葬儀受付をしていたら
施主はポケットから
ボロボロの紙を取り出した
光明真言
オンアボキャーベーロシャノー
マカボダラマニハンドバジンバラ
ハラバリタヤウン…
だった
『何時も持ち歩いてます』
そして
南無大師遍照金剛
(なむだいしへんじょうこんごう)
南無興教大師
(なむこうぎょうだいし)
南無専誉僧正(なむせんよそうじょう)
と話し続けた
『凄いですね』
大黒さんは若い頃…
寺に嫁ぐ前
お不動様の真言を何時も唱えてた
唱えると心が落ち着き
どんな困難にも立ち向かえた
施主の気持ち
少しだけわかる…
施主は70代半ば
大黒さんの親の年齢である
きっと
困難に立ち向かえた《支え》から
《親の弔い》に変わったかも知れない
『これで両親が2人とも亡くなった
自分は70代半ば
いよいよ終活ですよ』
目は少し赤かったけど笑顔で言った
『準備は必要かもしれませんね』
1600年から続く旧家
家とたくさんの土地を抱えてる
52歳の大黒さんは
まだまだ
走り続けて良い年齢
70代に入り施主のように
『私は頑張ってきた
次はいよいよ終活です』
笑顔で言えたらいいな