おもい出し日記

起業という継ぎ方


私が起業したのは父の急死がきっかけでした。

小さい時から知っている職人・業者の方が多くおられ、自分が生まれ育った環境を考えると工務店をやめることはできませんでした。

しかし、工務店をそのまま引き継ぐと不必要なものまで引き継いでしまうことにもなります。

ただ家業を「継ぐ」ということではなく、「起業する」という志でスタートしよう!そう決めました。

起業するにはリセットが必要です。
そこで父の持っていた建設業許可を返上し、廃業することとしました。そのぐらいの決意をもって望みました。

自分の利益のために起業するのか?
業者の為に?
建て主の為に?

何のために仕事をするのか。それは自分しかできないものなのか…。


自分が理想とする普通の家をつくろう


大抵の方は家づくりを始めようとする時、総合展示場に赴いて、自分たちに合う家を探すことが主流だったと思います。会社のイメージ、若しくは営業の人柄・見た目がきっかけというものもあったと思います。

私は以前、大手住宅会社から設計プランニングの依頼を受け、契約した方と打ち合わせをしながらプランをつくっていました。

打合せはたいへん楽しくさせていただきましたが…。
会社の仕様や考え方は当然あり、カタログのような間取りをつくっているだけでした。

1階と2階がゆるやかにつながらないか…。
吹抜けから太陽のエネルギーをもらえないか…。
こんな発想は必要とされませんでした。


大手住宅会社は大量の住宅をつくるのですから大量の木材が必要です。
それには外材が都合よく、大量に使われていました。

土台には防腐防蟻処理の薬剤が注入されており、その当時薬剤にはヒ素が含まれていました。

調べてみるとヒ素は処理された状態のままであればいいが、燃やした場合にヒ素が浮遊し人体に影響が…。桧や杉は薬剤の注入が必要なく…。
地場の桧や杉を利用すれば何も薬剤に頼らなくてもいいのに…。

薬剤の中にヒ素が入っていることを会社に問いただしてみても返事は返ってきませんでした。

その後、ヒ素入りカレー事件が発生することになります。ヒ素がTVで大きく取り上げられたのか、それからの薬剤調書にはヒ素がなくなっていました。成分を変えたのです。カレー事件がなかったらどうだったのだろう…。そう思ってしまいます。

その後は阪神大震災があり家の耐震性に大きな関心が集まりました。省エネ性や環境に対しては今程ではありませでした。

何のために仕事をするのか。それは自分しかできないものなのか…。

これからつくる家は今までの経験を含め、耐震性はもちろん、地域の木材、省エネ性、自然素材、そして地域の職人・業者がつくり、次の世代にバトンを渡す。
そして、つくった家を守っていければ!そう考えました。

そこでできたUSPが「近くの木と職人でつくる家づくり」です。

出来るだけ地域材を!ということで100%近くのみやぎ材を使用してきました。その当時、みやぎ材をこのぐらい利用しているところはなかったと思います。

その後、宮城県からみやぎ材を利用すると助成される事業がはじまりました。

東日本大震災後は国交省による事業「地域型住宅ブランド化事業」がはじまります。
この事業は原木供給者、製材所、工務店、設計者、業者、建て主まで、地域にあった住宅を考え、提供し、それを守っていけるグループに対して助成金が支出され、建て主様に還元される事業です。

宮城県でも、これから始まる国の地域型住宅ブランド化事業をお手本に、グループを形成し長期優良住宅仕様とみやぎ材で復興住宅をつくろうとなりました。

それにより宮城県で80グループぐらいできたと思いますが国の第一回目の採択を受けたグループは7グループしかなく、そのうちの一つが「近くの木と職人でつくる家づくり」でした。

大変審査が厳しかったようですが、なぜ採択を受けられたのか?

事業が始まる数年前からグループを形成し活動していました。
経営理念、木工教室、植林活動、地域にあった仕様の家、家づくりスケジュールシート、基準工程表、施工管理チェックシート、地域材の告知方法等の資料が整備され、実績を評価していただいたからだと思っています。

何のために仕事をするのか。それは自分しかできないものなのか…。
自問自答し、経営理念にまとめたのです。


経営理念

一、低価格で高品質な家づくりを目指し、社会に貢献する
人・環境にやさしく、丈夫で長持ちする、安くていい家を提供していく。

一、若い職人、社員を育て、次の世代へつなげる
夢を生きる(プロになる)ことに自信とチャンスを与え、
「地域循環型家づくり」ができるような環境を整える。

一、「元気」と「笑顔」が生まれる家をつくる 
みんなが幸せになれるよう、お互いに利益を得る家づくりを目指し、
健康で安心して暮らせる家をつくる。
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