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雨の記号(rain symbol)

風の絵師 第20(最終話)から

 見終えての感想

 ジョニョンの屋敷にはユンボクとホンドの絵の対決を見極めようと図画署の生徒たちや職人たちが、市中でも人々が集まり、ユンボクとホンドの対決の行方を固唾を呑んで見守った。
 ジョニョンから出された画題は「争闘」と発表された。 
 ホンドとユンボクはそれぞれ絵を描くために市中へ出かけた。
 王と王太妃もどちらが勝つか賭けをする。王太妃は負けた方が宮廷を去るのはどうかという。
 ホンドとユンボクは絵を画いて屋敷へ戻ってくる。
 やがて絵の投票が始まる。勝負の決着は日没までとされた。
 絵の投票の推移は一進一退を繰り返す。投票が終わった時、二人の票は同数だった。
 そこで、互いの絵を評価することで勝ち負けを決めようとなった。
 先に登場したホンドはユンボクの絵を朝鮮一だと誉めそやす。
 ユンボクもホンドの絵を見てほめようとするが、手の形が逆に描かれた人物を見つけて一瞬ためらう。ホンドを見るが、ホンドの表情は落ち着いている。自分も必ずお前に勝つ、との言葉を思い起こし、その絵を誉める。しかし、ユンボクを観察していたジョニョンは、ユンボクが見せた戸惑いの原因が手の形を逆に描いた人物にあることを見つけてしまう。ジョニョンは致命的な欠点としてそこを指摘した。しかし、それこそホンドが待っていたことだった。評者は誰もが信じられない顔をした。そして、そのようなミスをしたのではだめだろう、との声が挙がる。評者が相談しあった結果、最後に「通」をホンドに出した戸曹判書キム・ミョンミンの票が取り下げられる。
 しかし、ホンドは、まだ勝負をつける時ではないと敗北を認めようとしない。評者たちは、往生際が悪いぞ、と口々に声をそろえ、騒ぎがかしましくなった頃、ホンドは頃合とばかり、夕日をとりこめる西側の襖を開けた。すると部屋に金色の西日が射してきて、ホンドの描いた草相撲の姿を輝かしだした。夕日がその部屋を照らすことまでも計算しつくしたホンドの絵はその場の者たちに草相撲の圧倒的なリアリティーをもたらしたのだった。
 戸曹判書キム・ミョンミンが一度取り下げた「通」をそこに戻した時、日はくれようとしていた。
 この絵についてもう少し時間をくれとジョニョンはいうが、日没までの約束で始まった品評会、これ以上の議論はないと評者たちは突っぱねたのだった。
 すると、この賭けに注目していた市中の人々の不満や怒りは収まらなくなって・・・ジョニョンの威信はこれで完全に失われたのだった。(第19話より)
 
 19話から最終話がやや性急に走り過ぎた感がある。あれもこれも最後の面倒を見すぎたからだろう。
 ホンドとユンボクが過去の忌まわしい事件を追いつめていく過程はいいのだが、中盤にあった二人のいいムードが次第に窮屈になり、せっかくの悲恋も事件に癒着させすぎて、せわしい付け足しのように終わってしまったのは非常に残念である。
 ホンドとユンボクが共に実在の画家である以上、別れてしまうのは致し方ないが、もうちょっと何とかならないか。たとえばその後だ。いずこへとも姿を消したユンボクをホンドが探し当てるものの、市中の女たち相手に楽しそうに絵筆を握っている彼女を見て、自身もこっそり自分の場所へ戻っていくとかだ。
 ラストでユンボクを探し回るホンドの姿も出てきた。それらの余韻として安息の時間の中にいる二人も扱ってほしかったところである。
 



ホンドとユンボクの勝負は、戸曹判書キム・ミョンミンの協力を得て、時間ぎりぎりの引き分けを狙ったホンドの策略が功を奏す。日没決着がならなかったからだ。
 戸曹判書キム・ミョンミンはジョニョンに決着をつけられるかと問いを出し、つけられるとするジョニョンに戸曹判書は、自分は引き分けだ、として賭けを切り出した。ジョニョンは軽い気持ちでこれに乗った。この賭けによる敗北が結果としてジョニョンの全財産を奪うことになる。
 ホンドはホンドで知人を通じ、市中の民らに引き分けのない賭けを煽らせ、取り返しのつかない事態を生じさせてもいたからだった。


