彼女ができた‼・・・
T彦に彼女ができた、と知ったのは20xx年8月だった。恒例の家族旅行先でのことだ。私は今でも鮮明に覚えている。
「大学に入ってから4ヵ月ほど経ったけど、どう?彼女はできた?」と、私が何の気なしに尋ねてみたところ予想外の返事が返ってきたからだ。「4歳年上の大学の先輩」だという。
年齢差には正直なところかなり驚いた。それでも私は嬉しかった。T彦は優しい顔立ちで穏やかな語り口だから、それできっと年上の先輩の方からお声が掛ったのだろう、と思ったのだ。T彦の話しぶりから、そう私は認識した。
名前も出身地もとくに詮索しなかった。順調に大人の階段を上っていることを確認できたから、それだけで十分だったのだ。人並みにガールフレンドと語り合い、先輩・後輩と、そして諸先生方からも大いに学び、多様な価値観を持たせたかった。幸せな人生の足掛かりとするためにも。
家族旅行に行かない理由・・・20xx年8月
20xx年8月、恒例の家族旅行先を北海道に決めた。ところがT彦は『部活の大会』を理由に断って来た。主人は残念がっていた。これを切っ掛けにして翌年以降も不参加が常態化していくことになる。
この年の大会は、X県にある大学が主管であったことが最近判明した。そこで団体出場の後打ち上げをし、更には地元の観光地に行った、と会報誌にも記録されている。M子の実家はX県にある。この時M子はT彦を実家に連れて行ったのではないだろうか。
T彦は誕生日を迎え二十歳になっていた。