アメリカでちょっと話題の動物保護チームがある。
その名を「Rescue Ink(レスキューインク)」
Rescue Ink のモットーは「Abusers are Losers(動物を虐待するヤツらはダメなヤツら)」
NY で2年前に作られたたった8人の小さなチーム、といえば少々頼りなく聞こえるが、実際にはメンバーは皆揃いも揃ってアメリカン・コミックスから飛び出たようなガタイの良いタフガイ達だ。
その姿を見たものはマッチョな彼らの強面と体中に彫り込まれたタトゥーに怯え、まず目を逸らして道を避けようとするだろう。
チームの名前「Ink」はInc.(=法人)とインク(=タトゥーの同意語)を引っ掛けたものらしい。
「オレの家族にとって動物の保護は代々の伝統家業みたいなものだった」という元不動産業者でチーム・リーダーの Joe Panz とそのメンバー達はいずれもニューヨークの貧困層出身、通常なら暴力と犯罪のキャリアに埋もれても不思議ではない人達だ。彼らはスラム街の荒れた若者達のことを誰よりも良く知っている。
「アッパー・イースト・サイドで停車中の車からビション・フリーゼが麻薬中毒者に盗まれた」、「近所の一軒家に180匹もの猫が飼われているからなんとかして欲しい」など、Rescue Ink のホットラインには時には日に250件もの SOS が入る。
「多くの動物保護団体は女性がイニシアティブ(先導)を取っているが、彼女達がなす術をなくしたとき、それがオレ達の出番」と Joe Panz。野獣のようなイメージと義侠心、熱い拳とそして小さな動物への情愛がこの「Rescue Ink」の資産といっていい。
日常の動物虐待現場に駆けつけるだけでなく、彼らは多くのホームレスが連れているペット達約40頭の世話、ティーンネージャーの間で密かに流行っている闇闘犬の対策、レスキューした犬の再教育・避妊・去勢・仲介とワークショップを介した啓蒙活動も行い、一風変わったこのチームは現在一般からエリートまでの多くの支持を得ている。
バイクのメッセやタトゥー・ショーで知り会った彼らは「Rescue Ink」を立ち上げる前にはファーストフード店やカフェで落ち合い動物達の保護計画を立てていた。
しかし店のマネージャーは彼らの姿を見てすぐさま強盗の危険を感じ、警察に通報されることばかりだったという。「席についてからパトカーが来るのに2分とかからなかった時もある」とメンバーは当時を振り返る。
メンバー最高齢75歳の Batso、1週間がかりだった180匹の猫のレスキューした。
バイクとタトゥーとそして動物を心から愛し、犯罪に手を染めたくはないという者だけが「Rescue Ink」のメンバーとして受け入れられた。彼らは持ち前の体格と経験を生かし、他の動物保護団体が手がけたくない(あるいは手がける事のできない)課題に平然と向かってゆく。
法律違反スレスレの手段もいとわない、動物を虐待する人間にとっては恐ろしい存在だ。
警察でも動物のエキスパートでもない彼らの、ハードなのは外見だけではない。内に秘められた動物へのハードな愛情こそがこの活動の中心だ。
彼らは学校へも出向き子供たちへ動物への愛情をさらに情熱的に説く。
「オレ達は罰金や刑罰を脅すんじゃない、何かあればただ君達の家のドアの前に立つだけだ」、この言葉の裏を子供たちは読みとることだろう。
自分達の生い立ちと同じ貧しい家庭の子供達の手本になりたいと彼らは言う。
Rescue Ink のモットーは「Abusers are Losers(動物を虐待するヤツらはダメなヤツら)」