日々の寝言~Daily Nonsense~

スパコン開発凍結(4)

国のスパコン開発プロジェクトは、
結局、なんだかよくわからないうちに
一部復活となったようだ。

しかし、この案件に限らず、
復活の理由などはほとんど説明されておらず、
なんのための事業仕分けだったのか、という点と、
このまま続けて本当に大丈夫なのか、という点について、
とてももやもやしたものが残った状態だ。

この件に関して、専門家の
金田康正さんがIT Pro のインタビューを受けている。

扇情的な記事の見出しはともかく、
内容をよく読めば、研究者の立場からのコメントとして、
現時点で最良のものではないだろうか。

> 欧米と同等の計算機利用環境を提供するためにも
> 500テラFLOPSから1ペタFLOPS程度のスパコンが
> すぐにでも必要となっている。
> 仮に、現状からいきなり100倍の京速計算機が用意されても、
> 国内では進んでいる気象関連の計算などの一部の用途を除き、
> 使いこなせると考えるのは大変に甘い。
> 極端に国費をつぎ込んでそれを使いこなせなければ、
> 実にもったいない話だ。

このあたりは、ユーザ視点からの意見としては
まあこうなるだろう、という感じだ。

そのスパコンを開発するのか、それとも
普通に現状でコストパフォーマンスの良いところから
調達するのか、という問題は残る。

> 米IBMが現在開発中の最新鋭機で使われている技術は、
> 富士通が開発するものと比べて
> 圧倒的に優れていると見た方がいい。

> プロセッサの単体性能にもシステムの
> 価格性能比にも劣るスパコンを、
> 世界のどの国のどの研究所が欲しがるというのか。

はっきりと断言してしまうところは、
さすがに科学者だ。

> SC09で展示されたPOWER7ベースの基板は
> 日立製作所が作っているという事実がある。
> またスパコンに適したOS(基本ソフト)、
> 性能の高い実行時ルーチン、並列化能力の高いコンパイラ、
> また機能や能力が高い数値計算ライブラリそれぞれの
> 独自開発力を持っている。やはり、
> 一度立ち止まって国策スパコンが本来目指すべき方向性
> について確認し、国際情勢を十分に考慮した戦略を
> 練り直すべきだ。

ここについて、独断でよいので、
もう少し具体的な方針が示されると
もっとよかったと思う。

既に多くの研究者が多くの時間を使って
検討してきているのだから、
同じプロセスを繰り返しても
駄目な気がするのだが・・・

> プロジェクトの遅れによる国際競争力低下は否めない。
> しかし、国策スパコンが目指すべきなのは、
> 10~20年先にも存続する最先端技術の獲得と継承であり、
> 人材の育成なのだ。挽回はできる。

実際にどう挽回するのか、
きわめて厳しい状況だろう。
そもそも誰がプロジェクトを
率いることができるのか?

> 少なくとも、事業仕分けで指摘された問題点、
> 今回の改善内容について、文科省は
> きちんと国民へ説明する義務を負っている。
> こうした義務が果たされなければ、
> 何のための事業仕分けだったのかと
> 思われても仕方がないだろう。

結局、国民の不満をそらすための、
ある種のみせしめ的なショー
だった部分も大きいということだ。

> 最終的には「細部に神が宿る」という意識、
> そういう意識で手を動かす現場の研究者
> が評価されづらいという、
> 日本の科学と技術への無理解が
> 問題の根底にあるのかもしれない。

> いかに研究費を獲得するかということばかりに
> 終始する研究者やそこに群がる人たちばかりが
> 幅をきかしているのであれば、
> 日本の科学と技術の未来は暗い。

これはちょっと言いすぎのような気もする。

大きな予算を獲得して、きちんと運営することは、
それはそれでとてもとても難しいことであり、
そこにもまた「神は細部に宿る」と思う。
本来、研究者が片手間でできることではない。
CEO と CTO のように、
本来は誰かと組むべきなのだ。

最大の問題は、手を動かす人と、マネジメント
する人とが Win-Win になっていないこと
だと思われる。

そして、その原因は、マネジメントする側の
人材の極端な不足、ではないだろうか・・・
だって、そういう人材を育成する場も、
場数を踏んで成長する場も
日本にはほとんど存在していないのだから。
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