王子に向かう車中、外の景色を観ていた。
それは突然だった。
「車内アナウンスがあっただろう。聞いていないのか」
「お前サラリーマンだろう。そんなことじゃ出世できないぞ」
「3回目だろう。携帯かけるな」
若いサラリーマンは、すぐにあやまったが、おじさんは席を立ち、
あやまるサラリーマンに向かって3度ほえた。
次の駅で、若い女性が乗車してきた。なんと座った。
そのおじさんと、同じボックス席にだ。私は不思議とカンがあたる。
この若い女性は携帯で、は・な・す…そのときどうする。
列車が動きだすと、あろうことか、すぐに携帯で話し出した。
しかも2回だ。私はおじさんをチラチラ見た。
おじさんは目の前で、若い女性が携帯しているのに動かない。
何も言わない。
「おいおいそれはないだろう。叱るときは公平にしろよ。」
私は小さくささやく。前席のご婦人は目で笑っていた。