桜の樹は花を咲かせるためにじっと命を貯めて
すべてをピンク色にして
花は千、万の眼(まなこ)のように下を向き
見てくださいと言っているようです
柿熟るる
小國裕美
クラシック流るる医院フリージア
芽柳や風が汽笛を呼ぶごとし
山茱萸や雨上がりたる東空
銅像の海に向きをり夕桜
夕さりの荒野の百合の白さかな
一盛の青き光やマスカット
本堂を開ききったる虫浄土
香煙の立ちのぼりゐる秋の寺
金比羅の桜紅葉の磴下る
文綴る和紙の便箋杜鵑草
金木犀散るや石塀濡れてをり
蔵町の日暮れの色や柿熟るる
古き家の瓦照らして今日の月
秋うらら前掛け赤き狛狐
二階よりピアノ流るる茨の実
骨董の藍の深さや暮の秋
山深き道乾きをり栗拾ふ
立冬やトロ箱重ね朝の市
欄干にかもめの並ぶ冬の濠
枕辺の分厚き本や冬ともし
俳句の経歴は半ばあいまいであるが、調べればわかる。
香川県生
平成3年
草入会
平成7年
草同人
令和2年
嵯峨野入会
令和2年度
嵯峨野新人賞
令和4年
嵯峨野同人