バイデン氏から五輪開催の支持を得た──。日本時間4月17日に開かれた日米首脳会談後の共同会見で、菅義偉首相はそう述べた。あたかも会談直前に飛び出した、自民党・二階俊博幹事長の五輪「中止」発言を打ち消そうとしているように。だが実際は、二階発言の真実味が増している。
会談直前の15日。二階氏は、CS番組の収録で東京五輪・パラリンピックの開催について問われ、「無理ということであれば、すぱっとやめなければならない」と大会中止に言及した。
大きな波紋を広げたが、このタイミングが、ある臆測を呼んだ。自民党関係者がこう話す。
「首脳会談で米国の慎重姿勢が世界に広まってから中止に触れるのでは政権にとってはイメージが悪くなる。あえて日本側から先に『中止』に言及しておきたかったのでは」
バイデン氏は今年2月のインタビューで、大会開催について「科学に基づいて判断すべき」と発言しており、慎重姿勢だった。今回の会談の共同声明では、「努力を支持」の文言はあったものの、会見でバイデン氏は五輪開催に触れていない。米国の政府高官は現状について「判断するには少し早すぎる」と説明しており、むしろ両国の温度差が浮かび上がった形だ。
五輪開催の成否は、米国の参加にかかっているといっても過言ではない。夏季五輪で最大の選手団を派遣するとともに、多額の放映権料を払っている。NBCは、2014年のソチ冬季大会から東京大会までの計4大会の放映権料について、IOC(国際オリンピック委員会)と約4774億円で契約している。
米国ではワクチン接種が進んでいて、7月23日の五輪開会式までに選手団の接種は間に合う可能性が高い。問題は日本側の感染対策だ。前出の自民党関係者は言う。
「ワクチン接種を終えた外国の選手からは『日本人は接種していないのに、一緒に競技して大丈夫なのか?』という声が多数上がっているそうです」
さらに心配な点もある。ある大会関係者が話す。
「問題は五輪だけではありません。8月24日から始まるパラリンピックでは、コロナに感染した時のリスクが高い障害者が来ます。五輪よりもはるかに感染対策が難しい」
英医学誌BMJは4月14日、公式サイトで「今夏の五輪・パラリンピックを再考せよ」と題した論文を公開した。中でも大会の感染対策について、障害者に対するコロナのリスクを過小評価している、と批判している。
残された時間は少ないが、不安を払しょくする感染対策は示されていない。
前出の大会関係者は嘆く。
「あとは夏に向けて劇的にウイルスが減少することを期待するしかない」
神風に頼るのは勘弁願いたい。 (WEB抜粋引用)
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