雨の記号(rain symbol)

詩人に捨てられたピエロ人形

 人はどこかに越していく時、たくさんのゴミを捨てる。その中にはガラクタもあれば価値ある物も少なくない。
 ある詩人が職場を去った。たくさんの書物や小物道具などがゴミとして出た。僕はその人が名ある詩人だと知っていた。もちろん彼は僕のことは知らない。それらはゴミとして出たから、僕はゴミとして片付けた。書物はいっぱいいいのがあった。ベストセラー小説があったし、僕の友人の書物もあった。その他にも読みたい書物はあったが、僕は詩人の願いどおり、ゴミとして片付けていった。みんな捨てようと思って台車でそれを運んでいたら、一体のピエロ人形が目に止まった。首から下は二本の手と二本の足というピエロだったが、その表情と服装がなかなかチャーミングだった。右手右足はブルー、左手左足は白地に花柄の装いである。首に巻かれているのは肩や胸を覆うマントのようなスカーフである。明らかに右側が男、左側が女をイメージしている。
 僕はそれに魅せられ、手に取ってみたのだった。
 今、そのピエロ人形は僕の目の前の壁にぶら下がっている。三年前の引越しの時、身の回りの物をたくさん捨てたが、これは手放さなかった。
 彼のチャーミングな表情に見守られて僕は創作に励み続けている。
 彼は小説家の愛したピエロ人形になってくれるのだろうか。
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