 騒ぎの渦中、チョンヒャンをひと足早く逃がしたユンボクは、チョンヒャンを探し回るジョニョンを待ちうける。屋敷へ帰って来たジョニョン。鳥かごに鳥はいない。
 目の前にユンボクが立っている。
「チョンヒャンはどこだ」
「あの女は遠くへ去った。もう、探すな」
「俺の女をどこへやった」
 余裕たっぷりの大豪商の面影なく、野卑な男に戻って問い詰めようとするジョニョンに、この顔に覚えはないか、と逆に問い返すユンボク。ここで 自分が殺されたソ・ジンの娘であることを告げる。
「こいつが!」
 怒り狂ったジョニョンに首を絞められ、あやうく殺されそうになるが、駆けつけたホンドに助けられて難を逃れる。
 ジョニョンは駆けつけた役人に捕らえられそうになるが、警護のチョンに助けられて姿を消す。
 その足でジョニョンは王大妃の叔父宅を密かに訪ねるが、大監は、何故ここにやってきた、とつれない。ジョニョンは殺害の命を受けた十年前の書付を持っていた。それを手に、ある提案をする。
 ジョニョンはそこでユンボク(ヘウォンが女人であることを告げる。
 これはすぐ貞純大妃の耳に届けられた。

 
 貞純大妃は正祖にこれを告げ、女の描いた絵で何が王室の復権ですか、と激しくなじる。
正祖はホンドとユンボクを呼び出し、二人の話を聞いた後、ユンボクを男としてすべてを決着させようとする。
 正祖は貞純大妃を訪ね、ユンボクは男でした、と報告する。居直りと受け止めた大妃らは、ユンボク、ホンド、ジョニョンらの命を亡き者にすることで十年前の事件を一掃しようとする。
 ジョニョンは矢で倒れる。警護のチョンは息絶えようとするジョニョンの最後の命を受ける(チョンはここで初めて女らしい悲しげな表情を見せた)。

 貞純大妃に虚偽を報告した正祖はユンボクを呼び、生涯女であることを隠して暮らせと命じる。
ホンドは自分もユンボクと一緒に旅立ちたいと申し出る。絵師の肩書きも何もすべて捨ててだった。
(ここから先を何とかうまく処理できなかったのだろうか。部分的には興味ある場面が続くが、何しろせわしい。出来ればもう一話ほしかった気がする)

 ホンドとユンボクは二人して旅立った。ウサン大監らの放った刺客が二人に襲いかかる。逃げようとするとその道を塞ぐようにジョニョンのために働き続けてきたチョンの姿があった。前門の虎、後門の狼と思いきや、彼女はジョニョンの命だと言って書付を渡すと刺客たちに向かっていった(自分は逃れるつもりもないようだった)。

 
 刺客から逃れた二人は山中でひっそり夜を迎えた。
 ユンボクに別れを切り出す。自分と一緒だと師匠にも危険がつきまとう。自分と一緒だった人たちはみんな辛い目にあってきた。それを見るのはもう忍びないというのだった。
 しかし、ホンドにとって、手をとりあい幾多の苦難を乗り越えてきたユンボクはもはやかけがえのない存在となっていた。
「ユンアがいなければ私はどうしたらいいんだ」
 二人は見つめあう。
 ユンボクは言った。
「師匠にとって私はどんな存在ですか」
 ホンドはひとことひとこと、言葉を噛み締めるように答える。
「弟子であり
友であり
無二の親友の娘だ」
「それだけですか」
「友の娘で
弟子であり
最後まで守りたい大事な女だ」
 ユンボクは涙を浮かべた。

 ユンボクが疲れて寝静まった後、ホンドはジョニョンの警護チョンから託された書付をふと思い出した。恨み言の一つも書いてあるかとの表情だったが、中を開いて一変する。あわててユンボクをたたき起こした。
「うまく行けば、助かる道が開けるかもしれない。先に行くから、夜が明けたら家に戻っていなさい」 
 自分を救ってくれた手。ホンドのその手に頬ずりするユンボク。
「師匠の手はほんとに温かい」
 師匠を始め、自分はどれだけの人を辛い目に遭わせてきたのだろう。自分を責め、運命を呪い、涙に暮れるユンボク。そこには悲しい決意をしようとする涙があった。

 ホンドは正祖の前で事の経緯を語った。
 二人の命が狙われたと知った正祖は二人を守るように命じる。その時、ホンドの手元の書付に目が止まる。ウサン大監がジョニョンに命じた大絵師とソ・ジヌ殺害の書付だった。
 ウサン大監の書付を手にした正祖はついに亡き父の名誉の回復を宣言する。
 貞純大妃の野望は絶たれた。叔父と兄は官職を退き、大妃一派の勢力は失墜した。

 二人の生きる道を開いて家に戻ったホンドだったが、そこにはユンボクの姿はなかった。
 彼女の自画像が一枚残された。
(女として生きたかった彼女の心も一緒に)
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