一般常識としては、崩壊の発生しやすい傾斜は、30°前後と言われる。昔からいわれてきたことで、常識として刷り込まれている。今回の厚真町の崩壊は、これより緩い傾斜で発生しているという。また、急傾斜地株の安全を定める「急傾斜地危険区域」の設定では、斜面の高さと同じ距離を水平方向に設定し、この範囲を危険区域としている。
厚真町の崩壊では、崩土が安全区域と設定される範囲をはるかに超えて、崩土は倍以上の距離まで達していると聞いた。この原因について整理すると、
① 前日までに降雨はなかった。
② 直下でマグニチュード6.7の地震が発生した。
となる。
先ず降雨であるが、地震発生より前では、降雨はほとんど見られず、崩壊が降雨によるとは考えにくい。平成30年9月6日未明に安平町で震度7、1504ガル、マグニチュード6.7の地震があり、この地震によって崩壊は発生した。では、何故崩土が降雨原因の流動距離を2倍以上上回ったのかを考えてみる。結論から言うと、崩壊の初速が降雨のそれより大きかったとするのが妥当であろう。
近年発生した内陸の直下地震の加速度を見ると、次表および次図のようになる。内陸の直下で発生した地震であることから、ほとんど垂直方向の加速度ということができそうである。平成30年9月6日の胆振東部地震では、加速度1504ガルを記録し、瞬間的には、2.5gの加速度が斜面に加わったことになる。人間生活空間での1gに比べると、異次元の現象であったと思われる。
1gの人間生活空間で設定された危険区域に比べ、倍以上の範囲まで崩土が流動したのは、地震による重力の加速度が倍以上のなったため、崩壊が始まるときの初速が相当大きかったものと推定される。正に、想定外の現象であったと考えることができる。

<防災について>
崩壊現象は、2.5gの空間に於いて発生したものである。人間の生活空間である1gでは、再発することは不可能な現象ということができる。例えば、2004年 新潟県中越地震では、山古志村で大規模な地すべりが発生し、また、2008年 岩手・宮城内陸地震でも、大規模地すべりが発生している。これらの地すべりが再度移動するためには、より大きなエネルギが必要となる。
防災の基本であるが、あるとき発生した現象が再度発生するためには、その現象以上の原因となる現象が発生しなければならない。例えば、土石流であれば、ある土石流で堆積した土砂(土石流堆積物)が再度洗掘されるためには、より大きな原因や現象が発生する必要がある。
このように考えると、防災計画に於いて、地震による地すべり発生後、または、崩壊発生後、地すべりまたは崩壊土砂は不安定状態にあり、再度移動しやすい状態になっているとされ、防災工事が必要とよく言われる。そして、現状の重力加速度(1g)で防災計画が策定される。
しかし、先に述べたように、現時点で不安定とされる堆積土砂は、2.5g空間で形成されたのであるから、設計上の重力の加速度を2.5g以上にしなければならない。逆に言えば、2.5gで発生した現象であれば、1g空間では安全と判断すべきで、防災の必要性はないのである。
津波を例にとると分かりやすい。津波対策として防波堤を計画するとき、対象とする津波の高さを上回る防波堤を計画しなければ意味が無い。そして、一般に、対象とする現象規模は、既往最大のものを選択しなければならない。よく土石流対策として、100年確率の現象(主に降雨)を対象とすることが多いが、この選択は間違いである。あくまでも既往最大を選択すべきである。
近年、内陸の直下地震による大規模崩壊ないし地すべりの発生が多く見られる。これらの現象発生後の防災の考え方には、定説はない。直下地震はこれからも発生する可能性は高く、何らかの技術的解決を考えてゆく必要がある。
厚真町の崩壊では、崩土が安全区域と設定される範囲をはるかに超えて、崩土は倍以上の距離まで達していると聞いた。この原因について整理すると、
① 前日までに降雨はなかった。
② 直下でマグニチュード6.7の地震が発生した。
となる。
先ず降雨であるが、地震発生より前では、降雨はほとんど見られず、崩壊が降雨によるとは考えにくい。平成30年9月6日未明に安平町で震度7、1504ガル、マグニチュード6.7の地震があり、この地震によって崩壊は発生した。では、何故崩土が降雨原因の流動距離を2倍以上上回ったのかを考えてみる。結論から言うと、崩壊の初速が降雨のそれより大きかったとするのが妥当であろう。
近年発生した内陸の直下地震の加速度を見ると、次表および次図のようになる。内陸の直下で発生した地震であることから、ほとんど垂直方向の加速度ということができそうである。平成30年9月6日の胆振東部地震では、加速度1504ガルを記録し、瞬間的には、2.5gの加速度が斜面に加わったことになる。人間生活空間での1gに比べると、異次元の現象であったと思われる。
1gの人間生活空間で設定された危険区域に比べ、倍以上の範囲まで崩土が流動したのは、地震による重力の加速度が倍以上のなったため、崩壊が始まるときの初速が相当大きかったものと推定される。正に、想定外の現象であったと考えることができる。

<防災について>
崩壊現象は、2.5gの空間に於いて発生したものである。人間の生活空間である1gでは、再発することは不可能な現象ということができる。例えば、2004年 新潟県中越地震では、山古志村で大規模な地すべりが発生し、また、2008年 岩手・宮城内陸地震でも、大規模地すべりが発生している。これらの地すべりが再度移動するためには、より大きなエネルギが必要となる。
防災の基本であるが、あるとき発生した現象が再度発生するためには、その現象以上の原因となる現象が発生しなければならない。例えば、土石流であれば、ある土石流で堆積した土砂(土石流堆積物)が再度洗掘されるためには、より大きな原因や現象が発生する必要がある。
このように考えると、防災計画に於いて、地震による地すべり発生後、または、崩壊発生後、地すべりまたは崩壊土砂は不安定状態にあり、再度移動しやすい状態になっているとされ、防災工事が必要とよく言われる。そして、現状の重力加速度(1g)で防災計画が策定される。
しかし、先に述べたように、現時点で不安定とされる堆積土砂は、2.5g空間で形成されたのであるから、設計上の重力の加速度を2.5g以上にしなければならない。逆に言えば、2.5gで発生した現象であれば、1g空間では安全と判断すべきで、防災の必要性はないのである。
津波を例にとると分かりやすい。津波対策として防波堤を計画するとき、対象とする津波の高さを上回る防波堤を計画しなければ意味が無い。そして、一般に、対象とする現象規模は、既往最大のものを選択しなければならない。よく土石流対策として、100年確率の現象(主に降雨)を対象とすることが多いが、この選択は間違いである。あくまでも既往最大を選択すべきである。
近年、内陸の直下地震による大規模崩壊ないし地すべりの発生が多く見られる。これらの現象発生後の防災の考え方には、定説はない。直下地震はこれからも発生する可能性は高く、何らかの技術的解決を考えてゆく必要がある。