「ある男」の映画化作品が
公開されたので、
初日のラストで観た。
「すずめの戸締り」の前の
上映予告に「ある男」が
出ていたので連鎖した次第。
映画のほうは、
渋い名作、という感じで、
レイトショーで観るのに
ふさわしかった。
安藤さんがとても良かった。
妻夫木さん、窪田さんも
含めて上手な人がたくさん
出演している。
撮り方も丁寧で、
奇抜なカメラワークや演出はないので、
違和感なく、安心して観られたし、
いろいろと考えさせられた。
名前を変える人のお話だが、
名前は、自分のラベルであって、
自分の過去と現在と未来をつなぐ
ものだが「人は変わり得る」ので、
それが桎梏になることも多い。
名前以外にも「犯罪者の子供」
のようなラベルが
人の生き方に大きな影響を
与えることは多いし、
逆に「有名大学卒」のようなラベルに
安穏としてしまうこともある。
ラベル以外にも、SNS で
発信している「自分」なども
作品の射程に入っている。
そうした情報は、
情報処理の負荷を下げる
ためにも必要なものだが、
あくまでも道具であって、
今の自分の生き方がそれに
従属してしまうのは
健全ではない。
そういうラベルから逃れて
今の自分を精一杯生きる、
と言ってしまうと月並みだが、
そのことを別の言い方で
伝えている作品だと思う。
ある意味では
「もののあはれ」を知る
にもつながるかもしれない。
この作品も、純愛もの
として読むこともできる。
原作を読んだのは
まだ1年くらい前なのだが
内容をすっかり忘れていて
あまりの鳥頭ぶりに驚いた。
原作を読み直しているが、
映画では、時間の制約もあって
伝えたいことにフォーカスして、
ディテールが圧倒的に
省略されているので、
映画ではよくわからないところが
ほとんど解消される。
映画を観ることで
気づかされることも
いろいろある。
観た後で読み直すことで、
平野さんが本当によく
細部を書き込んでいるという
ことがよくわかった。
ただ、映画を観てしまうと
映画を観る前の自分には
戻れないので、どうしても
映画のキャストのイメージで
小説を読むことになってしまう。
ノベライズ作品は別だが、
原作を映画化した作品は、
原作を先に読むほうが
良いのかもしれない。
自分のイメージを大切にして
映画は観ない、という選択も
ありえるだろう。
たとえば「ノルウェイの森」は
まだ観ていないし、
あまり観たくはない。
でも「トニー滝谷」は
観てよかったように思う。
「日の名残り」や
「わたしを離さないで」は
映画としてはどちらも
とても良かったのだが、
観る前と後で小説の印象が
かなり変わってしまったので、
微妙なところ。
特に「わたしを離さないで」は、
あのキャシーとトミー
(子供時代も含めて)
無しで読むことはできない。
その小説が自分にとって
どういうものか、によっても
変わるかもしれない。
そういえば、
「クララとお日さま」も
映画化の話があったと思うが
どうなっているのだろう?
「ある男」の前の上映予告には
「鏡の孤城」の予告があった。
不登校などの年頃に向けて
アニメにしたのだろうが、
実写で観たかったなぁ。
追記:
原作を読み終えたが、
映画と原作は終わり方も含めて
かなり変更されている。
別の作品と考えたほうが
いいかもしれない。
映画は映画でいい味だが、
上にも書いたように、
かなり端折られているので、
映画だけで納得するのは
難しいと思う。
原作のほうがいろいろな意味で
深い内容で、ぜひ、映画を入り口に
原作を読む人が増えると良いと思う。
大臣を始めとして、多くの議員の
質が問われている昨今だが、
平野啓一郎さんのような人にこそ
参議院議員になって欲しいものだ。
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