ただおの不定期日記

主に映画の感想など。たまに違う話題も書くかもしれません。

雪の花 ともに在りて

2024-11-19 11:25:08 | 映画

去年エキストラに参加させてもらった作品の完成披露試写会にお誘いいただき、行ってきました。

吉村昭さん原作の小説の映画化。監督は黒澤組だった小泉堯史氏。それだけでも贅沢な映画ですが、なんとフィルム撮影だったそうです。参加したときに一度NGを出してしまいましたが、その後にフィルムだと聞いてびびりました。

スタッフも監督さんも丁寧で、監督は撮影終了後にエキストラに控え場所にまで来られて挨拶をしてくださいました。撮影中も近くにいたADさんはわざわざ私の名前を確認して、「では○○さん、次は・・」のように名前で呼んでくださいました。田舎にUターンする前に1年ちょっとエキストラをやっていましたが、名前で呼んでもらうことはほぼありませんでした。1回あったくらいと記憶しています。

そして直接お世話になった助監督のSさんは脚本も書かれており、しかも娘さんが映画用にキャラクターのイラストを描かれたとかで、お弁当の熨斗や記念にいただいたトートバッグにもデザインされていました。

主人公は松阪桃李さん演じる実在の幕末の医師、笠原良策。天然痘を予防するための種痘の普及に尽力されたとのことで、そのお墓は福井藩主である松平家の菩提寺、大安禅寺に祀られています。

要するに天然痘ワクチンであり、今の時代にぴったりな話題ですね。映画の中でも、「そんなもんで子供に角でも生えたらどうするんだ」という庶民の不安が出てきます。

京都にオランダ医学を学びに行くのですが、その先生である日野鼎哉(役所広司)から、「名を求めず、利を求めず」と教えられ、ただただ人々を救うために尽力したことが極めて抑えた演出で描かれます。

芳根京子さん演じる妻も肝が据わった立派な奥さんで、夫の背中を押し、留守を守り、協力者を説得するという、夫婦そろっての人物なのでした。

良策自身は「自分は立派な人間などではない」と言いますが、疱瘡(天然痘)から人々を救いたいという一心で困難を克服していく様子が胸を打ちます。漢方医ながらオランダ医学に興味を持ち、種苗を入手するための手立てを講じ、実際に牛痘を植えた幼児を連れて雪の中峠を越えるという、よい手段が見つかったとしても、それを実践することの困難とそれに立ち向かう姿がこの映画の見所です。

自分はエキストラとしては通行人で後ろ姿で写っていますが、知り合いの地元の役者さんたちも活躍しています。是非劇場で見ていただきたいと思います。

そして終盤、あの「侍タイムスリッパー」にも出演されていたとある切られ役の方が出演されていたのがなんか嬉しかったです(笑。こちらもご注目。

いずれにしろ、素晴らしい映画の一部として参加できたのは一生の宝です。

医者は人の命を救いたいと思うもの。それは昔も今も変わらないはずだと思いますね。