此瞬間まで思はなかつた」
という有名なせりふを含む遺書を残して心中した、
有島武郎さんの代表作の一つ。
中学校の文学史?で習って以来、
少し気になっていたのだが、
本を買ったり、図書館で借りたりして
読むまでには到らなかった。
i文庫HDの内蔵コンテンツに入ってたので、
何気なく読みだしたら、これが止まらない。
どぎつい味付けのB級グルメという感じで、
一週間くらいで一気に前・後編を読んだ。
ちょっと目が疲れるが、
縦持ちなら字が大きくて
読みやすい。
それにしても、
なんともすさまじい話だが、
結構面白く読めてしまうのは、
葉子の屈折しきった行動を、
あまりにも愚かと思いつつも、
自分の中にも思い当たるものが無いわけではない、
ためかもしれない。
一種の「拡大鏡」、
デフォルメなのだ。
しかし、この話は実話に基づいているらしい。
昔は世間の目が厳しかった分、
むしろ今よりも派手な色恋沙汰が
あったのだろうか・・・
モデルとなった男女も男女だが、
それをすぐ小説にしてしまう
有島さんも有島さんだ。
たぶん、世間の「不埒な!」という意見に
反論したかったのだろうが、
ひいきの引き倒しという感じもする。
ちなみに、小説の中で主人公らの恋愛を
新聞に告発する「田川夫人」のモデルは、
鳩山前首相の曾祖母の鳩山春子さんという方らしい。
いやはやなんとも・・・
後半、葉子が狂ってゆく様は、
その執拗な心理描写もあわせて、
漱石の「行人」の一郎を思わせる。
「或る女」の前編(の元となる作品)は1911年、
後編は1919年に発表されている。
漱石の「行人」は1912年12月から連載開始。
ほとんど同じ時代なのだ。
相互に影響はあったのだろう。
漱石はイギリスに行き、
有島はアメリカに行った。
もし漱石がアメリカに行っていたら、
その後どんな人生を送ったのだろう?
などなど思いは尽きない。
次は「カインの末裔」を読もう
と思っている。
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