「サラバンド」は、バッハの時代の舞曲の一種で、
二人でゆっくりと踊る曲、らしい。
映画は、バッハの無伴奏チェロ組曲の中の、
5番のサラバンドを基層として作られている。
映画の、10個の章のそれぞれが、たった4人の
登場人物のうちの2人ずつの対話になっている。
その対話を、クローズアップを多用した、長まわしのカメラが、
二人の感情を抉り出すように描写する。
その描写の緻密さを、ディジタル技術が影で支える。
(上映は、プロジェクタで行われている)
そこに描かれているものは、
なんという濃密な時間だろう。
人間の憎しみ、孤独、そして、愛らしきもの・・・
観終わったとき、普通の映画を10本くらい
まとめて観たかのように疲れていた。
そのあと、二日ほど、頭痛がした。
しかし、観ておいてよかったと思う。
あのデジタル映像の美しさは、
巨大プロジェクタを持つ映画館でないと体験できない、
(麻倉さんは、いつもあんなのを見ているわけだ・・・)
という意味もあるが、映画としても、
ここまで深く、真摯に、ストレートに、
人間、特にヨーロッパ近代の人間、の孤独と愛の不可能性を
描いている作品はあまりないと思う。
愛の不可能性・・・
ずいぶん久しぶりに、この、
福永武彦さんの言葉を思い出した。
漱石がイギリスで感じた孤独も思い出した。
ベルイマンも、漱石と同じように、
孤独で過酷な幼年時代を過ごしたらしい。
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