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(紹介)日本生協連『食糧自給率のはなしー食卓から考える「40%」』

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 この本を買ってから、2年近く放置してて、生協職員を辞めて半年以上経って読んでみた。日本生協連のスタッフが分担で執筆、生協の役職員に自給率の問題を考える問題提起の本って位置づけなんだけど、まぁ、一般の職員はまず読まないだろう。

 読んでいるのは、地域生協の本部スタッフや、担当組合員理事、連合会の政策立案部門ってところだろうか。でも、この本、今の生協運動のナショナルセンターである日本生協連が、自給率に関してどう考えてるかを知るという意味でも、自給率そのものを考えるハンドブックって意味でも良く出来ている。

 それに本音も出ているし、実に読んでいて面白い本だった。

 まず、自給率40%っていう“低い”自給率の数値が、カロリーベースという日本以外で採用していない特異な数値で、「適度に国民の危機感を刺激できると(農水省が)思ったからだろう」(P.14)ってはっきり書いている。もう、この部分だけで、“座布団3枚”をあげちゃおう。



 この辺は、以前紹介した浅川芳裕氏の本と共通してるんだけれども、確かにそうなのだ。農水省は自給率で危機を煽ることで、仕事と予算を増やしてる。他国が使ってない数値だから、農水省はわざわざカロリーベースの自給率を各国のデーターを用いて試算をしてるのだ。

 そもそも農地が少ない日本でカロリーベースという土俵で、高い自給率を達成するのは不可能、「人間の努力を超えた天与のものである」(P.15)とも言っている。

 ・・・で、カロリーベースで計算するってことは、畜産物の生産に必要な飼料も計算上では、分母になる。トウモロコシ換算で、牛肉1kgの生産に11kg、豚肉で7kg、鶏肉4kg、鶏卵3kgの飼料を必要とする(P.31)。

 だったら、本書には書いてないけど、国産の肉ではなく、輸入肉を食べたらどうだろうか?国産の畜産物の消費カロリーは、減るけれども、育てるための輸入飼料の消費カロリーも大幅に減る。果たして、カロリーベースの自給率はどうなる?

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 消費カロリーを減らすなら、食品の廃棄を減らせば、確実に自給率は上がる(P.77参照)。食生活を日本式に戻せば、自給率は上がる。もっと言えば、飢餓に苦しみ食糧を輸入できない状態になれば、自給率は上がる

 まぁ、それは極論だけども、(かつてと比べ)「食糧自給率は低いが、さまざまな食品をとっている現代の方が、栄養面で優れた食生活となっている。食生活の内容を度外視して、食糧自給率が高ければ何でも良いというわけにはいかない」(P.64)

 この辺はかなり思い切った表現じゃないだろうか。

 無論、ナショナルセンターという立場上、いろんな立ち位置の生協が加盟している日本生協連だから、自給率を上げること自体に反対とか、無意味とまでは言いきってない。会員生協の様々な取り組みは紹介しているし、飼料米のように、畜産を消費しつつ、自給率向上にもつながるものについては、肯定的に紹介してる(浅川氏の著書では否定的)。

 そんな“制約”がありながら、自由貿易体制下での関税引き下げは不可避(P.198)という表現(日本生協連「農業・食生活への提言」検討委員会答申)もあって、あぁ、日生協は“ルビコンを渡ったんだな”って思うことしきり。

 今のとこ日生協は、“例外ない自由化”TPPへの見解を明らかにしてないけど、少なくとも完全否定じゃないはずだ。農業をビジネスとして捉え、自国での食糧生産=食糧安保であるのかどうかってことまで、正面から、踏み込んだ記述があれば、面白かったんだけど、まぁ、そこまで求めるのは、無理ってもの。

 現役の役職員、組合員に広く読んで貰いたい本であることは間違いないよ。そんな時間や、興味関心を持つ余裕はないだろうけど。

(600円+税、コープ出版 08.11)

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