呉智英(くれ ともふさ)とはペンネームだ。本名を新崎智という。1946年生まれというから、ほぼ団塊の世代で、学生運動の活動家をやって、その後、評論家や作家に転じた人物を少なくない。
で、呉氏も、当時は新左翼系無党派の活動家であったらしいのだが、宮崎学『突破者』(南風社、1996年)には、「髪は流行の長髪なかなか堂々たる美男子だった」(P.98)って記述がある。呉市の本名を知ったのも、この『突破者』だったのだけれど。
で、僕は呉氏の著作の殆どすべて(単行本では『マンガ家になるには』、あと共著は除く)を除けば持っている。別に熱狂的なファンってわけじゃなく、著者のフィールドであるマンガ評論や、知識人批判が、僕には面白く、文筆生活も30年近いのだけど、基本的に寡作なので、僕にも追っかけられるってわけだ。
さて、この『マンガ狂につける薬』は、単行本4冊目。マンガ評論家という肩書もあるんだけれども、代表作の『現代マンガの全体像』(増補版、1990年、史輝出版)以降、単独のマンガ評論の単行本を出してない。
このシリーズも、一般書とそれに見合ったマンガを一つのコラムで紹介するというスタイルで、1995年2月から、「ダ・ヴィンチ」にずっと連載されているもの。で、著者は、売れ筋の現代マンガをほとんど取り上げないから、一般的なマンガ評論とは、一線を画してる。
読んでみて、取り上げられてる単行本も、マンガも、僕が読んだものが全くない(中島らも『ガダラの豚』が唯一)。まーそりゃそうだ。僕が、この1、2年で読んだ漫画と言えば、「新世紀エヴァンゲリオン」と「学園黙示録」、「ブラックラグーン」。いずれも、アニメ由来で単行本を読み始めたものばかり。
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あと、著者がかつて高く評価してた『ゴー宣』くらいか。
それでも、この本は面白い。マンガと絡めて紹介される単行本で、“読みたい”って触発される本は何冊もあったからね。だから、この本は本を買いたくさせるブックガイドのようなモノ。買いたいって思った本を列挙しよう。
・古泉智浩『ライフ・イズ・デッド』(双葉社アクションC)。ゾンビもの。
・上原隆『胸の中にて鳴る音あり』(文藝春秋)。極上のコラム・ノンフィクション。
・江戸川乱歩 原作/丸尾末広 脚色・作画『パノラマ島奇譚』(エンターブレインビームC)
・中村光『聖☆おにいさん』(講談社モーニングKC)
(1200円+税、メディアファクトリー 10.12)
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