というアドベンチャー作品があるが、まさにこのゲームこそが伏線のお手本のようなゲームであった。興味があればプレイして欲しい。伏線を伏線と思わせない仕掛けが必要なのである。
また伏線回収もこれまた難しい。回収した時点でプレイヤーに「あっ!」と思わせないといけないのである。プレイヤーが伏線回収だと気付かずにスルーされてしまったとあっては泣けてくるだろう。伏線を仕掛けた時点で何気なくプレイヤーに記憶させることが必要である。
ではどの時点から回収を始めればよいか?小さな伏線であれば「承」の時点から少しずつ回収すれば良いだろう。しかし物語の根幹となる大きな事実の判明は「転」であると考える。「結」でも良いが個人的に「結」は結末なので回収するパートでふさわしいかと言われるとちょっと違う気がする。しかし「転」の時点で全ての回収をしてしまうと「結」はラスボス戦だけとなってしまうので、「転」の時点で、ほぼある程度の謎が解明されたが、最も重要な謎は残しておく。「結」でそれを回収するのが理想的かと考える。
最後にラスボスはどの段階で登場させるべきか、である。これについてはこうした方が良い。というセオリーはないと思うが、極端な場所での出現は避けた方が良い。例えば序盤から因縁の敵として出した場合、目標が最初から定まっている為主人公達の行動原理は設定しやすいが、驚きの展開を演出させるには少々無理がある。逆に終盤に出す場合、因縁めいたものは希薄になるし何かとご都合主義と思われやすい。やはり中盤あたりから黒幕と思われる存在を匂わし徐々に現していくのが無難かと思われる。序盤から見方サイドのキャラクターと見せかけて最後に実はラスボスでしたというのも手法としては珍しくないが工夫して伏線を仕掛けていかなければ「あー…やっぱり」と思われてしまい興ざめしてしまうので注意だ。ただしラスボスの存在意義について個人的に考えるのは、無理してプレイヤーに衝撃を与える必要性はないということ。そういった衝撃な事実などはシナリオ自体で構成できるよう取り組めば良い。ラスボスが事前にある程度予測されても良いではないか。大事なのは「なぜ そこにラスボスとして君臨しているか」この理由さえ明確となっていれば、後はラスボスらしいバトル演出を行えば良いと思う。
以上だ。ここまででシナリオについて3つのパートに分割して投稿したが、読んでいただいて方はわかると思うが、ツクールのソフトを使わずに出来る作業である。いよいよ次回はこのシナリオをイベントに落とし込み消化していく作業になる。つづく。